第98回CRCC研究会「汪婉駐日中国大使館参事官講演会・青年委員会対談」/講師:汪婉(2016年10月21日開催)

東京都日中友好協会共催「汪婉駐日中国大使館参事官講演会・青年委員会対談」

開催日時:2016年10月21日(金)18:30~20:00

言  語:日本語

会  場:科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講  師:汪 婉 駐日中国大使館友好交流部参事官

講演資料:「 汪婉駐日中国大使館参事官講演会講演資料」( PDFファイル 780KB )

講演詳報:「 第98回CRCC研究会 詳報」( PDFファイル 956KB )

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両国民の相互理解何より重要 汪婉中国大使夫人が呼びかけ

中国総合研究交流センター 小岩井忠道

 駐日中国大使館参事官で程永華中国大使夫人でもある汪婉氏が10月21日、東京都内で講演し、中日両国民の相互理解が何より重要であることを強調するとともに、日本が中国をはじめとするさまざまな国の台頭を脅威と捉えず、共に発展するために「広い胸襟を持つべきではないか」と呼びかけた。汪氏は、昨年5月北京で開かれた中日友好交流大会で習近平国家主席が話した「世々代々にわたる友好を図る」という言葉を引き、「両国民が誠意と徳を持って接するようになれば実現する」と講演を結んだ。

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  この講演会は、東京都日中友好協会と科学技術振興機構中国総合研究交流センターが共催した。講演に続き汪氏は、東京都日中友好協会青年委員会の代表二人と、両国の信頼関係を強めるために何が必要か、率直な意見を交わした。

 講演でまず汪氏が多くの言葉を割いたのは、日中両国間の交流がヒト、モノ、カネ全ての面で急速に拡大している現状。さまざまな数字を挙げて、両国が「正真正銘引っ越しのできない隣国、隣人になっている」現実を強調した。

 モノ、カネの面では、日本にとって中国は最近9年間を通じ最大の貿易相手であり、中国にとっても日本は世界で5番目の貿易相手国となっている。2012年に領土問題により両国間の貿易量は低下したものの、2015年には2010年の水準に回復しつつある。中国には、3万3,390社に上る日本企業が進出している。今後1~2年で中国での事業展開をどうするか、これらの企業に聞いた調査結果で、38%が「拡大する」と答え、「現状を維持する」が51%、「縮小する」は8%で、「中国以外の国に移転ないし撤退する」はわずか1.7%にすぎなかったという答えが得られている―。こうしたデータを紹介し、汪氏は、中国経済のモデルチェンジ、構造変化に対応し、多くの日本企業が冷静に地道な活動を続けている事実に目を向けるよう促した。併せて、そうした現実を伝えない日本のメディアに苦言を呈した。

 ヒトの移動についても、汪氏の見方は肯定的だ。2015年にお互いを訪問した両国民の数が750万人に達し、特に日本を訪問した中国人は今年1~9月で500万7千人と、昨年の実績である499万人を3カ月早く越えた現実を強調した。「皆が行くので自分も一度行ってみたい」、「一度行くと、何度も行きたくなると皆が言っている」。夏休みに帰国した際、自ら多くの人に「なぜ、日本に行きたいか」と質問した時に返ってきた答えを紹介した。

 毎週、両国間を飛び交う旅客機が1,010便に上り、毎日1万6,000人が両国を往復している現状を紹介し、「2012年の領土問題のような極端な関係悪化がなければ、この勢いは今後も続くと思う」と明るい見通しも示した。また両国間に360組を超す友好都市があり、これら自治体間のヒトの交流が盛んなことにも触れ、2015年だけで、北京副市長をはじめ20人以上の省長や副省長がそれぞれ日本の友好都市を訪れ、友好関係を深めている事実も紹介した。

 汪氏は1990年代に日本への留学を経験している。留学に関する詳しい数字を示し、若者交流の重要性を指摘した。氏が引用したデータによると、2015年日本にいた中国人留学生は105,507人、外国人留学生の半分を超え、ここ20年間年平均10万人くらいの中国人留学生が日本の大学に学んでいた。さらに、1995年当時、日本から米国への留学生は4万人を超し、世界のトップ。ところが2000~01年には中国が5万9,939人でトップに立ち、4万6,497人の日本は3位に後退する。中国からの留学生は2010~11年に15万7,555人、2013~14年には27万4,439人とさらに増えて1位を維持している。これに対し日本は、2010~11年に2万1,290人と10年前に比べ半減、2013~14年には1万9,334人と2万人を割り、順位も7位に低下している。

 「日本の若い人たちの留学意欲が低下していることが明白に示されている」という感想とともに、汪氏は以下のような数字も紹介した。2012年に日本から中国への留学生は前年に比べ18%増の2万1,126人となり、初めて米国への留学生数を追い越す。「日本の若い人たちが、中国は日本にとって重要な国だと認識していることの現れ。中国にとってはうれしいこと」と、汪氏は語った。

 このようにヒト、モノ、カネの面での交流が進んでいる現状と裏腹に両国が信頼関係をつくれないのはなぜか。汪氏は疑問を投げかけ、その理由について自身の考えを率直に述べて、日本側の新たな対応に期待を示した。

 中国の国情の複雑さは、日本とは天と地ほどの違いがある。先進国の多くがせいぜい数千万人の人口を抱え、しかも教育レベルが高い国民に恵まれているのに対し、中国は世界第二位の経済体であると同時に、56もの多民族国家で7千万人の貧困層を抱える格差が激しい国。「西側と異質な共産党政権による社会主義国」、「先進国が作り上げてきた既成秩序を破壊しようとしている」といった先入観で先進国が中国を排除しようとする姿勢をとり続ける限り、信頼関係はつくれない。「中国は民主主義の国ではない」などと自分たちの価値観を押しつけること自体、非民主主義でないだろうか。

 中国の飛躍的な発展は近隣諸国にとって「脅威」ではなく、ともに発展するチャンスであるということについては、「中国人の平和を愛する伝統的精神はDNAに根差したもので、覇権を求める遺伝子はない」と習近平主席も話している。むしろ西洋が価値観、先進科学技術、文化など、武力を背景にした圧力によってアジア諸国に近代を押し付けてきた事実は否定できない。一方中国から日本に入ってきた漢字、儒教、お箸(はし)など、あらゆる中国要素は、何一つ中国が武力によって押し付けたものではない。中国は今「一帯一路」構想を提出し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など、善隣外交理念の具現化を迅速に推し進め、日本の参加も呼びかけている。日本は長い間、中国が責任のある国になるよう促してきた。ようやく中国が責任を果たそうとしていることについて善意をもって理解し、支持することができるかどうか、注目している―。

 こうした見方を氏は示し、さらに「遠くの親戚より近くの隣人」など、日中関係の重要性を指摘する習近平国家主席の最近の言葉を紹介した上で、日本は、米国を除けば人口が一億人を超す先進国で唯一の国。予見できる将来、中国と日本は世界第2位と第3位の経済大国であり続ける。「環境、エネルギー、社会福祉、地方振興など共通の課題を両国が知恵を出し合い一緒になって解決していく努力が必要だ」と、日本に対する大きな期待を示して、講演を締めくくった。

(文・写真 CRCC編集部)

汪 婉

汪 婉(おう えん)氏:
駐日中国大使館友好交流部参事官

略歴

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、同大学院博士課程修了、博士学位取得。中国社会科学院近代史研究所教授、上海 華東師範大学歴史学部兼任教授。現在、中国大使館友好交流部担当の参事官としても活躍。 


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