第9回中国研究サロン「大学・学生から見る中国の動向と将来 —現場からの報告—」/講師:宮内 雄史(2014年10月02日開催)

演題:「大学・学生から見る中国の動向と将来 —現場からの報告—」

開催日時・場所

2014年10月 2日(木)16:00-17:30

独立行政法人科学技術振興機構(JST)
東京本部別館1Fホール

当日配布資料

大学・学生と人材から見る中国社会の動向-現場からの報告-」( PDFファイル 10.3MB )

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存在感を増す中国トップレベルの大学・学生

石川 晶(中国総合研究交流センター)

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 東京大学北京代表所所長の宮内雄史氏は10月2日、科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、中国のトップレベルの大学および大学生の最近の留学に関する傾向などについて、日 本および各国との比較や大学生の生の声などを交えて紹介した。

 宮内氏はまず清朝時代末期(19世紀末から20世紀はじめ)に開学し、1952年の大学再編成を経て現在に至った北京大学清華大学などの中国の主要大学について簡単に説明した上で、近 年の中国の大学の大きな変化について紹介した。

 大学入学者数は1999年から急増し、この年に約160万人に達し、4年後の2003年には約380万人、8年後の2011には約680万人へと膨れ上がった。一方、国家予算の教育費も2000年( 約2600億元)以降急激に伸び、2012年には約2兆1200億元に達し、中国の大学教育は世界有数の規模・水準となった。戦争や文化大革命などの紆余曲折はあったものの、中国の大学は「百年の大計」を 実現させたと氏は強調した。

 中国のトップレベルの学生達は、日本への留学に関してどのような考えを持っているのだろうか?宮内氏は彼らから直接話を聞いたところ、そ のいずれからも将来の目標が非常にはっきりしているという印象を抱いたという。

 ある清華大生は、日本は福島の原発事故を経験し、その反省を踏まえさらに原発の安全性に関する技術などが上がっているだろうと考え日本への留学を希望し、ま た浙江大学のある学生はコンピュータに関心を寄せ、将来的には産業に結び付いたコンピュータが重要であるから、ソフトウェア産業の空洞化が起こりはじめているアメリカではなく、こ の点に強みのある日本に留学したいという。

 他方、日本ではあまり話題にならないが、中国では世界大学ランキングを非常に気にするという。北京大学(2012年・45位、以下同)、清華大学(同50位)の学生はランキングからすると、日 本への留学を検討する際、東大(同23位)以外は「格落ち」に感じることが少なくない。

 2000年以降、留学する中国人学生は急増 [1] し、2013年には海外留学中の中国人学生は約110万人となった。これは日本人留学生(6万人弱)の約20倍の数字である。ま た留学希望先はやはり英語圏が多く(アメリカ33%、イギリス17%、オ ーストラリア14%、カナダ14%)、その一方で日本を留学先として希望する学生はわずか3.6%であるという調査結果が出ている。 

 中国の主要大学では、学部卒で留学するケースが多い。2013年のデータでは、北京大学の学部卒業生の28.9%が、清華大学の学部卒業生の27.3%がアメリカなどへ留学した。

 上述の調査結果のように日本への留学者は極端に少ないが、それはなぜか。氏によると、日本では学部卒業後すぐに奨学金を得るプログラムが少ないという点が原因のひとつではないかと分析している。こ れに対しアメリカの多くの大学が学部卒から利用できる奨学金プログラムを有し、優秀な学生がアメリカへ留学する流れができるという。

 日本人にとっては残念な調査結果ではあるが、中国の大学生にとって日本は留学するメリットはあるのか?この問題に対して宮内氏は、小宮山宏前東大総長の提唱する「課題先進国」と いうキーワードにヒントがあるのではないかと指摘した。①日本列島は災害が多く、資源・食糧不足などに対し一定の成果が出ている。②日本は優れた外の文化や技術を吸収するプロセスを持っている。③ 日本の大学の総合性、研究室、ゼミ制度―こうした点が日本の大学のアピールポイントになるという。

 多くの中国人学生が各国に留学する一方、各国から大量の学生が中国に留学している。氏は日本への留学者数との比較を通して解説した。2001年時点では、中国への留学者数は5.2万人、日 本へは7.9万人であったが、10年後の2011年には逆転し、中国へは29.2万人が留学する一方、日本へは16.3万人にとどまった。

 氏はアメリカ人留学生をはじめとした各国の留学生数に着目し、その推移を分析したが、日中両国のアメリカ人留学生の場合、その人数差が2012年では10倍以上(中国24583人、日本2133人)に 開いており、将来のアメリカの知中国家と知日家の比率も同様の差が出てくると見ている。

 中国語の習得を目的とする留学生が多いのは当然だが、氏は注目すべき点として、医学部など医者になるコースに進む留学生の多さを挙げた。主に英語による医者資格コースを開設しているが、こ れは途上国支援から発展したものと見られる。

 また留学生を受け入れる施設も充実している。留学生向け学生寮なども各大学で完備し、日本との差は歴然としている。

 氏は上述の中国から留学・中国への留学の双方に関連して、中国の将来予想にも着目した。ピューリサーチの「中国は最終的にアメリカに替わり世界をリードする超大国になるであろうか?」という問いに対し、イ ギリス、ドイツなどヨーロッパ各国の調査では40~50%がYesと回答している。アメリカでの調査でも39%がYesと回答したが、これに対し日本での調査では回答者の15%しかYesと思わなかった。こ の差の大きさには、質疑応答でも話題になった。


[1]【参考】2003年時点で留学中の中国人学生は35.6万人(教育部国際合作与交流司HPより)

宮内雄史氏

宮内 雄史(みやうち ゆうじ)氏:
東京大学北京代表所 所長

略歴

1947年生まれ。1971年東京大学教養学部教養学科(専攻:米中関係)卒業。1973年三菱商事株式会社入社。1974~76年、シンガポール南洋大学留学、中国語習得。1978~81、1 983~87年と北京駐在。1992年同社業務部中国チームリーダー、1997年業務部中国室長。2000年日本貿易会・国際社会貢献センター事務局長。2004年三菱商事(上海)総経理室長。2 007年より東京大学北京代表所長。


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