第17回中国研究サロン「習近平政権 3年目の真実」(2016年 3月24日開催)

演題:習近平政権 3年目の真実

開催日時・場所

2016年 3月24日(木) 16:00 - 17:30

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講師

中澤 克二:日本経済新聞社 編集委員兼論説委員

写真

講演レポート:「毛、鄧両氏に並びたい習近平氏」

 中澤克二 日経新聞編集委員兼論説委員が3月24日、JST中国総合研究交流センター(CRCC)主催の第17回中国研究サロンで「習近平政権 3年目の真実」と題して講演、習氏が、毛沢東、鄧小平氏に並ぶ歴史的実績を残すことを狙い権力掌握を着々と進めているとの見方を明らかにした。

 習氏の狙いが実を結びつつあるエピソードとして中澤氏が挙げたのが、3月に開催された全国人民代表大会(全人代)でチベット代表が胸に着けていたバッジ。中国共産党は、鄧小平氏が実権を握っていた時代以来、個人崇拝を禁じる政策を採っている。1960年代に毛沢東崇拝が過度に高まった結果、多数の犠牲者が出た反省からだ。ところがチベット代表が着けていたバッジは2種類あり一つには習氏1人しか描かれていない。

 個人崇拝的な行為が全人代の代表にまで浸透し始めている例として、中澤氏は注意喚起した。

 中国共産党の最高意思決定機関は政治局常務委員会だが、常務委員を選ぶに当たっては長老が大きな影響力を持つ。実際に現常務委員の選任に際しても江沢民氏の影響が大きかった。習氏が進める反腐敗運動は、江氏周辺の有力者を含め、意に沿わない人物に狙いをつけて次々に摘発、権限を剥奪し、自己の権力基盤を強めるのが狙い。しかし、腐敗活動に関わっている人は至る所にいる。部下から密告されるのを恐れ、仕事をしない役人が増えるという実態も生じている、と中澤氏は解説した。

 中国国家主席の任期は2期10年までというのが、憲法の決まり。来年、次期最高指導部の人事を決める際、後継者を実質的に決めるのかどうか、さらには2期10年を務めあげた習氏が権限を手放すのかどうか、が当面の関心事。国家主席と違って期限が切られていない党総書記の座も後継者に譲るかどうか。人事を巡る動きが注目される、という。

 経済については、「2020年に1人当たりのGDPを倍にする」という目標達成のためには、年6.5%以上の経済成長を掲げざるを得ず、実際には厳しい数字であることも指摘した。懸念される現象として氏が挙げたのが、「不動産の2極化」。中西部では不動産の在庫だらけである一方、北京、上海、深圳(せん)や地方の大都市では価格が高騰している現実を挙げた。深圳では2月の不動産価格は前年同月に比べ5割も高くなっている現状を示し、「見合う実需があるとは思えない」と断じている。

 外交については、中国と日本との関係だけに注目する危うさを指摘した。中国にとって日本は、かつてのように経済成長に学び、GDP数値を目標にしていた国ではない。中国、ロシア、北朝鮮と米国、日本、韓国という3国対3国の新しい冷戦構造ができつつある。中国は現在、日本との関係は悪くしたくないと思っているが、南シナ海に口を出すようだと話は別。日本が南シナ海に本気で介入するなら中国も対抗する、という姿勢だ…という見方を氏は示した。

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)にどのように関与すべきか、も日本にとっていずれ大きなテーマになるとの見通しも明らかにしている。当初の予想に反し、欧州の主要国が次々にAIIBに参加しているのは、欧州の経済の落ち込みが激しく、中国の経済力が大きくなっているため。中国企業の海外展開も目立ち、「ジュラシック・ワールド」や「バットマン」などをつくった米映画会社を万達集団(ワンダ・グループ)が買収するというニュースが関心を集めた。ハリウッドで、反中国的な映画が作りにくくなるかもしれない…と氏は見ている。

 中国の経済がまだまだ伸びることは、間違いない。中国にとっては、米国の背中がかなり見えてきた、ということではないか。だからこそ、中国に関心が集まっている、と中澤氏は締めくくった。

(文・写真/CRCC編集部)

中澤 克二(なかざわ かつじ)氏: 日本経済新聞社 編集委員兼論説委員

略歴

1983年3月 仙台二高卒。87年3月早稲田大学第一文学部卒。同年4月日本経済新聞入社。東京編集局整理部、商品部、政治部を経て98年3月から2001年2月まで中国・北京に記者として駐在。0 1年3月から政治部。首相官邸キャップなどの後、04年3月から政治部次長。11年の東日本大震災の際、震災特別取材班総括デスク兼政治部次長として仙台に半年ほど駐在。1 2年4月から中国総局長として北京に赴任。15年4月 東京本社 編集委員兼論説委員 。仙台市出身、51歳。


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