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【12-018】会社法でいう「会社」とは

尹 秀鍾(中国律師〈弁護士〉)  2012年12月 7日

Ⅰ 会社の概念

 会社は中国語で「公司」といい、会社法は中国語で「公司法」という。中国法でいう会社とは何か。会社の概念を検討する前に、まず会社法の概念を見てみよう。

 会社法とは、会社の設立、組織、運営、管理およびその他の対内・対外法律関係を調整する法律規範の総称である[1]。いわゆる対内的法律関係とは、会社とその株主、または株主相互間の権利義務関係を指し、対外的法律関係とは、会社と第三者、または株主と第三者間の権利義務関係をいう。

会社法は、会社の概念について、「会社とは、会社法により中国国内に設立される有限責任会社および株式会社を指す」と定義している(会第2条[2])。しかし、これは実質的に会社の形態に関する規定である。

新会社法第2条および第3条の規定に基づき、会社の定義を下すと、会社とは、株主[3]が会社法により中国国内に設立し、株主がその引き受けた出資額またはその引き受けた株式を限度として会社に対して責任を負い、会社はそのすべての財産をもって会社の債務について責任を負う企業法人である。

なお、会社の定義を「法により設立された、営利を目的とし、かつ法により社会的責任を負う法人」とし、2005年会社法改正により導入された「会社の社会的責任」を強調する学説[4]もある。

Ⅱ 会社の特徴

1 法人性

 企業は法人格のある企業と法人格のない企業に分けられる。会社は前者の法人格のある企業に該当する。そもそも、「企業法人[5]」という法律用語は、1986年4月12日に公布された「民法通則」で初めて取り上げられた概念である。

民法通則によれば、法人は民事権利能力と民事行為能力を有し、法に基づき独立して民事権利を有し、民事義務を負う組織である(第36条第1項)。また、法人は以下の条件を具備しなければならないとされる。(一)法に基づき成立し、(二)必要な財産または経費を有し、(三)自己の名称、組織機構および場所を有し、(四)独立して民事責任を負わなければならない(同第37条)。以下、かかる法人の条件に従って、会社の有する法人性を検討する。

(1)法により設立されること

 上述したように、会社とは、会社法により中国国内に設立される有限責任会社および株式会社である(会第2条)。これを「会社の法定性」とし、会社の特徴の一つに挙げる学説[6]もある。かかる学説によれば、会社の法定性とは、会社が法定の条件および手続により設立されることをいう。すなわち、会社法によらずに設立された会社、または中国国外に設立された会社は中国会社法でいう会社ではないため、会社法の保護を受けることはできない。

(2)自己の財産を有すること

 会社は独立の法人財産を有し、法人財産権を有する(会第3条第1項)。これは会社が経営活動に従事する物質的な基礎であり、その義務と責任を負うための物質的な保証でもある。会社法は会社の財産に関し、最低資本金制度を定めている。

 1993年会社法第4条第3項は、「会社における国有資産の所有権は国家に属する。」と、明確に所有権主体としての国家を明記していたが、2005年の会社法改正により当該条文は削除され、「国家を含む株主は会社に財産を投入した後、当該財産に対する所有権を喪失する代わりに株主権を取得し、会社は株主の投資により形成された財産の所有権を有する」という法人所有権説が実質的に受け入れられるようになった。

(3)自己の名称、組織機構および住所を有すること

 会社の名称は、会社の登記事項の一つで(会社登記管理条例第9条)、会社の名称は国家の関連規定[7]に合致しなければならず、会社登記機関の審査確認を経て登記した会社の名称は法律の保護を受ける(会社登記管理条例第11条)。会社の名称は、一般に、行政区画、商号、業種および組織形式から構成され、また、会社の名称に有限責任会社あるいは有限会社または株式有限会社あるいは株式会社の文字を明示しなければならない(会第8条)。

 会社は、会社法の規定により権力機関、業務執行機関および監督機関などの組織機構を設置しなければならない。会社に効率的なコーポレート・ガバナンスを構築する意味で、会社の組織機構に関する法定要求は、国有企業などの従来の企業形態に比べてより厳密であると評価される。会社の組織機構についての詳しい検討は、別の機会に譲ることとする。

 なお、会社は自己の住所を有しなければならず、住所も会社の登記事項の一つである(会社登記管理条例第9条)。会社法によれば、会社は、その主たる事務機構の所在地を住所とする(会第10条)。

