【07-008】中国共産党大会胡錦濤総書記報告の科学技術関連部分

2007年10月16日〈JST北京事務所快報〉 File No.07-008


 10月15日~21日の予定で、中国共産党第17回全国代表大会が北京で開催されている。中国共産党の全国代表大会は5年に1度開催される。中国の政治では「中国共産党による指導」が基本原則であるので、中国共産党大会で議論された政策は、今後の中国の政策の方向性を指し示す重要なものとして内外から注目を集めている。

 党大会の初日の10月15日の会議の冒頭、胡錦濤総書記が報告を行った。この報告は、日本の国会における所信表明演説のようなもので、政策の基本的方向性が示されていると思われるので、その中から科学技術に関連する部分を簡単に紹介する。下記の「 」内は、今回の胡錦濤総書記の報告のうち、科学技術に関する部分のポイントである。

○前回の党大会以降の過去5年間の総括
「過去5年間、中国の経済的実力は大幅に上昇した」「GDPは年平均10%以上伸びている」「創新型国家の建設は良好であり、自主創新能力は比較的大きく向上した」「エネルギー、交通、通信等のインフラや重点プロジェクトの建設の進展は顕著だった」「有人宇宙飛行に成功した」

(筆者注)インフラや重点プロジェクトの建設については「進展は顕著」と表現しているのに対し、自主創新能力については「比較的大きく向上した」とやや弱い表現になっていることは注目すべきで、胡錦濤総書記が「自主創新能力の向上はまだ不十分だ」と認識していることを伺わせる(下記参照)。また、経済実力の向上について話している中で有人宇宙飛行について言及することにはやや唐突な感があるが、有人宇宙飛行についてだけ個別プロジェクトについて特記したということは、この5年間の間では、有人宇宙飛行の成功が非常に大きなエポック・メーキングなできごとであったことを示している。

○今後の目標

「構造を優れたものにし、効率を向上させ、資源の消費を低減し、環境保護を進めるという基礎の上に立って、1人あたりのGDPを2020年には2000年の4倍にすることを実現する」

 (筆者注)1982年の党大会において、トウ小平氏は、1980年のGDPを2000年には4倍に増加させる、との目標を提示した。中国は、その後、この目標を実際に実現させている。胡錦濤総書記が今回示した目標を達成するには、中国は、今後とも一定の経済成長を続ける必要があるが、今回の胡錦濤総書記の目標の設定の仕方は、1)トウ小平氏と同じ「20年間で4倍」という数値目標を掲げることにより、自らがトウ小平氏の同じ路線を歩む「改革路線の後継者」であることを強調すること、2)「一人当たり」を加えることによって各個人の経済力をアップさせることが目標であるとのイメージを与えること、を意図したものと思われる。

○科学技術に対する見方

「自主創新能力を向上させ、創新型国家を建設することは、国家発展戦略の核心であり、総合的な国力を向上させるための鍵である」
「国家創新体系の建設を加速させるために、基礎研究、先端技術研究、社会公益性のある技術の研究を推進する」「企業を主体とし、市場による導引を重視し、産学官結合した技術創新体系を確立する」「指導と支援により創新のための資源を企業に集中させ、科学技術の成果を現実的な生産力に転化させる」

(筆者注)引き続き「自主創新」は重要なキーワードである。その際、マーケット・メカニズムによる技術革新を重視し、企業のイノベーション能力を高めることが鍵であると考えていることが読み取れる。この部分は、これからの中国は、安くて大量にある労働力に基づく現在中心となっている労働集約型産業に頼っていたのではだめで、各企業が「自主創新」によるイノベーションを進める「創新型国家」にならなければ、上記の「1人あたりのGDPを2020年には2000年の4倍にする」という高い目標を達成することはできない、という認識を示しているものと思われる。

 この胡錦濤総書記の冒頭の報告を機軸として、今後党大会の中で議論が行われるが、科学技術に関しては、基本的にこの胡錦濤総書記の報告のラインに沿って政策の方針が決められていくものと思われる。

(注:タイトルの「快報」は中国語では「新聞号外」「速報」の意味)
(JST北京事務所長 渡辺格 記)
※この文章の感想・意見に係る部分は、渡辺個人のものである。

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