【08-003】2008年温家宝総理の政治工作報告の科学技術関連部分

2008年3月10日〈JST北京事務所快報〉 File No.08-003

 3月 5日から3月18日までの予定で第11期全国人民代表大会第一回全体会議が開かれている。全国人民代表大会は、日本の国会に当たる機関で、毎年1回(通常毎年3月)に開催される。会議の冒頭、国 務院総理がそれまでの政府の政策を振り返り今後取り組むべき政策の重点事項について報告する「政治工作報告」を行うのが通例となっている。

全国人民代表(国会議員)は5年が任期であるが、今回の全国人民代表大会は、2008年3月~2013年3月までの5年間を担当する第11期の全国人民代表大会の最初の全体会議である。中 国の政策は中国共産党の指導の下に進められるが、今回の全国人民代表大会は、昨年(2007年)10月に開催された中国共産党第17回党大会の後の最初の全国人民代表大会である。そのため、温 家宝総理の政治工作報告も、過去5年間の政府の政策を回顧し、今年採るべき政策についてまとめたものとなっている。

今回の温家宝国務院総理の政治工作報告のうち科学技術関連部分をまとめると以下のとおりである。
 

(参考) 温家宝国務院総理の政治工作報告の全文は下記のページで見ることができる。

ネット版人民日報「人民網」
「第11期全国人民代表大会第1回会議・第11期政治協商会議第1回会議特別報道ページ」
「現場実況中継ページ」-「文字記録」のページ
「第11期全国人民代表大会第1回会議開幕式」(2008年3月 5日)
http://live.people.com.cn/note.php?id=626080304090739_ctdzb_001
(注)このページは、全国人民代表大会での発言を実況中継の文字による書き起こしとして掲載したもので、実際の政治工作報告は、後日、誤 字訂正などが行われて別途掲載される可能性がある。

 温家宝総理は、政治工作報告の冒頭部分で「突如襲ったSARS流行や歴史的な低温・大氷雪といった自然災害を乗り越え、世界が注目する改革開放と現代化建設を成し遂げた」と 2003年のSARSと2008年の寒波・大氷雪被害について言及した。

続いて述べられた政治工作報告のうち科学技術と関連の深い部分のポイントは以下のとおりである。

1.過去5年間の回顧

  • 「2007年の国内総生産は24兆6,600億元(約370兆円)に達し、2002年に比べて65.5%の増加、年平均で10.6%の増加となった。これで中国は世界の中で第6位から第4位に上昇した」
  • 「2007年の輸出入総額は2兆1,700万ドルに達した。これで中国は世界の中で第6位から第3位に上昇した」
  • 「創新型国家建設を良好に進め、いくつかの国際的に影響を与える科学技術の新しい成果を生み出した」「有人宇宙飛行と初めての月探査プロジェクトを円満に成功させた」
  • 「2006年~2020年に至る国家中長期科学技術・発展計画を制定し、自主創新能力を強め、創新型国家建設を進めることに対して深い影響を与えた」
  • 「基礎科学と先進的な研究を強化し、高性能コンピューター、第三世代移動通信、スーパー・ハイブリッド水稲等の新しい研究成果をもたらし、自主的な知的財産を創造し、市場競争力のある製品を生み出した」「 中央政府が5年間に科学技術に投入した金額は3,406億元に達した」「社会全体の研究及び実験のための経費は、2002年の1,288億元から2007年の3,664億元に増加し、国 内総生産に占める割合も1.07%から1.49%に増加した。」
  • 「情報、生物、航空宇宙、新エネルギー、新材料、海洋等のハイテク産業は加速して発展した」

2.2008年に行うべき施策

  • 「国内総生産の伸びを8%程度にし、安定的な経済発展を維持する」「消費者物価を4.8%程度の上昇に留める」
  • 「自主創新を発展の中心にするという方式を堅持する」「国家中長期科学技術発展計画を真剣に実行し、大型航空機開発、水質汚染処理、大型天然ガス、石 炭ガス開発といった国家重大プロジェクトを全面的に始動させる」「基礎研究、ハイテク研究と科学技術支援計画を実施する」「新エネルギー自動車、高速軌道交通、工業・農 業によける節水等の重要なカギとなる技術で新展開を得る」
  • 「国家創新システムを推進し、一連の国家実験室、国家工程センター、企業向け創新支援制度と企業技術センターを重点的に設置し、科学技術の基盤的能力の建設を強化する」
  • 「2008年の中央政府による科学技術関連支出を1,134億元(対前年比134億円増)とする」
  • 「企業が技術創新の主体としての役割を十分発揮できるようにし、企業による研究開発投資を奨励し、支援する」「自主創新製品に対する政府調達における指示を強化する」起 業リスクと試験的投資の範囲を拡大する」「知的財産権戦略を実施し、国際科学技術協力を強化する」
  • 「産業構造の高度化を推進する」「情報と工業の融合を推進する」「ハイテク産業を着実に推進し、設備製造業を強力に推進する」「伝統的な産業を高度化し、特に現代型サービス業の発展を加速させる」「 新型表示パネル、ブロードバンド通信とインターネット・ネットワーク、生物医薬等の一連の重要なハイテク項目を継続的に推進する」「大型でクリーンかつ高効率の発電設備、高度のデジタル工作機械、基 礎製造設備等のキーとなる分野の重要な設備・部品の自主研究開発と国産化を推進する」「地質調査活動を強化し、資源探査・開発レベルを向上させる」「 現代的なエネルギー原料と総合的な運輸システムを積極的に発展させる」
  • 「省エネ、排出削減、環境保護の能力を高め、品質及び安全の向上に努める」
  • 「国産の知的財産権と国産ブランドによる製品の輸出を奨励する」「外資との協力方式を改善し、企業の国外進出を進める政策を実施する」

 今回の全国人民代表大会で議論されると見られているエネルギー省の設置等の政府機構改革については、「国務院の機構改革案を今回の大会で審議すべく提案する」とだけ述べ、具 体的にどのような機構改革案を考えているのかは、この政治工作報告では明らかにされていない。

なお、この政治工作報告では、過去5年間の外交政策を回顧する部分で「中米関係は安定的に発展した」「中ロ戦略協力関係は新しいレベルに向上した」「中欧間では全面的な協力が日増しに強化された」「 日中関係は改善した」「周辺各国との友好関係がさらに一歩強化された」「地域間協力で新しい成果が得られた」「開発途上国との間の団結協力では新しい局面が切り開かれた」と述べている。個 別の国名が特記されているのは、アメリカ、ロシアと日本だけである。このことは、現在の政権が日中関係を重要視していることの現れとして注目すべきと思われる。

(注:タイトルの「快報」は中国語では「新聞号外」「速報」の意味)
(JST北京事務所長 渡辺格 記)
※この文章の感想・意見に係る部分は、渡辺個人のものである。

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