(4)独立して法律責任を負うこと

 会社は自己の名義により経営活動に従事し、権利義務の主体として、独立して権利を有し、かつ相応の義務および責任を負う。これは、会社が、出資義務を果たした株主(株主の有限責任原則。但し、会社の法人格が否認された場合はこの限りでない。)や、その従業員等および子会社等の関連会社に自己の負っている債務を弁済させることはできないことを意味する。

2 営利性

 1993年会社法は、「会社はそのすべての法人財産を以って、法に基づき、自主的に経営し、自ら利益を享受し、損失を負担する。」と定め(旧会第5条第1項)、独立採算制を採ることを明言しており、独立採算制の前提として営利目的の存在を肯定しているといえる。

もちろん、社会主義市場経済を掲げる中国経済の特殊性を考えると、その意味内容に手が加えられているのは当然であって、1993年会社法第5条第2項は、「会社は、国のマクロコントロールの下で、市場の需要に基づき生産経営に自主的に取り組み、経済効率や労働生産性の向上および資産価値の保全、増大を実現させることを目的とする。」と定めていた。

 新会社法は上記の条文を削除したものの、これにより会社の有する営利性の特徴が消失したわけではなく、会社はその存続期間に、登記された経営範囲内において経営活動を行うことができ、かかる経営活動の目的は利益の獲得であり、かつ利益を株主に分配することである(会第38条、167条など)。また、新会社法第75条は、会社が5年連続で株主に対し利益分配を行わず、その連続5年間において会社に利益があり、かつ会社法に定める利益分配条件を満たしている場合、(少数)株主の持分買取請求権を定めている。従って、会社の有する営利性の特徴は明らかである。

 注目に値することは、2005年会社法改正ではじめて会社の経営活動における社会的責任を明記したことである。すなわち、会社が経営活動を行うにあたって、法律と行政法規を遵守し、社会の公衆道徳と商業道徳を遵守し、誠実に信用を守り、政府および社会の一般大衆の監督を受け入れ、社会的責任を負わなければならないと定められた(会5条)。

 会社が社会的責任を負うということは、取締役会において会社の経営計画および投資案を決定する際、または高級管理職が会社の経営管理に携わるとき、会社の営利目的の実現だけに力点を置くのではなく、営利目的の実現と同時に、会社経営によってもたされる社会的効果およびその社会的効果によって生じる責任について、誠意を持って対処し、相応の責任を負わなければならないことを意味する。

 会社法における「会社の社会的責任」の明記について、学界からも、経済界からもほとんど異論はないようであるが、会社が具体的にどのような社会的責任を負うべきかは、必ずしも明白ではないのが実状である。

 会社の社会的責任を論じる際、一般的に「利害関係者」という用語を借用して説明することが多い。会社の利害関係者の範疇には、一般に、株主のほか、従業員(会第17条)、債権者(会第20条)、消費者、取引先、地域社会、環境など、会社と何らかの利害関係を有する主体が含まれると解される。中国では最近、企業の社会的責任論として、とくに従業員や消費者の権利保護、環境保護の問題などを中心に議論が活発になってきている。

3 社団性

 会社法は、一定の目的のもとに結合した人の集合体、すなわち団体としての概念、「社団(または社員、社員総会等)」という用語は全く使っていない。

 1993年会社法によれば、有限責任会社は2名以上50名以下の株主の共同出資により設立される(旧会第20条1項)。また、国から権限を付与された投資機構または国から権限を付与された部門は、単独出資により、国有独資の有限責任会社を設立することができる(同2項)。株式会社の設立には、5名以上の発起人を要し、その中の過半数は、中国国内に住所を有しなければならないが、国有企業が株式会社に改組される場合、発起人は五人を下回ってもよい。但し、募集設立を採用しなければならない(旧会第75条)。

 1993年会社法が「社団」あるいは複数人の結合を意味する用語を会社の概念用語として使っていないのは、有限責任会社の亜種として、国策に基づいて国家単独出資による国有独資会社、すなわち一人会社の設立が認められていることが一因と思われる。国有独資会社を除くと、1993年会社法は自然人および法人による一人会社の設立を一切認めていない。しかし、「外資企業法」に基づく外商の単独出資は認められる。

