【07-02】中国・地域イノベーション事例-環渤海湾地域の発展(上)~中国最大規模の開発が始まった天津浜海新区~

岡山純子(中国総合研究センター アソシエイトフェロー)  2007年5月21日

渤海湾周辺の国家級経済技術開発区(○印)及び国家級ハイテク技術産業開発区(+印)

 中国最大規模の沿岸部経済開発が天津・浜海で始まった。改革開放政策により、1980年代にはシンセン特区を中心とした珠江デルタが、1990年代には上海・浦東新区を中心とした揚子江デルタが飛躍的に発展したが、今後、中国政府は天津の浜海地区を中心とした環渤海湾地域の発展を強化する。昨年3月に発表された第11次五ヵ年計画(2006-2010年)にも「天津浜海新区の発展を推進する」と明示された。

外資系/ハイテク企業を核とした地域の発展

 1978年の鄧小平の改革開放路線開始に伴い、1980年にはシンセン、珠海、汕頭、アモイが経済特区に、1984年には大連、天津、煙台、青島を含む沿海の14港湾都市が経済技術開発区に指定され、国家級の経済技術開発区は現在中国全土47ヶ所にまで拡大している(注1)。これら指定地域では特に外資系企業への優遇制度が充実している。後に、中国政府は1988年には知的資源が集約している地区をハイテク技術産業開発区として指定したタイマツ計画を開始し、全国53ヶ所を対象地域として選定するなど、地域におけるイノベーション振興を狙った政策が打ち出されている。

(注1)後に海南島も経済特区に追加指定された。また、47の経済技術開発区に加え、実質的に国家級経済技術開発区の政策が適用されている開発区が5ヵ所ある。また、これら国家レベルの開発区に加え、地方自治体レベルの開発区が多数ある。

天津経済技術開発区の概要

天津経済技術開発区の産業構造

 2005年の天津経済技術開発区の域内総生産は642.29億元(約1兆円弱)であり、前年比25.2%増と飛躍的な成長を遂げている。同開発区内の基幹産業は電子情報及び自動車をはじめとした機械工業である(右のグラフ参照)。

 同開発区内における企業の投資金額や輸出総額に基づき定められた「ベスト企業」(下表)としては、電子産業ではモトローラ、サムスン等が、自動車産業ではトヨタ、本田等が挙げられている。トヨタは、サプライヤーであるデンソーやアイシン精機と共に進出しており、一大拠点を形成しているといえる。2006年時点での日系企業の進出は384社、投資総額は33億USドルにのぼる。

表:天津経済技術開発区2005年度ベスト企業10社

 インフラ面では、約150km離れた首都北京とを結ぶ交通の整備が強化されている。北京オリンピック前の2008年6月の開通を目指して北京-天津間の高速鉄道の建設が進められている。北京-天津間の高速道路は現在1本のみだが、2008年に2本目の高速道路が開通の予定となっている。今後、北京の海の玄関口としての天津の役割が重要となる。
また、経済技術開発区では保税区と一体化した港湾等のインフラ整備・拡充も進められている。天津港は2010年までに年間貨物取扱量3億トン、コンテナ取扱量1000万個を見込んでいる。ちなみに、東京湾における港湾貨物取扱量が5.65億トン(注2)、コンテナ取扱量が604万個(注3)であることと比較すると、天津港の規模の大きさが良くわかる。天津浜海国際空港は昨年8月に拡張工事が着工し、6万m2のターミナル等が建設されている。

 (注2)2004年における千葉港、横浜港、川崎港、東京港、木更津港、横須賀港の港湾貨物取扱量の総計。
(注3)2004年における千葉港、横浜港、川崎港、東京港、木更津港、横須賀港の外貿コンテナ貨物取扱量の総計。正確には604万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分を示す単位)。

中国最大規模の沿岸部経済開発~天津・浜海新区

 中央政府は天津及び環渤海湾地域の更なる発展を目指し、天津経済技術開発区を含む天津市の海沿いに総面積2270km2に及ぶ浜海新区の開発構想を打ち出した。これは、東京都とほぼ同等の面積に相当するので、その規模の大きさは計り知れない。2006年3月現在の建設済面積は183km2であり、第11次五カ年計画期(2006-2010年)中に上海の浦東新区と同規模にあたる500km2以上の建設を進める予定となっている。これは、日本でいえば横浜市(437km2)よりも広い面積にあたる。

 天津浜海新区に係る最新の話題としては、エアバス社が欧州外初の組み立て工場建設を決定し、その着工式が先週、5月15日に行われたことが挙げられる。

 この浜海新区は天津の市街地からモノレールで40分程走ったところにある。中国情緒豊かな天津市中心部と打って変わって、極めて近代的なつくりの街となっている。

浜海地区の発計画模型

 浜海新区の開発計画では、次の様なゾーニングが施されている。

  • 中心部にハイテク産業園区と先進製造業産業区109km2、 金融ビジネスサービス区38km2
  • 海沿いに海港物流区100km2、臨港産業区102km2
  • 内陸側に臨空産業園区102km2
  • 南方に浜海化学工業区80Km2
  • 北方に海浜リゾート観光区約100km2
浜海新区のゾーニング(計画)

 なお、中国科学技術部関係者は、今後天津・浜海地域にてバイオ医薬産業の育成に力を入れる方針を打ち出したと述べている。

今後、どのように自主イノベーションへとつなげるか?

 開発区内は外資誘致を奨励する政策を取っていることから、当然の結果として、特にハイテク分野での外資企業の活躍が目立つ。ただし天津には、渤海湾周辺で石油が採掘されていることから化学工業の基盤があり、首都北京の海の窓口ともいえる地理的優位性もある。

 今後中国が「自主イノベーション」を目指す中、環渤海湾地域の発展の牽引役として、どのように当地域の開発を進め、自主イノベーション成果をどのように浸透させていくのか、注目していきたい。

主要参考文献:

  1. 天津経済技術開発区2005発展報告
  2. 天津経済技術開発区提供資料
  3. 天津経済技術開発区インタビュー結果
  4. 天津経済技術開発区ホームページ
  5. 財団法人自治会国際化協会「中国の企業誘致政策」
  6. 中国科学技術部タイマツ計画ホームページ
  7. 中華人民共和国国民経済発展第十一次五ヵ年規画綱要
  8. 国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所ホームページ
  9. 国土地理院ホームページ
  10. JST北京事務所デイリーフラッシュニュース

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