第69回CRCC研究会「メディアが作る相手国イメージ―日中対立の一側面―」/講師:高井潔司(2014年2月5日開催)

演題:「メディアが作る相手国イメージ ―日中対立の一側面―」

開催日時・場所

2014年 2月 5日(水)15:00-17:00

独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講演資料

メディアが作る相手国イメージ ―日中対立の一側面―」講 演内容( PDFファイル 464KB )

メディアが作る相手国イメージ ―日中対立の一側面―」当 日スライド資料( PDFファイル 880KB )

詳報

第69回研究会速報」( PDFファイル 1.06MB )

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マスメディア情報見極める確かな目を

小岩井忠道(中国総合研究交流センター

 中国報道の経験が長い高井潔司・桜美林大学リベラルアーツ学群教授が2月5日、科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、日 中国民がお互い信頼し合うにはマスメディアの限界を理解し、情報をうのみにしないことが重要、と強調した。 

 「メディアが作る相手国イメージ-日中対立の側面-」と題する講演で高井氏がまず指摘したのは、世論調査の受け止め方。昨年、いろいろな人が引用したものに日本の「言論NPO」と中国の「 チャイナデーリー」が協力して実施した世論調査がある。「中国人に対する良くない印象を持つ日本人」は90.1%、「日本人に対する良くない印象を持つ中国人」は92.8%と、過 去9回の中で最悪の状態であることが注目された。

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 しかし、氏はこの種の調査は十分な情報を基に形成されている「パブリックオピニオン」とは言えず、「社会の空気」を表したものにすぎない、としている。さらにこうした世論調査の結果は「 メディアを通して得た情報により形成された“イメージ”」であることが、同じ調査の別の設問に対する答えからも分かることに注意喚起した。

 続いて「メディアの発する情報が十分かつ正確か」という問いを投げ掛け、「新聞は世論を組織する手段としては不完全」という米国のジャーナリスト、リップマンの著書の言葉を引いている。「海外の情報、特 に中国の情報はその記者の主観やメディアそれぞれの報道スタイル、フレームによって偏向報道になる」と、情報化社会の現在でも、リップマンが指摘した新聞の限界は変わらないことを強調した。

 日本の新聞社や通信社の中国報道に関して氏は、さらに近年の変化も指摘している。北京に駐在する特派員には中国を専門としてない人が派遣されるようになってきたという現実だ。「 日中関係を報道するのは東京の政治部、あるいは北京駐在の政治部の記者が中心になっている。彼らは取材源として日本政府や外務省、防衛省から北京に派遣されている人々と情報交換を行い、そ こから得られる情報の中で自ずと日本政府の立場に立つようになる」という見方を示した。

 一方、中国側にも大きな問題があることも指摘した。中国政府の報道規制の結果、日本に対する正確な報道が阻害されていると考えるのは誤解で、むしろ逆の現実があるという。中 国では商業化された新聞が増えており、人民日報の下部組織が発行している環球時報もその一つ。発行部数は150~200万部に上る。反日報道が多いが、日本に特派員を置いているわけではない。日 本に住む駐在員や研究者といった中国人を特約記者にして日本の新聞の論調を翻訳させ、それを基に記事を北京で編集する。偏った新聞から数多くの引用がされ、非常に主観的な論調として書かれる。「 日本に対して過激な記事になるほどよく売れる、つまり“民族主義”はメディア市場でマーケットを得ている」という現実を氏は明らかにした。

 日中両国とも良心的で気概のある記者がいること、ネット情報は大体が新聞社や通信社報道の転載であることも紹介した上で、日本のマスメディア情報の読み方を氏は次のように提言した。

 情報の全てをうのみにせず、参考情報として受け止めることが大切。次に情報源を確認し、情報の出所が記事にしっかりと書かれているかどうかを見ること。複数源であれば信頼性も高まる。

 原発政策、特定秘密保護法、靖国問題など重要な問題は、新聞社によってかなり論調が異なるのでそれらを比較することに加え、専門家の意見も聞いて情報をうのみにしない。ただし、そ の専門家がどのような資料に基づき、どれだけ当事者と話をし、そして舞台裏を知っているかを見極める力が必要。

 特にマスメディアを通じてしか手に入らない中国の情報は、米中関係や日米関係といった広い背景の中で捉える。尖閣問題だけで日中関係を論じるようなことはしない。

決してメディアに踊らされることなく問題を捉えようとする姿勢が必要だ。

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高井 潔司教授

高井 潔司(たかい きよし) 氏:
桜美林大学リベラルアーツ学群 教授

略歴

1972年 東京外国語大学卒業
同年  読売新聞社入社 福島支局、社会部などを経て、外報部へ
テヘラン特派員、上海特派員、北京支局長、論説委員を歴任
1999年 北海道大学教授(大学院国際広報メディア観光学院など)
2012年 定年退職、名誉教授
同年4月より桜美林大学リベラルアーツ学群教授
著書に 『中国文化強国宣言批判』(蒼蒼社 2012年) 『新聞ジャーナリズム論』(桜美林大学北東アジア総合研究所 2013年)など。訳書に『中国における報道の自由』(孫旭培著、桜 美林大学北東アジア総合研究所)など。


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