【07-007】日中国交正常化と国慶節と科学技術

2007年10月3日〈JST北京事務所快報〉 File No.07-007


日中国交正常化と国慶節と科学技術

 9月29日は、日中国交正常化35周年の記念日だった。この日は土曜日だったので、前日の28日の昼、北京の日本大使公邸において、日本大使館主催の日中国交正常化35周年祝賀会が開かれた。日本からは、> > 森喜朗氏、村山富市氏という二人の元総理が参加された。筆者も北京に駐在する他の大勢の日本人関係者の一人として、この祝賀会に参加した。

宮本大使の挨拶に続いて、中国側要人の代表として最初に祝辞を述べたのは、路甬祥氏だった。路甬祥氏は全国人民代表大会常務委員会副委員長である。司会者からはこの肩書きのみが紹介されたが、実は、路 甬祥氏は中国科学院の院長でもあり、日中科学技術協力における中国側のカウンターパートの一人である。国 立研究機関の要である中国科学院の院長に路甬祥氏のような国内で要職を占めている人物が充てられていることは、中国では科学技術が非常に重要視されていることを示していると言えるだろう。

今年は日中国交正常化35周年であるが、35という数字は、区切りとしてはちょっと中途半端である。それにも係わらず、中国側は、今年の日中国交正常化35周年をかなり大きく扱っている。9 月29日付けの人民日報は全部で12面あったが、後半の4面は「日中国交正常化35周年特集」だった。しかも第8面は日系各企業の協賛による「日中文化・体育交流年」に関する全面広告だったため、こ の日の人民日報は12面のうち5面が日中国交正常化関連の紙面で埋め尽くされた格好になった。

(参考1)
2007年9月29日付け人民日報(図形版)

http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-09/29/node_17.htm

※左上の「選択版面」にあるページ番号をクリックするとこの日の人民日報の紙面の各面をパソコンの画面上で見ることができる。

 この日の人民日報10面には、「留日学人活動駅」主任の李建保氏(清華大学教授、海南大学学長)が書いた文章も載っている(この場合の「駅」は英語の「ステーション」のことで、「活動駅」とは「活動拠点」の意味)。

(参考2)2007年9月29日付け人民日報第10面記事
「日本留学経験者の期待」(李建保)

http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-09/29/content_21668545.htm


李建保氏がこの文章の中で書いているが、日本に留学した経験のある者のうち多くの者が、帰国後、教育、科学技術、経済などの面で大きな活躍をしている。李建保氏自身、自 ら研究活動を行いながら大学の学長を務めているほか、第10期中国人民政治協商会議(毎年、全国人民代表大会と同時期に開催され、法律の議決権はないものの、各界を代表して政府の政策に意見を具申する会議))の 委員も務めている。

35年前の1972年、中国の国連復帰(1971年10月)、ニクソン米大統領の訪中による急速な米中接近(1972年2月)を受けて、佐藤栄作氏が総理を退陣し、7月 7日に田中角栄氏が総理に就任すると、電光石火のごとく日中交渉は進展し、1972年9月29日、田中総理が訪中して、日中国交正常化が実現した。この中国側の積極的な日本への接近は、当 時対立関係にあったソ連に対抗する必要性、という国際政治上の背景もあったが、それと同時に、中国が経済力や技術力を持つ日本との協力を強く望んでいたことの現れである、と言うこともできると思う。

実際、1978年末以降、トウ小平氏の指導の下、改革開放政策を推進することになってからの中国の経済発展において日本が果たした役割は大きい。李建保氏が言うように、この過程で、日 本と様々な関係を持った人々が、今、発展を続ける中国の中で力を発揮している。日中間の科学技術協力は、個別の科学技術テーマごとの進展に寄与しているのはもちろんのこと、人と人との結びつきの強化を通じて、も っと広い意味での日中関係の強化に寄与しているし、今後も寄与するに違いない。

ところで、10月15日から始まる第17回中国共産党大会を前にして、中国中央電視台(CCTV)総合チャンネルで夜7時半過ぎから放送している報道番組「焦点訪談」では、9月末から「新起点」と いう現代中国の課題について伝えるシリーズ物を放送しているが、国慶節の10月 1日の放送では、「創新の飛躍」と題して、早ければ年内にも打ち上げが予定されている中国初の月探査機「嫦娥1号」の 計画を中心とする科学技術の「創新」について伝えていた。

(参考3)中国中央電視台ホームページ2007年10月 1日放送「焦点訪談」
「新起点」シリーズ第7回「創新の飛躍」

http://news.cctv.com/china/20071001/101724.shtml

※上部の「視頻」のボタンをクリックすると、ネット上の通信状態がよければ、この日放送された番組をインターネット上で動画で視聴することができる。
 

この番組の後半では、科学技術における「自主創新」が今後の中国の発展のカギであり、全社会(政府+民間)の研究開発投資をGDPの2.5%にしなければならない、といった解説もなされていた。今、中 国では「自主創新」がひとつの合い言葉になっている。国慶節の日に放送された「焦点訪談」の「新起点」シリーズでこのテーマを取り上げた、ということは、まさに今の中国における「新起点」が科学技術の「 自主創新」h にあることを象徴的に表しているものと言える。

日中国交正常化の記念日と国慶節とは元来は関係ないが、中国での一連の報道振りを見ていて、中国の未来にとって科学技術は非常に重要であり、中国の科学技術にとって日本の果たすべき役割は大きい、と いうイメージを筆者は持った。「日中国交正常化」と「国慶節」と「科学技術」とは本来関係はない言葉であるが、これを「日本が中国において果たすべき役割」と「中国の未来」と「科学技術」と いう言葉に置き換えれば、この三つは実は密接に関係している、そんなふうに思えたからである。

 

(注:タイトルの「快報」は中国語では「新聞号外」「速報」の意味)
(JST北京事務所長 渡辺格 記)
※この文章の感想・意見に係る部分は、渡辺個人のものである。

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