第81回CRCC研究会特別企画 中国研究シンポジウム2015「中国経済の最新動向と日中関係」(2015年 2月12日開催)

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日 時: 2015年02月12日(木)13:30 - 17:00(13:00開場・受付開始)

会 場: 独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

第81回CRCC研究会(シンポジウム) 詳報」( PDFファイル 11.7 MB )

講演資料:下記「 プログラム」欄に掲載

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経済政策変化に対応できる日本企業に活路

小岩井忠道( 中国総合研究交流センター

 減速傾向に関心が集まる中国経済を展望するシンポジウム「中国経済の最新動向と日中関係」(科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催)が2月12日開かれ、中 国で活動する日本企業も新たな対応を迫られている現実が浮き彫りになった。

 習近平国家主席は昨年5月、経済成長優先からの転換を図る新常態(ニューノーマル)という新たな目標を打ち出している。基調講演した柴田聡内閣官房内閣参事官(元在中国大使館参事官)は、「 量から質への転換を図り、構造改革を優先し、持続可能な経済成長を志向する新しい経済政策は、総じて言えば狙った方向に進んでいる」と評価した。中国が日本債券の最大保有国になっている現実や、中 国の貿易面で日本の存在が低下しているデータを示し、中国経済が弱っているのではという見方を否定した。

続いて基調講演した童適平獨協大学経済学部教授は、中国が金利自由化の準備に入っているとの見方とともに、こ れまで金利を気にせず銀行から借り入れを続けてきた国有企業と地方政府の改革を金融改革の課題として挙げた。

 引き続き行われた5人の専門家からなるパネルディスカッションで論議の中心となったのは、変化する中国経済に日本企業がどのように対応すべきか―。渡邉真理子学習院大学教授は、国有企業の動向を中心に、中 国と付き合う方向を提示した。渡邉氏によると、まず中国に求められていることは「世界にとって受け入れられるルールの尊重」。特 に国有企業の行動ルールと競争政策の運用が良い方向に向くようにすることが日本の役割、と語った。

 丸川知雄東京大学社会科学研究所教授は、日本企業による中国への投資の形が合弁から独資へという変遷を経て、再び合弁の時代へ向かうという見通しを示した。その理由として氏は、優 れた経験とノウハウを身につけた中国企業、経営者が増え、日中双方の優位性を結合した合弁企業が成功する可能性が大きくなったことを挙げている。具体例として、若 い中国人を経営者にしたところ販売量が70倍に急増したため、いったん独資にしたのを再び合弁に戻した唐沢製作所の例を挙げた。新しい合弁企業はその経営者が7割の資本を所有する。

さらに日本企業の技術力と中国企業のマーケティング力を生かすため対等出資の合弁企業を設立し、中央空調市場開拓に成功した海信日立を紹介した。中国の電機メーカー、海信と、日 立は合弁企業を設立する前にそれぞれ独自に中国での市場開拓を狙ったものの成功しなかった。

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 丁可日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員は、中国企業が新常態の下で構造転換を迫られている中で成功を収めている中国企業が現れていることを、具体例を挙げて紹介した。これらの企業に共通するのが、イ ンターネットの技術とインターネットがもたらす新たな発想を活用した経営姿勢。創業5年で国内第2のスマートフォンメーカーに急成長した小米の成功の秘訣が、ソーシャルメディアの活用にあると見る氏は、ユ ーザーからの問い合わせに15分以内の返事を徹底させるなど、経営者が先頭に立った製品開発へのユーザーの意見取り込みの努力があることを指摘した。

 パネルディスカッションのモデレーターを務めた大原盛樹龍谷大学教授は、貧富の格差を示すジニ係数が2000年代に上昇しているデータなどを示し、中国は国民が満足する国家になっていないのではないか、と いう問題を提起し、さらに新しい中国に向き合う日本企業は、低賃金の活用という従来の姿勢から転換でき、成果を収められるだろうか、と問いかけた。

 これに対し、丁氏は中国市場で成功する日本企業は2種類あると答えた。一つは、その1社しか作れない商品を持つ企業あるいはその企業しか高い精度を出せない技術を提供できる企業。もう一つは、独 自技術を持たないものの経営者の国際感覚が優れ、現地での人材育成、権限の委譲など子会社の現地化を徹底的に進め、あるいは最終製品を作る中国企業にノウハウを徹底的に教える企業だ、と語った。中 国の携帯端末メーカーにタッチパネルを提供することで成功したシャープを具体例として挙げている。丸川氏が報告した唐沢製作所の成功の秘訣はブレーキ技術にあるとして、中 国国内400もの自転車メーカーが同社からブレーキの提供を受けている事実を紹介した。

 「深刻化する中国の都市環境問題」に絞って話した李春利愛知大学経済学部教授は、あまり議論されていないデータの比較表を示し、北京の大気汚染の原因を浮き彫りにした。

大気汚染の主犯とされるPM2.5の対策は、PM2.5の排出基準を引き上げるだけでは解決できないとしたところが、李氏の主張のポイントだ。氏がまず挙げたのが、日 本の首都圏と北京市の一人当たりの自動車保有台数の違い。東京圏が北京の2倍多い。ところが人口密度の高い都心部で比較すると、北京市中心部住民一人当たりの保有台数は逆に東京都心部の2倍になっている。自 動車利用に代わり得る軌道交通の総延長は、北京市は東京圏の5分の1以下でしかない。さらに道路のデータも加えたさまざまな数値から、北京市民が日本の首都圏住民に比べ、公共交通利用度が低く、自 動車利用度が非常に高いことを氏は明白に指し示した。

