中国研究会開催報告&資料
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第11回研究会「如何にイノベーション型国家を作るか~日中共通人材の共同育成について」/講師:任福継(2008年10月30日開催)

 中国総合研究センターの主催により、10月30日(木)、「如何にイノベーション型国家を作るか~日中共通人材の共同育成について」を題とする第11回研究会がJSTにて開催された。

大入りになった研究会会場の様子

 講師を務めたのは、徳島大学大学院教授、知能情報工学科長、AIA国際高度情報化研究所長、国際連携教育開発センター副センター長の任福継氏である。任氏 は在日中国科学技術者連盟初代会長、日本新華僑華人会前会長でも知られており、現在、中国北京郵電大学・西安交通大学・ハルピン工業大学・大連理工大学兼 任教授、清華大学学術研究顧問を兼務し、全日本中国人博士協会名誉会長も務めている。

任氏

 任氏は、人間が見聞きする事実の不確実さを例に挙げ、「事実は真実の一部であり、真実は全局をカバーする完全情報であるため、事実は真実に等しくな い」と述べ、「イノベーション型国家を作るには完全情報を把握し、活用できるイノベーション型人材の育成が必要不可欠だ」と指摘する。

  任氏は日中両国における人材状況や人材育成政策に関連する各種基礎データを比較、紹介した上で、中国はどちらかといえば、日本よりもイノベーション型人材 育成への市場競争原理の取り入れに積極的であり、先進国の日本を激しく追い上げていると話す。

 「日本は多くの外国留学生に奨学金を出して、国際的な人材を育てているが、留学生たちがいよいよ一人前に育って、恩返しできる時に欧米に出て行く ケースが少なくない」と指摘、日本はそれを食い止める人材活躍環境及び待遇の改善などの施策を考えるべきだと提言する。任氏を含め、全日本中国人博士協会 のメンバーの多くは日本留学後に日本に残って、各分野で活躍している中国人であり、日中両国の情報を把握し、活用し得る立場にあるという。氏によれば、博 士協会は今年、日中両国政府への政策提言・提案を目指す「百条建言専門家委員会」を立ち上げたが、民間団体として日中共通人材の共同育成に役立ち、科学技 術の振興に寄与し、日中両国の科学技術交流の発展促進に貢献することを理念として掲げている。

 「任氏が国際連携教育開発センター副センター長を務めている徳島大学は複数学位を取得できる国際連携大学院教育プログラムに取り組んでおり、ナノテクノロジー応 用工学、バイオ情報応用工学、地圏環境制御工学といった3つの大学院コースを設け、米中韓の10の大学と連携してグローバルに活躍できる技術者、研究者を 養成しているという。

 「「これは科学技術振興機構北澤広一理事長にもらった『科学技術者のみた日本・経済の夢』からの引用。『人類にとって21世紀は希望のある社会になると思う か』という設問にイエスと答えた高校生の割合は、中国は89%、米国は63.5%、韓国は63%、日本は35%になっている。『あなたは自分の将来に希望 を持っているか』という設問にイエスと答えた学生の割合は、中国は91%、韓国は46%、日本は29%である。いずれも日本人が夢を持てなくなっている比 率が高いことを示している」と指摘、「若者に夢を持たせるために、日本はイノベーション人材を重点的に支援すべきだ」とし、「具体的には1人当たり5年間 5千万円を投資して、日本政府は1000名の国家イノベーション人材、文部科学省は1000名の科学先駆け人材、経済産業省は1000名の技術イノベー ション人材を養成する」ことを勧めている。

 「任氏は最後にイノベーション人材の待遇と評価について、「社会主義」待遇制から「資本主義」待遇制への転換、科学的公正的な選考ルールの確立、厳正な評価制度の見直しが重要だと強調し、講演を締めくくった。

 「 講演の後、質疑応答があり、活発な意見交換が行われた。 最後は、中国総合研究センターセンター長・藤嶋昭に代わって参事役・細川洋治による閉会の挨拶が行われた。

 「研究会には、官公庁はじめ、報道機関、大学、在日中国人留学生、企業及びJSTなど多数の関係者が参加した。

(中国総合研究センター フェロー 内野秀雄 記)