中国レポート
トップ  > コラム&リポート 中国レポート >  【07-17】伝統中医学と西洋医学の相互補完で進展、2006年の中医学の総括と国際協力の展望を報告

【07-17】伝統中医学と西洋医学の相互補完で進展、2006年の中医学の総括と国際協力の展望を報告

2007年11月20日

杜 艶艶

杜 艶艶:
肩書き

略歴

83年瀋陽農業大学農学部卒業。
現在、中国科学技術情報研究所戦略研究センター副研究員。
2000年から主に中医薬領域のナショナル・ソフト・サイエンスの研究に従事、主要責任者または参加者として、10余の中医薬の科学技術政策に関するソフト・サイエンスの課題を完成した。
完成した研究課題には「漢方薬産業国際化発展戦略研究」「中医学の戦略的地位の研究」「漢方薬用絶滅に瀕する野生生物の保護戦略研究」「中医薬基礎理論の 構築及び農村初級衛生保健体系に対する科学技術のサポートに関する研究」「中医薬の科学研究教育体系の構築と発展促進研究」「中医薬発展戦略研究」「中医 薬保護関連法律体系の構築に関する研究」などがある。
その他、《中医戦略》の編纂に参加、中医薬関係論文を20余編発表した。

 2006年、中国の中医薬(中国伝統の医学・薬学)科学技術者は国と部門の科学技術計画を実施する過程で、一連の優秀な科学技術成果を収めた。その中で6 件の国家科学技術進歩2等賞を獲得し、3 ,634編の科学技術論文を発表し、158点の科学技術著作を出版し、24件の特許権を付与された。 

本文の統計データはいずれも国家科学技術成果データベースと国家中医薬管理局が公表したデータを基礎としたものである。

image

1.中医薬科学技術成果の基本的状況

 2006年、国家科学技術成果データベースに登録された中医薬科学技術成果は計511件で、その内訳は中国伝統医学の科学技術成果が256件、中国伝統薬学の科学技術成果が255件となる。& #160;

科学技術成果の類別:中医(中国伝統医学)は基礎理論類の研究成果が10件で、登録成果総数の4%を占め、応用技術類の研究成果が246件で、登録成果 総数の96%を占める。中薬(中国伝統の薬物)p i i は基礎理論類の研究成果が72件で、登録成果総数の28%を占め、応用技術類の研究成果が183件で、登録 成果総数の72%を占める。 

科学技術成果の分布:2006年に各一級行政区で登録された中国伝統薬学と中国伝統医学の科学技術成果の件数を表1と表2に示す。中 国伝統薬学と中国伝統医学の科学技術成果が最も多い一級行政区は河北省であり、それぞれ42件、56件となる。

表1

表1 2006年に各一級行政区で登録された中国伝統薬学の科学技術成果統計表

表2 2006年に各一級行政区で登録された中国伝統医学の科学技術成果統計表

2.中医薬の科学成果普及状況

  2006年の中医薬科学成果普及プロジェクトは計114件で、そのうち2005年度の国家中医薬科学技術成果普及プロジェクトが7件あり、これには「孫氏 の頸椎症シリーズ治療案」、「 腹針療法による骨関節症の治療」等が含まれる。国家中医薬管理局の第1次中医臨床適合技術普及プロジェクトは88件(農村適 合技術35件、都市コミュニティー適合技術38件、特定医療条件の適合技術15件)、第 2次中医臨床適合技術普及プロジェクトは19件である。

3.中医薬の重大科学技術計画

 2006年度の国家科学技術サポート計画における重大プロジェクト「重い難病に対する中医予防・治療研究」の課題は21件で、「冠状動脈性心疾患で血行が 回復した後の中医総合関与の臨床研究」、「 糖尿病及びその主な慢性合併症の中医薬予防・治療総合案の研究」等を含む。 

 2006年度の国家科学技術サポート計画における重点プロジェクト「中医による『未病治療』及び半健康状態に対する中医関与の研究」の課題は7件であ る。こ れには不眠症に対する中医薬治療効果の評価方法の研究、中医の保健マッサージによる疼痛性の半健康状態の治療等が含まれる。 

 2006年度の国家科学技術サポート計画における重点プロジェクト「針灸診療案と評価研究」の課題は7件である。これには針灸が適している病症の研究、脳 卒中後遺症に対する針治療の最適化案及び治療効果に影響する共通性技術の臨床評価等が含まれる。 

 2006年度の973計画における中医理論基礎研究特別プロジェクトは4件であり、中医弁証論治による治療効果の評価方法と基礎理論研究等を含む。

4.中医薬科学技術国際協力計画

 中医薬の近代化と国際化のプロセスを推し進めるため、科学技術部は「国家中長期科学技術発展計画(2006〜2020)」を基礎に「中医薬国際科 学技術協力計画要綱」を策定した。こ の計画は中国政府が初めて提唱・策定した国際的なビッグサイエンス事業研究計画であり、世界的規模の中医薬国際科学技 術協力ネットワークを構築し、その国際科学技術協力の深まりを促し、全 人類に中医薬の文明を共有させることを目指す。

image

 「中医薬国際科学技術協力計画要綱」の中で示された計画の全体目標は次の通り。

  1. 国際協力を通じ、中医薬科学の内在的要素に対する認識を深め、中医薬理論を豊かにし発展させ、中医薬科学の発展を促す。
  2. 中医薬等の伝統的な医療・薬品が人類の衛生と健康に役立つようにその実力を高め、産業を発展させ、中医薬が医療・薬品・保健分野の主要な国際市場に進出するのを促し、人 類の衛生と健康を守るのに必要な社会的・経済的コストを効果的に引き下げる。
  3. 中国と西洋の医学・薬学体系の相互補完を促し、新たな医療・保健モデルとサービス体系を確立する。
  4. 東西文化の融合を促し、現代のヒューマニズム思想と中国の伝統文化の内在的要素を有する医療・リハビリ・保健の理念が国際社会に理解され受け入れられるようにし、中医薬を全人類の衛生・保 健事業に役立てる。

 中医薬国際科学技術協力計画は主に6つの優先分野と重点内容を含む。1つ目は中医薬による重い難病の予防・治療、及び予防と養生による健康維持の臨床研究 を進めることである。2 つ目は国際市場の需要にマッチする近代的な中薬製品を研究し、その開発を促進することである。3つ目は中医薬の国際的な基準と規範 の研究に力を入れることである。4 つ目は中医薬の国際科学技術協力プラットフォームを構築することである。5つ目は中医薬の知識を広めることである。6つ 目は国際科学技術協力の人材を養成することである。

 今年、科学技術部は1億元(約16億円)の資金を投入し、外国と連携し、同計画の第1弾として50件の中医薬国際科学技術協力プロジェクトをスタートさせ る予定である。こ れらのプロジェクトは重い病気を治療する薬品の研究開発を重点としており、マラリア治療用のアルテミシニン・シリーズ薬品、麻薬中毒治療 用の中薬、腫瘍治療用の中薬、エイズ予防・治 療用の中薬の研究開発等を含む。

参考文献:

[1]国家中医薬管理局ウェブサイト 

[2]国家科学技術成果データベース 

[3]中医薬国際科学技術協力計画要綱