石炭から天然ガスへの切り替え、公共交通機関の利用促進など日本の都市化の経験と教訓を中国の大都市建設に役立てることも含め、大気汚染対策を組み立てることが必要、と李氏は指摘した。

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プログラム

13:30 - 13:40  主催者挨拶

中村 道治(独立行政法人 科学技術振興機構 理事長)

13:40 - 14:20  基調講演「中国共産党の経済政策」

柴田 聡(元・在中国大使館経済部参事官(現・内閣官房内閣参事官))
講演資料  「中国共産党の経済政策」(2.15 MB)

14:20 - 15:00  基調講演「中国の金融政策と金融改革」

童 適平(獨協大学経済学部 教授)
講演資料  「中国の金融政策と金融改革」(400 KB)

15:00 - 15:10  コーヒー・ブレイク

15:10 - 17:00  パネルディスカッション「中国経済の最新動向と今後の展望」

モデレータ:
大原 盛樹(龍谷大学 教授)
講演資料  「変貌する中国経済とどう向き合うか」(1.25 MB)

パネリスト:
丸川 知雄(東京大学社会科学研究所 教授)
講演資料  「日本企業の中国事業」(128 KB)
渡邉 真理子(学習院大学 教授)
講演資料  「国有企業改革をめぐる動きから」(176 KB)
丁 可(ジェトロ・アジア経済研究所 研究員)
講演資料  「中国経済の最新動向と今後の展望」(484 KB)
李 春利(愛知大学経済学部 教授)
講演資料  「深刻化する中国の都市環境問題」(1.26 MB)

登壇者紹介

 ■講演者

柴田 聡 氏

柴田 聡 氏:
元・在中国大使館経済部参事官
現・内閣官房内閣参事官(内閣官房副長官補付)

略 歴

1969年岩手県生まれ。92年東大経卒、大蔵省(現財務省)入省。96年スタンフォード大学修士。金融庁監督局、財務省主計局を経て、2008年6月から4年間、北京の在中国大使館経済部参事官。在 任中、日中金融協力の首脳合意(2011年12月)に尽力。帰国後、理財局調査室長・国債政策情報室長を経て、2014年7月から現職。
著書に、「チャイナ・インパクト」(中央公論新社)、「中国共産党の経済政策」(講談社現代新書)、「中国衝撃力」(北京・世界知識出版社)。その他中国経済に関する寄稿多数。


童 適平 氏

童 適平 氏: 獨協大学経済学部教授

略 歴

1954年中国上海市生まれ
1988年中国 復旦大学大学院経済研究科卒業後、 復旦大学専任講師、副教授、2005年松山大学特任教授、明治大学特任教授を経て、2 013年より現職
主な業績:『中国の金融制度』(勁草書房、2013年)など。

 ■モデレータ

大原 盛樹 氏

大原 盛樹 氏: 龍谷大学 教授

略 歴

1967年生まれ、1991年東京外国語大学中国語学科卒業。日本貿易振興機構アジア経済研究所で17年勤務した後、2010年から龍谷大学経済学部准教授。京都大学博士(経済学)。 著書にIndustrial Dynamics in China and India (Palgrave Macmillan)等。

 ■パネリスト

丸川 知雄氏

丸川 知雄 氏: 東京大学社会科学研究所 教授

略 歴

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部卒業後、アジア経済研究所に入所、2007年2月から現職。
著書に「現代中国の産業」、「チャイニーズ・ドリーム」、「現代中国経済」等。


渡邉真理子氏

渡邉 真理子 氏: 拓殖大学政治学部 教授

略 歴

1991年東京大学経済学部卒業、アジア経済研究所入所。香港、北京に駐在。
1998年香港大学M.Phil取得、2011年東京大学経済学研究科 博士号取得。
主な編著論文など。渡邉真理子編著『中国の産業はどのように発展してきたのか』勁草書房、2013年。加藤弘之・渡邉真理子・大橋英夫『2世紀の中国経済:国家資本主義の光と影』朝日新聞出版社、2 013年。「国有控股上市公司控制権、金字塔式決構和侵占行為」『金融研究』2011年第6期。


丁 可 氏

丁 可 氏: 日本貿易振興機構アジア経済研究所 研究員

略 歴

1979年生まれ。1999年中国 南京大学卒業後、名古屋大学大学院経済学研究科進学、経済学博士。2 005年日本貿易振興機構アジア経済研究所入所、地域研究センター東アジア研究グループ所属。専 門は中国経済論、中小企業論。
著書に『中国 産業高度化の潮流』(今井健一氏と共編著)、Market Platforms, Industrial Clusters and Small Business Dynamicsなど。


李春利 氏

李 春利 氏: 愛知大学経済学部 教授

略 歴

1962年生まれ。中国社会科学院大学院、京都大学を経て、1996年東京大学より経済学博士号を取得。米国ハーバード大学客員研究員、マサチューセッツ工科大学(MIT)国際自動車研究プログラム( IMVP)兼任研究員、東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員を歴任。中国 浙江大学講座教授、 南開大学特任教授を兼任。2014年11月より日本華人教授会議代表。専門は中国経済論、エ ネルギー・環 境経済論。
著書に『インドvs.中国 二大新興国の実力比較』(共著)『中国多国籍企業の海外経営』(共著)『中国製造業のアーキテクチャ分析』(共著)など約30冊。著書・論文は日本語、英語、中 国語で発表されるほか、ドイツ語、フランス語にも翻訳される。


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