【07-08】中国・地域イノベーション事例-環渤海湾地域の発展(下)~東北地域の海の玄関口・大連~

岡山純子(中国総合研究センター アソシエイトフェロー)  2007年7月20日

前号前々号で紹介した通り、中 国政府は1980年代の珠江デルタ、1990年代の上海・浦 東新区に引き続き、今後は天津浜海新区の開発を強化し、環渤海湾地域の発展を目指す方針を打ち出している。

 今回は渤海湾の北側の入口にあたる大連および東北地域について紹介する。

中国・東北地域の海の玄関口~遼寧省・大連市

大連は中国東北地域(遼寧省、吉林省、黒竜江省)の南端に位置する

 遼寧省(省都:瀋陽)は人口4,221万人、一人当たり域内GDP18,983元(2005年、同年の中国における一人当たりGDPは約1.4万元)、面積14.8万km2(北海道の2倍弱)の省である。m t < /p>

 遼寧省の南端にある大連市は、渤海湾の入口に位置しており、東北地域最大の港湾を抱える副省級 (注)の都市である。大連港の2005 年の貨物取扱量は1.7 億トン、コンテナの貨物取扱量は268.6 万TEU。これは中国で6位の貨物取扱量となる。

 また、政府は陸上交通のインフラ整備にも力を入れている。中国で2番目の高速道路が1990年には大連-瀋陽を結ぶ高速道路が開通し、現在は長春(吉林省)やハルビン(黒竜江省)へ の高速道路も開通している。大連は中国の東北地域の海の玄関口ともいえる。

(注)中国には省・直轄市に次ぐ副省級の都市(瀋陽、長春、ハルピン等、10箇所の副省級省会城市と大連、青島等、5箇所の計画単列市)が計15箇所ある。

東北地域振興政策と大連

 中国東北地域は、石油、鉄鉱石をはじめとする資源に恵まれ、重工業の産業基盤もある。ただし、同地域は旧来型の重厚長大な国有企業が多く、市 場経済化への対応が遅れている等の影響から失業問題等が深刻化している。このような状況を打破すべく、2003年に国務院は東北旧工業拠点の振興方針を発表し、外 資導入により市場メカニズムに適応した企業改革を行う等の政策を打ち出した。

 中国有数の港湾を抱える大連は、2003年に中国初の「ソフトウェア産業国際化モデル都市」に選定されるなど、ソフトウェア産業が強いという特色をあわせ持つ。大連市はこのような地域性を生かして、東 北地域振興政策の一環として、「1つのセンター、4つの基地」と称し、大連を「北東アジアの重要な国際海運センター」及び造船基地、石油化工基地、工作機械製造基地、電 子情報産業基地として発展させる方針が取られることとなった。

日本との交流が深く、日本語のできる技術者が多い土地柄

 大連をはじめ、中国東北地域には日本企業が多い。大連市の外資系企業は11,129社にのぼり、内、日系企業は3000社以上と最も多い(2005年)。遼寧省の貿易高を見ると、輸出・輸 入ともに日本が圧倒的に多いことがわかる。

遼寧省の国・地域別貿易高(輸出)トップ5
遼寧省の国・地域別貿易高(輸入)トップ5

 この背景には、前号の 「 世界最大の日本語学校~北の港町大連で育つ日本語人材~」で紹介している通り、大連をはじめとする中国東北地域は日本語を話せる人材が多いこと等が挙げられる。

 中国の重点大学の一つである大連理工大学は日本語を話せる技術系人材を多く輩出しており、日本からの留学帰国生が副学長や国際交流に係る大学の重要ポストに就いている。欧 米からの留学帰国生が主要ポストに就くことの多い中国の大学において、このようなトップレベル大学の存在は日本にとって極めて貴重といえる。昨年、 同大学の学長が当センターを訪問し、c c 日 本との科学技術交流の重要性について述べるなど、日本との連携に極めて積極的である。

 一方、民間レベルでも息の長い日中R&D連携への取組みが見られる。例えば、遼寧省の省都・瀋陽に本社を置く中国の大手ソフトウェア企業Neusoft(東軟集団)社は、日 本のカーナビメーカであるALPINEと1989年に組込式ソフトウェアの共同開発を開始。1991年に合弁会社を設立し、2 004年にはNeusoft-ALPINE自動車電子共同研究開発センターおよびNeusoft-ALPINE自動車電子先端技術研究所が設立されるなど、研究開発面でも長期に亘る関係を構築している。同 社は大連ソフトウェアパーク内等に、東軟情報学院を設立し、IT人材の育成にも力を入れている。

 中国の地方都市では、地域の優秀な人材が北京や上海へと流出してしまうことが課題となっている場合が多いが、国連環境計画局の「グローバルベスト500」都 市に選ばれるほどの良好な都市環境のおかげもあってか、大連に留まるケースが多い。これも大連に進出する日本企業にとっては大きな魅力の一つといえる。

国連環境計画局の「グローバルベスト500」都市に選ばれた大連の町並み

渤海湾の発展は日本・東アジアの発展にとって重要

大連の海岸線から臨む渤海湾

 環渤海湾地域は、今回のシリーズで紹介した天津、威海、大連をはじめ優れた港湾都市を核に発展が進むだろう。

 更に、天津は首都北京、威海は山東省、大連は東北三省とそれぞれの港が広大な後背地を抱えており、計り知れないポテンシャルを持っている。日本と長期に亘り深い交流を続けている東北地域、多 くの韓国企業が進出している山東省、中国の首都北京と日中韓で関係の深い渤海湾地域の発展は、今後の日本及び東アジアの発展にとって極めて重要であることは間違いない。

 

主要参考文献:

  1. 財団法人国際貿易投資研究所(ITI)「中国東北地域の再開発に向けての課題に関する調査」2004年度調査
  2. 中国国家統計局「中国統計年鑑2006」
  3. 北京週報「飛躍的に発展する中国の高速道路網」
  4. 人民中国「 東北経済の振興は何を意味するか」
  5. 大連ソフトウェアパークHP
  6. JETRO大連事務所「大連市概況」2006年9月
  7. JETRO大連事務所「遼寧省概況」2006年5月

さくらサイエンスプランウェブサイト

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