 新会社法は、一人有限責任会社を新たに導入したことから、有限責任会社の設立につき、最小人数要件を削除し、50名以下の株主が出資して設立すればよいと規定し(会第24条)、株式会社の設立については、2名以上200名以下の発起人を要し、そのうち半数以上の発起人は中国国内に住所を有していなければならないと規定し(会第79条)、上記のような国有企業に関する優遇措置は削除している。

 会社法が「社団」の概念を用いていないもう一つの要因としては、民法通則が、自然人を除く民事主体の分類に関し、公法人や私法人、または社団法人や財団法人の概念を用いず、法人について、企業法人と非企業法人(機関、事業単位および社会団体法人[8])に分類していることと関連性があるように考えられる。

 なお、会社法に「社団性」に関する明文の規定がないことや、会社法上の一人会社に関する規定を根拠に、会社の有する社団性を否定する主張は見られない。

Ⅲ 会社の種類

1 有限責任会社と株式会社

 上述したように、会社法は、会社の形態を有限責任会社と株式会社の二種類に分類している。一般的に、有限責任会社は中小企業に適合した会社形態で、株式会社は主に大企業が採用する会社形態であるとされる。会社法でいう一人会社や国有独資会社は有限責任会社の範疇に属し、上場会社は株式会社の範疇に属する。

 会社形態の変更、すなわち有限責任会社を株式会社に、あるいは株式会社を有限責任会社に変更する場合は、会社法に定める株式会社および有限責任会社の条件を満たさなければならない(会第9条1項)。会社形態の変更後、会社の変更前の債権および債務は変更後の会社が承継する(会第9条2項)。

 会社法は、合名会社(無限公司)や合資会社(両合公司)について規定を設けていない。しかし、パートナーシップ(合夥)企業法は、一般パートナーシップ企業と有限パートナーシップ企業について定め、前者におけるパートナー(一般パートナーのみから構成される)はパートナーシップ企業の債務に対して無限連帯責任を負い、後者における一般パートナーはパートナーシップ企業の債務に対し無限連帯責任を負い、有限パートナーはその引き受けた出資額を限度としてパートナーシップ企業の債務に対して責任を負うとされる(パートナーシップ企業法第2条)。このうち、一般パートナーシップ企業は実質的に合名会社と同じ企業形態であり、有限パートナーシップ企業は実質的に合資会社と同じ企業形態である。但し、中国法において、パートナーシップ企業は法人格を有しない。

2 本社(本公司)と支社(分公司)

 本社とは、法に基づき設立され、傘下企業の経営、資金調達、人事配属などについて管轄し、指揮を執る会社のことをいう。「企業名称登記管理規定」の規定により、3個以上の支社を有する企業は、その名称で「総(公司)」という字を用いることが許される(同管理規定第14条)。

 支社とは本社によって設立され、直接業務活動に従事する支店(分支機構)のことをいう。支社は法人格を有せず、その民事責任は本社が負う(会第14条1項)。支社は自己の名義で契約を締結することができ、訴訟に参加することもできるなど、民事主体となる地位を有するが、独立して民事責任を負う能力はない。

3 親会社(母公司)と子会社(子公司)

 親会社とは、一定比率の持分(株式)保有または協議書を締結する方法により、直接または間接的にある会社を支配することができる会社のことをいう。親会社となる持株比率は一般的に50%以上とされるが、株式の分散などによって、持株比率50%未満であっても、その出資額または保有株式により有する議決権が株主会または株主総会の決議に重大な影響を与えるのに十分な株主は支配株主と看做される(会第217条第2号)。

 子会社とは、親会社の支配下にあるが、法人格を有し、法により独立して民事責任を負う会社を指す(会第14条2項)。子会社が親会社によってその全ての持分(株式)を保有される場合、完全子会社となる。

 なお、子会社に対する親会社の支配が過度なものと認定される場合、法人格否認の法理により、親会社が子会社の債務についても法律上の責任を負わされる可能性がある。

4 本国会社と外国会社

 会社の国籍を基準に、会社を本国会社と外国会社に分けることができる。中国会社とは、中国会社法に基づいて中国国内に設立された会社をいう。中国に設立した中外合弁経営企業や、外商独資企業は中国会社に属する。

