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書籍紹介:『小説外務省―尖閣問題の正体』

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書籍名:『小説外務省―尖閣問題の正体』

  • 著者: 孫崎 享
  • 出版社: 現代書館
  • ISBN: 978-4-7684-5730-6
  • 定価: 1,600円+税
  • 種類・頁数: 四六、286ページ
  • 商品の寸法: 19 x 12.4 x 2.8 cm
  • 発行日: 2014/4/10 Printed in Japan

 

書評:「小説外務省―尖閣問題の正体」(孫崎 享著、現代書館)

小岩井 忠道(中国総合研究交流センター

 著者は数多くの著書やネット上の活発な発信で知られる元外交官。「主人公の行動はフィクションだが、主人公を取り巻く状況はノンフィクション」。週1回レギュラー・コメンテーターとして出演している文化放送早朝の番組「おはよう寺ちゃん 活動中」で、この本についてそう語っている。出版にこぎつけるまで「4つの出版社から断られた」とも。

 主人公は、1977年生まれの外交官だ。1943年生まれの著者とは年齢からして大きな差がある。しかし、主人公の考え方や言動には著者自身の思い、経歴などが相当反映されているように見える。尖閣諸島の国有化宣言で一挙に対立が激化した日中関係の修復を図ろうと、いかに苦闘するか。親米派しかトップになれない外務省の中で少数派の主人公が、という話だ。「尖閣問題は棚上げという合意などなく、日中間に領土問題は存在しない」という主張を続ける日本政府の姿勢に対し、これまで著者は一貫して批判的主張を続けている。それを小説の形であらためて、より多くの読者に問いかけた、ということだろう。

 元外交官、大学教授、ジャーナリスト、歌手など著者と親しいと分かる著名な人物が主人公のサポーターとして何人も実名で登場する(元外交官、孫崎享氏自身も)。このことからだけでも「主人公を取り巻く状況はノンフィクション」という著者の言葉は納得できる。事実と異なる記述があればまずこの人たちから猛烈な講義が来るだろうから…。

 「米国は、日中間の緊張が日本の米国戦略との一体化に貢献するなら、日本に厳しく対応しろという。しかし、日中の武力紛争で米国が巻き込まれる可能性が出れば米国は身を引く」。著者は自著「日本の国境問題――尖閣・竹島・北方領土」(2011年)の中でこう記している。「米国安全保障分野で主流を占めるリアリストたちの考え方である」として。

 「アメリカに潰された政治家たち」(2012年)では、米国の意向に抗して日中間の緊張を解消しようとした日本の政治家たちがどのような目に遭ったか、を詳述している。

 日中間の友好関係が長続きしない背後に米国の冷徹な戦略があり、外務省がすっかり取り込まれている。今回の小説で著者は、こうした自説をさらに分かりやすく提示しようとしたものと思われる。「ソ連、中国、韓国の国交回復の時、日本は実質的に領土問題の棚上げで処理をしてきた。私は、それを正しい判断であったと思う」(「日本の国境問題――尖閣・竹島・北方領土」)ということを、あらためて訴えるために。

 評者は今回の小説を読んで、科学技術政策を取材していた30年前に、よく話を聞きに行った原子力委員の1人があっさりと言った言葉を思い出した。

 「日本の外務省は、米国の51番目の州だから(楯突くことなどできるわけない)」


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