第2回日中大学フェア&フォーラム開催報告
2011年10月31日 中国総合研究センター
総括
JST中国総合研究センターなどの主催により、「世界に羽ばたく中国の大学との新たなパートナーシップの構築に向けて」をテーマとする「第2回日中大学フェア&フォーラム」(F&F)が、3 日間で延べ9,447人の入場者を記録して閉幕した。前回に引き続き日中の100を超える大学が一堂に会して交流をより一層深める場を提供するとともに、産 業界が近年発展の著しい中国の大学との連携協力に着目した。開会の初日に中川正春文部科学省大臣、程永華駐日中国大使が出席され、NHKニュース、asahi.comなど日中100以上の新聞、ウ ェブサイトに取り上げられた。
近年中国政府は、「科学技術」と「教育」を、国を興すための最重点課題として取り上げ、一貫して科学技術の振興と教育の拡充を強力に進めてきた。その結果、中国の大学は国の発展の中核となり、人材の育成、産 業イノベーションの源となっている。
中国から参加した50の大学といっても、中国全土の2,305大学の3%にも満たない。中国での大学進学率は23%であり、人口1,000人当たりの大学生の数は、日本のちょうど半分にまでなっている。年 間600万人以上の大学卒業生を吸収するだけの社会的な基盤がまだないため、中国は大卒失業者数が毎年急進的に増えている。その点で現在は教育の頭でっかち国になっていると言えるだろう。
しかし、1990年代から始まったIT(情報科学)をツールとした産業革命は、覇権国のアメリカから瞬く間に全世界へと広がり、中国は「世界の工場」を実現し、世 界中に散らばっていた多くの有為な人材を母国に呼び戻して21世紀の輝ける旗手となってきた。急激な産業振興によって、多くの面で社会に歪を作り不安定な局面を作り出しているが、一 方で世界の製造業の地図をすっかりと塗り替えてしまった。そのエネルギーはとどまるところを知らない。
このような変革の時代にこのイベントを開催することは、日中間を巻き込んだ政治・社会の様々な状況と、平坦な道ばかりではない日中の関係を乗り越えるために大きな意味がある。
F&Fの各セッションの演台に立った日中の多くの人が、両国を「一衣帯水」にあると訴えた言葉が、もはや引き返すことができない未来志向の関係に入ってきたことをうかがわせた。未 来志向の日中関係の模索という点では日中双方の大学関係者、研究者の思いは同じであり、討論と意見交換は大きな成果を残した。大学フェアの交流会やフォーラムの懇親会の席上で、中 国の代表者の多くが次の開催を希望する発言をしているが、このイベントに対するいくつかの課題も提起されている。
出展者、参加者からも多くの要望が寄せられている。これらの課題を解決しながら、次へのステップへ進むべく努力する所存である。