 外国会社とは、外国の法律により中国国外で設立された会社のことをいう(会第192条)。外国会社が中国会社法の規定に基づいて中国国内に設立した支社等を、外国会社の「分支機構」というが、外国会社の分支機構は法人格を有せず、外国会社はその分支機構が中国国内で行う経営活動について民事責任を負わなければならない(会第196条)。

5 その他の会社の分類方法

(1)株主の国籍を基準に、会社を内資会社と外商投資会社[9]に分類することがある。

(2)株主の出自を基準に、国有会社(または公営会社)と非国有会社(または民営会社)に分類することがある。

(3)株主数の多寡および持分(株式)の流通性を基準に、会社を開放型会社と閉鎖型会社に分類することがある。上場会社をはじめとする株式会社が概ね前者に該当し、有限責任会社が概ね後者に該当する。

 

(4)株式が証券取引所に上場し、流通しているか否かを基準に、会社を上場会社と非上場会社に分類することがある。

[キーワード:法人性 営利性 社団性 有限責任会社 株式会社 本国会社 外国会社]


[1] 会社法の概念については、王保樹・崔勤之『中国公司法原理(最新修訂第三版)』(社会科学文献出版社、2006年)3頁、範健・王建文『公司法』(法律出版社、2007年)56頁を参照した。

[2] 本稿および今後順次発表する会社法に関する原稿では、2005年会社法改正前の会社法を「旧会社法」または「1993年会社法」といい、同改正後の会社法を「新会社法」という。なお、会社法条文の引用は、旧会社法の場合「旧会」、新会社法の場合「会」と、それぞれ略称する。

[3] 中国会社法は、有限責任会社と株式会社の出資者の両方とも「株主(股東)」といい、その会議体をそれぞれ「株主会(股東会)」、「株主総会(股東大会)」という。

[4] 劉俊海『公司法学』(北京大学出版社、2008年)1頁。

[5] 民法通則でいう法人には、企業法人のほか、機関、事業単位および社会団体である法人も含まれる(第50条以下)。なお、民法通則における企業法人は、全人民所有制企業、集団所有制企業および外資系の三資企業を想定していた(第41条)。

[6] 範健・王建文『公司法』(法律出版社、2007年)29頁参照。

[7] 「企業名称登記管理実施弁法」など。

[8] 機関法人とは、法律および行政命令により組織され、公権力を有し、国家管理活動に従事することを主とする各級国家機関のことをいう。事業単位法人とは、新聞、出版、放送、教育などの非営利性の社会各種公益事業に従事する法人のことをいう。社会団体法人とは、労働組合、婦女連合会、商工業連合会など、その構成員により組織され、社会公益、文学芸術、学術研究、宗教などの活動に従事する法人のことをいう。なお、民法通則によれば、独立した経費を有する機関は、成立の日から法人格を有し、法人の条件を備えた事業単位または社会団体で、法により法人登記を必要としないものは、成立の日から法人格を有し、法により法人登記を必要とするものは、審査確認の上、登記を経た後法人格を取得するとされる(民法通則第50条)。

[9] ここでいう外商投資会社とは法人格を有する外商投資企業のことをいう。法人格を有しない中外合作企業や有限責任の形式を採らない外資企業を除いて、いわゆる「三資企業」に関する外商投資企業は、いずれも出資者が出資額の限度で責任を負う有限責任会社の形態を採る。外商投資株式会社は、会社法上の株式会社に該当する。なお、外商投資パートナーシップ企業は、パートナーシップ企業法に定めるパートナーシップ企業に該当し、法人格を有しない。


PROFILE
尹 秀鍾

尹 秀鍾(Yin Xiuzhong)

1974年生まれ。中国律師(弁護士)。
君合律師事務所(JUN HE LAW OFFICES)所属。慶應義塾大学大学院法学研究科民事法学専攻博士課程修了(法学博士)。慶應義塾大学法学部非常勤講師(中国法、2010-12年)。
主要著作に、『中国ビジネスのための法律入門』(共著、中央経済社、2012年7月)、「中国型コーポレート・ガバナンスと独立取締役制度」(山本為三郎編『企業法の法理』慶應義塾大学出版会、2012年3月)、「中国会社法2005年大改正の前と後」(JCAジャーナル56巻7号、日本商事仲裁協会、2009年7月)などがある。
 


【付記】 論考の中で表明された意見等は執筆者の個人的見解であり、科学技術振興機構及び執筆者が所属する団体の見解ではありません。


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