【16-06】鋳剣の故郷、浙江省龍泉市に伝わる「龍泉宝剣」

2016年 5月20日 中国総合研究交流センター編集部

 浙江省龍泉市。ここは鋳剣の祖と言われる欧冶子(おうやし)が炉を開いたとされている町。今回紹介する伝統産業は「龍泉宝剣」だ。青磁の故郷として日本でも古くから知られ、この地を舞台にした様々な伝承・7 7 伝説は各地に残っている。欧冶子は多くの名剣を作ったと言われているが、伝承や伝説は実に多様だ。日本で有名なのは、眉間尺を主人公とした魯迅の「鋳剣」だろう。こ れは少し気味の悪い部分もある復讐劇(恐らく捜神記がルーツ)だが、中国の昔話というのは後世に教訓を伝えるモノが多い為、本来はハッピーエンドが多い。

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写真1 龍泉宝剣

 日本にある資料に目を通し、中国の資料も翻訳したところ、『呉越春秋』という伝書をルーツにした物語や、地域伝承のような物語の中には、やはりハッピーエンドで終わる話も見つかった。しかし、伝 承や伝説が多様でも、本質というのは変えようが無い。この地で確実に言える事の一つが、春秋時代(紀元前770年~紀元前403年)に、鉄の剣(兵器)を作り出す技術が、現在の浙江省である越の国にはあり、そ の伝統を様々な形で継承してきた職人たちが、今現在も剣を作り続けているという事実。今では材料を溶かして固める鋳造ではなく、叩いて鍛える鍛造として一部機械の力を使い、分 業化をしながらもこの伝統は受け継がれ、時代に合わせて文化を守り続けている。

 今回、実際にソードファクトリーを覗かせてもらって感じた事はたくさんある。現代ではこのような剣を戦争で使う事もなければ、当然持ち歩く事などもっての他だ。それなのに毎日、こ の地では大量の龍泉宝剣が作り続けられている。中途半端な複製品や工業製品では無い、本物の龍泉宝剣が―。

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写真2 高温の炉の前で機械式ハンマーを使い剣を鍛え続ける職人

 龍泉宝剣は、日本では七星剣と同義語として使われている。はじめに龍泉宝剣と聞いた時、とっさに何の事かわからない方もいらっしゃるかと思うが、七星剣と聞いたらどうであろう。聖 徳太子の逸話の中にも出てくるので、聞いた事がある方も多いのではなかろうか。

 龍泉市にある龍泉宝剣のソードファクトリーまでは、浙江省の省都である杭州市から車で約5時間。長い道のりに思われるかもしれないが、道中には金華豚で有名な金華市や、紹興酒で有名な紹興市、温 泉で有名な武義県もあるので、少し寄り道をしながらドライブを楽しむと、あっという間に到着しているだろう。

 龍泉宝剣の制作方法は製作者、制作集団によっても変わるが、今回伺ったソードファクトリーでは、まず素材になる鉄の切り出しから行う。工場から運ばれてきた鉄の角材を、作る剣の長さに応じて切り分け、そ れを職人たちに配り、彼らはそれを炉に入れ真っ赤になるまで加熱する。真っ赤になった鉄を炉から出し、機械式ハンマーで叩き伸ばし、重ねる事を繰り返して剣の形にしていくのだ。こ の工程によりスラグ(不純物)を取り除き、純度の高い鋼にしていくのだが、これを鍛造と言う。このファクトリーで剣の形になった素材はまた別の工房に運ばれ、そこでもう一度炉に入れ、今 度は職人の腕でハンマーを振い、仕上がった剣を焼き入れした後、水研ぎで丁寧に表面を整え、刃付けがされる。出来上がった刃に合わせて拵えを作り、龍泉宝剣は完成する。日本刀も美しいが、龍泉宝剣もまた美しい。& lt; /p>

 残念ながら日本では剣を所有する事は認められていないので、本当の剣を見た事が無い方は多いだろう。しかし、ここに来れば本物の剣を見る事ができる。もちろん販売もしているので、持つ事もできるし、鞘 から剣を抜く事もできる。だが注意して頂きたいのは、本物の龍泉宝剣はとにかく重い。ここにあった一番大きな龍泉宝剣で、約4kgある。鞘から剣を抜くだけでも一苦労だ。太 古の武人達はこんなモノを振り回して戦っていたのかと思うと、その偉大さを感じずにはいられない。これが、今の時代でも龍泉宝剣が求められ続けている大きな理由である。龍泉宝剣は観賞用や贈答用として、ご 高齢の方だけではなく、若い世代からもとても人気のある逸品なのだ。


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