第72回CRCC研究会「新疆ウイグル自治区での相互理解促進30年」/講師:小島 康誉(2014年6月4日開催)

演題:「新疆ウイグル自治区での相互理解促進30年」

開催日時・場所

2014年 6月 4日(水)15:00-17:00

独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講演資料

新疆ウイグル自治区での相互理解促進30年」当日配布資料(PDFファイル 372KB ) 

友好から理解、共同へ

小岩井忠道(中国総合研究交流センター

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 新疆ウイグル自治区で長年にわたり文化遺産保護研究事業や人材育成事業に力を注いでいる浄土宗僧侶、小島康誉氏が6月4日、科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、新疆ウイグル自治区との相互理解促進にかける熱い思いを語った。氏はこの中で、中国との関係を友好から理解さらに共同へと進化させることを提言した。

 小島氏と新疆ウイグル自治区との関わりは長く、広く、深い。1982年以来、訪問した数は140回を超す。日本政府の尖閣諸島国有化宣言で日中関係が急速に悪化してもこの姿勢が揺らぐことはない。「今来られるとこちらが困る」。先方がしりごみするのもかまわず、尖閣諸島国有化宣言後もすでに6回、日中間を往復している。

 小島氏はまず、1930年ごろの古い地図を示し、新疆地区が中華民国の一部とはいえ、ソ連、英領インド帝国に接し、地政学的に難しい位置にあることに注意を喚起した。新疆ウイグル自治区を理解するキーワードとして氏が挙げたのは「シルククロード」「他民族」「資源」「中央アジア経済圏センター」「改革開放30余年」の5つ。古くから東西だけでなく南北交易の道であったため、多くの文化財が残る地域で、ウイグル、漢、カザフ、回、モンゴル、キルギス、シボと文化を運んだ多くの民族が住む地域であるという特徴を挙げた。

 石油、天然ガス、石炭、水資源などの開発が始まっており、中央アジア経済圏のセンター、中国の西の窓口として、大きく発展する時期にあることも強調した。

 この地域で小島氏が大きな役割を果たしてきたのが、文化遺産保護研究事業だ。厳しい自然による劣化や異教徒による破壊さらには外国人探検家による持ち出し…。苦況にある文化遺産保護のため、1986年まずキジル千仏洞修復保存に乗り出す。翌87年「日中キジル千仏洞修復保存協力会」を設立、2年間走り回り、日本でほとんど知られていなかったキジル千仏洞修復保存のため1億円余を集め、寄贈した。キジル千仏洞を含む「シルクロード天山回廊」は今年5月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問委員会が世界文化遺産に登録を勧告し、6月15-25日にカタールで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式決定されることが決まっている。

 隊長として1988年に着手した日中共同ニヤ遺跡学術調査には、日本から仏教大学、早稲田大学、科学技術庁(当時)、国学院大学、京都大学、龍谷大学、京都埋蔵文化財研究所、奈良文化財研究所、橿原埋蔵文化財研究所など、中国からは新疆文化庁、新疆文物局、新疆文物考古研究所、国家文物局、中国科学院、中国社会科学院、中国文物研究所、北京大学華東師範大学など隊員は日中合わせて60人にも上った。調査の成果は、報告書の他、仏教大学や北京大学、ウルムチで開かれた国際シンポジウムで報告されている。

 氏はこの調査の際、連れて行った羊7頭のうち4頭が逃げ出し、大変な手間をかけて探し3頭を連れ戻したエピソードを紹介し、チームワークの重要性を強調した。羊は中国人隊員にとっては特に貴重な食料であるため、逃げられたのであきらめようという選択は到底許されなかった、という。

 続いて2002年から始まった日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査にあたっても、友好、共同、安全、高質、節約の「五大精神」を大事にしたことを重ねて強調した。

 小島氏の重要な活動には人材育成事業もある。1986年から始めた新疆大学奨学金により、これまでに支援を受けた学生の数は4,390人に上る。1999年から始めたシルクロード児童就学育英会は、学校へ行けない児童、教材を買えない児童たち1,300人を支援した。1998年から「希望小学校」という名の学校建設事業も始めている。すでに建設済みの学校は5校。まずウイグル族の通う地域に建設してから、漢民族、カザフ族の通う地区に順次、建設するということで、多民族が住む地域の特性に配慮している。

 1999年から始めた文化文物優秀賞は、これまで300の個人・団体を表彰した。

 その他数多くの寄付行為や各種代表団の派遣・受け入れ、さらに出版、講演、写真展といった広報活動の数々を紹介した後、新疆ウイグル自治区および中国との関係は、友好にとどまらず理解、さらには共同に進化しなければならないと、次のように講演を締めくくった。

 北京大学清華大学で講演した時、「新疆へ行ったことある人は」と尋ねると、手を上げるのは1クラスせいぜい3人くらい。北京や沿海州から見るとそれほど遠い、ということだ。お互いを理解するというのは難しい。難しいから努力する必要がある。政府も民間も、経済や文化の面でも、相互理解の努力が必要。日本だけ一生懸命やっているだけでも駄目だ。

 7年前には中国海軍の駆逐艦「深圳」が、親善訪問で東京晴海ふ頭に寄航したこともある。翌年には海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が中国湛江市を訪問した。こんな時代に早く戻ってほしい、と皆が思っている。国際協力で相互理解を促進しなければならない。国際協力は、平和を維持し、戦争を抑止するために重要な活動だ。

 皆さん 魅力あふれる新疆ウイグル自治区へぜひお出かけください。

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小島康誉

小島 康誉(こじま やすたか) 氏: 浄土宗僧侶、佛教大学ニヤ遺跡学術研究機構代表、中国新疆ウイグル自治区政府顧問

略歴

 1942年名古屋生まれ 佛教大学文学部仏教学科卒業 浄土宗僧侶
1960年高校卒業後、建材会社・宝石卸会社を経て、66年24歳で「宝石の鶴亀」(現As-meエステール)を創業。93年株式上場。96年創業30周年を機に54歳で社長を退任。
一方で1987年得度、僧籍に入り、88年佛教大学卒業。89年知恩院で伝宗伝戒。98年念仏行脚日本縦断成満。2006年佛教大学客員教授(11年退任)。
1982年以来、新疆を140回以上訪問し各種国際貢献を実践。1987年「日中友好キジル千仏洞修復保存協力会」を設立し、多くの人々の浄財を新疆文化庁へ贈呈。88年より「 日中共同ニヤ遺跡学術調査」(文科省助成・中国国家文物局許可)を開始し、王族墓地などを発見発掘、「1995年中国十大考古新発見」「20世紀中国大発見100」に選ばれるなど画期的成果をあげ、研 究や報告書刊行はなお継続している。2002年には「日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査」(国家文物局許可)を開始し、国宝級壁画を発見、保護を実施し研究などは現在も継続中。ま た新疆文化文物優秀賞や新疆大学奨学金・シルクロード児童就学育英会を設立(累計約5,600人)、各方面に政治家・行政・企業・大学等を紹介するなど、文化財保護研究・人材育成・日 中間相互理解促進の3分野で約100項目を実践し続けている。東日本大震災老残微力応援中。

編著

 「念仏の道ヨチヨチと」「ありがとう人生燃えつき店じまい」「シルクロード新疆の旅」「命燃えて」「涙のスプリングボード」「シルクロード・ニヤ遺跡の謎」「スタイン第四次新疆探検档案史料」「 見証新疆変迀」全2巻ほか


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