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【13-006】中国の大学・研究機関等の知財問題及び中国著作権法に関する最新法律事情(第1回)中国特許法の概要

2013年 5月 9日

遠藤 誠

遠藤 誠(Makoto Endo):BLJ法律事務所 弁護士/博士(法学)

2003年から森・濱田松本法律事務所で10年以上にわたり中国知財関連業務を取り扱ってきた。その後、同事務所から独立して、2013年4月に「BLJ法律事務所」を開設(http://bizlawjapan.com/)。『中国ビジネス法務がよ~くわかる本(第2版)』(秀和システム)、『中国特許法逐条解説』(日本機械輸出組合)等、中国知財に関わる書籍・論文の執筆のほか、セミナー・講演も多数行っている。

序 連載開始にあたって

 今回から、「中国の大学・研究機関等の知財問題及び中国著作権法に関する最新法律事情」と題して、連載形式により、易しく解説していきたいと思います。

 最初の数回は、中国の知的財産法の概要等について紹介し、その後、具体的な法律問題やトピックス等を取り上げていく予定です。

Ⅰ 「特許法」とは

 中国でも日本でも、「知的財産法」という名の法律があるわけではありません。「知的財産法」とは、特許法、商標法、著作権法及び不正競争防止法等の総称です。

 中国は、WTO加盟のために、2000年以降、知的財産権(中国語では「知識産権」)に関する法律を大幅に改正し、WTO加盟のための条件を整えてきました。その結果、中国においても、基本的な知的財産法制度は整えられているといえるようになりました。とはいえ、中国の知的財産法は、解釈上不明確な点が多いのも事実です。

 中国の知的財産権に関する法律のうち、最も重要なものの1つに、「特許法」(中国語では「専利法」)があります。そこで、まず第1回では、知的財産法の最も代表的なものである「特許法」について解説いたします。

Ⅱ 特許法及びその関連法令

 中国の「特許法」は、1985年に施行され、2000年には、WTO加盟のための条件を整えるために大きな改正を受けました。さらに、その後の実務運用をふまえ、2008年にも改正されました。

 「特許法実施細則」は、特許法に付帯する最も重要な法規であり、特許法にあわせて2001年及び2010年に改正されました。

 このほか、特許行政を担当する「国家知識産権局」が、「特許行政法律執行規則」や「審査指南」等を制定・公布しています。また、最高人民法院は、「特許紛争案件の審理における法律適用問題に関する若干の規定」等、いくつかの司法解釈を制定・公布しました。中国は、「工業所有権保護に関するパリ条約」及び「特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)」等の国際条約にも加入しています。

Ⅲ 特許権の客体・出願・審査

 特許権の客体には、①発明、②実用新案(中国語では「実用新型」)及び③意匠(中国語では「外観設計」)の3種類があり、これらをあわせて「発明創造」といいます(特許法2条)。

 特許を受ける発明及び実用新案は、新規性、進歩性及び実用性を備えていることが必要とされています(特許法22条)。特許を受ける意匠は、新規性を備えていることが必要とされ、かつ他人が先に取得した適法な権利と抵触してはなりません(特許法23条)。

 発明特許を受けるには、出願、国家知識産権局による予備審査と公開、実体審査、発明特許証交付及び登録・公告の手続を経る必要があり、発明特許権は公告の日から効力を生じます(特許法34条~39条)。発明特許権の存続期間は20年とされ、出願の日から起算します(特許法42条)。実用新案特許権及び意匠特許権は、予備審査と特許証交付及び登録・公告の手続を経ればよく、実体審査はありません。実用新案特許権及び意匠特許権の存続期間は10年とされ、出願の日から起算します(特許法42条)。

 中国は、「工業所有権の保護に関するパリ条約」及び「特許協力条約」に加盟しています。「工業所有権の保護に関するパリ条約」は、同盟に加盟する一国にした最初の出願に基づき、それと同じ内容の出願を同盟の他の国にする場合、一定期間内に優先権を主張すれば、先後願の関係及び新規性の判断をする時点が第一国出願の日時とされる優先権制度を定めています。「特許協力条約」は、1つの方式で、1つの言語で作成した、1つの出願を1ヵ所ですることにより、同一の出願日(国際出願日)に、条約加盟国のうち出願人が指定した国の権利付与官庁に出願したのと同じ効果が生じる制度を定めています。

Ⅳ 職務発明創造

 職務発明創造とは、①所属団体の任務を遂行し 、又は②主として所属団体の物質的、技術的条件を利用して完成された発明創造をいいます(特許法6条1項前段)。

 職務発明の特許出願権は所属団体(原文では「単位」)に帰属し、出願が認可された後は、当然に当該団体が特許権者となります(特許法6条1項後段)。日本の特許法35条の下では、従業者等がした職務発明を使用者等が承継することができるという構成となっているのに対し、中国特許法では所属団体に原始的に帰属する点で異なっています。

 職務発明創造者に対する奨励と報酬については、中国特許法16条に原則的な規定があります。すなわち、第一に、特許権を付与された団体は、職務発明創造の発明者又は考案者に「奨励」を与えなければなりません(同条前段)。第二に、発明創造特許の実施後は、その普及と応用の範囲及びその経済的効果と収益に応じて、発明者又は考案者に合理的な「報酬」を与えなければなりません(同条後段)。

Ⅴ 特許権の保護

 発明及び実用新案が特許を受けた後は、いかなる単位又は個人も、特許権者の許諾を得ずに当該特許を実施することができません(特許法11条1項)。すなわち、生産及び営業を目的とした、その特許製品の製造・使用・販売申出・販売・輸入、その特許方法の使用、当該特許方法により直接得られた製品の使用・販売申出・販売・輸入は認められません。意匠の特許については、特許権者の許諾を得ずに、生産及び営業を目的として、その意匠特許製品を製造・販売・輸入してはなりません(特許法11条2項)。

 発明特許権又は実用新案特許権の保護範囲については、その権利請求(これを「クレーム」といいます)の内容が基準となります(特許法59条1項)。意匠特許権の保護範囲については、図面又は写真に示された当該意匠の特許製品が基準となります(特許法59条2項)。

Ⅵ 「均等論」による特許権保護

 特許権侵害が成立するためには、特許権者以外の者の行為が、クレームの要件を文言上全て満たす必要があるのが原則です(この場合を「文言侵害」といいます)。しかし、クレームの要件の些細な一部を少しだけ変更して、実質的にはほとんど同じような製品を製造等する行為は、文言侵害にはならなくても、一定の要件の下に、特許権侵害が成立すると解釈すべきであるという考え方(均等論)が、多くの先進国において一般的に認められています。中国においても、一般に均等論が認められています(「特許紛争案件の審理における法律適用問題に関する若干の規定」17条)。即ち、発明又は実用新案の特許権の保護範囲には、クレームの必須の技術的特徴と同等の特徴(基本的に「同一の手段」・「同一の機能」・「同一の効果」を達成し、かつその領域の一般的な技術者が容易に連想することのできる特徴)により確定される範囲も含むとされています。

Ⅶ おわりに

 中国の特許法は、2008年に改正されましたが、その後も新たな改正作業が続けられています。「自主創新政策」を掲げハイテク立国を目指す中国において、どのような特許法が模索されようとしているのか、今後の改正動向が注目されます。


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