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【13-017】中国でのテレビドラマ制作への参入について

2013年 7月31日

柳 陽(Liu Yang):中国弁護士

略歴

現在、長島・大野・常松法律事務所所属。北京大学・慶應義塾大学法学修士。日本企業の対中投資と貿易、M&A(合併と買収)、知的財産、労務等、対中ビジネスに関する法務全般を取り扱う。講演、執筆も多数。 

質問

 当社は、当社出版のベストセラーの小説を原作とし、海外でテレビドラマ化することを考えています。具体的には、中国の映像制作会社と共同出資(出資比率は未定)でテレビドラマを制作し、中国で放送することを想定しています。中国でテレビドラマを制作するにあたり、中国法上どのような規制がありますか。また、共同出資に関して当社が採用すべきスキームを教えてください。なお、当社は、著作物の利用について原作者より許諾を得ています。

回答

 外国企業による中国でのテレビドラマ制作への参入を規制する基本法令として、まずは「中外合作によるテレビドラマ制作の管理規定」(2004年10月21日施行)(以下「管理規定」といいます。)が挙げられます。管理規定その他の関連法令を踏まえ、テレビドラマ制作分野における外資に対する規制を紹介するとともに、各種スキームについて解説します。

1.管轄当局

 中外合作によるテレビドラマの制作・放送については、国家ラジオ映画テレビ総局(中国語では「国家广播电影电视总局」といいます。)及び省レベルのラジオテレビ行政部門(中国語では「广播电视行政部门」といいます。)が管轄当局となります。

2.テレビドラマ制作における外資の出資比率

 管理規定には、外資(外国法人及び外国人を含みます。)の出資比率を制限する規定はありません。

 また、外商投資分野のガイドラインとされている外商投資産業指導目録(2011年版)にも、「制限類、合作に限定」と規定されているものの、外資の出資比率には上限を設けていません。即ち、後述の3で述べるように、(中外合作の方式によらなければなりませんが)外資100%での制作も可能です。

 なお、2004年11月28日より施行された「中外合弁、合作ラジオテレビ番組制作経営企業の管理に関する暫定規定」(以下「暫定規定」といいます。)によれば、外資の出資は49%を超えないとされていましたが、当該規定は2009年2月6日に廃止されたため、外資の出資比率に対する制限はなくなったといえます。

3.外資によるテレビドラマ制作への参入方法

 管理規定によれば、外国側当事者と中国側当事者が共同でテレビドラマを制作する場合、以下のいずれかの方法により行うことが求められています。

(1)聯合制作

 聯合制作とは、中国側当事者と外国側当事者が共同で出資し、主要メンバーを派遣、損益を分担してテレビドラマを制作することを指します。なお、テレビドラマの著作権についても共同所有と規定されています。

(2)協力制作

 協力制作とは、外国側当事者が出資し、主要メンバーを派遣、中国国内で外での撮影の全部又は一部を行い、中国側当事者は労務、設備、機材、場所を提供し協力することを指します。

(3)委託制作

 委託制作とは、外国当事者が出資、中国側当事者に中国国内での制作を委託することを指します。

 前記の方法のいずれも、外資がテレビドラマ制作へ参入する方法ですが、そもそも、こういった単発的なプロジェクト方式ではなく、テレビドラマを制作する中外合弁会社を設立することはできないのでしょうか。この点については、前述のとおり、暫定規定の廃止により、中外合弁テレビドラマ制作企業を設立する法的根拠がなくなったため、実務上、中外合弁・合作ドラマ制作企業を新規で設立することができなくなったと言われております。即ち、テレビドラマ制作分野への外資参入に対する規制がより厳しくなり、中外当事者が共同でテレビドラマを制作する場合には、合弁・合作企業を通してではなく、聯合制作、協力制作、委託制作のいずれかの方法を採らなければならなくなったと考えられます。

4.政府の許認可

 中外合作によるテレビドラマ制作は、管轄当局から許認可を受けなければなりません。また、制作完了後には、テレビドラマの内容について管轄当局の審査の後、許認可を受けなければ、公開又は放送することができません。テレビドラマの内容に対する審査とは、例えば憲法の基本原則に反対し、国家秘密を漏えいし、国家安全・利益を害し、社会道徳に違反するなどの内容があってはならないと規定されています。

 テレビドラマの制作に対する許認可については、国家ラジオ映画テレビ総局が中外合作によるテレビドラマ制作の申請を受領した後、中外聯合制作の場合は50日(専門家による30日の審査期間を含みます。)、中外協力制作及び中外委託制作の場合は20日以内に、制作を許可するか否かを決定しなければなりません。申請人は決定に不服がある場合は、再審査を申し立てることができ、国家ラジオ映画テレビ総局は50日(専門家による30日の審査期間を含みます。)以内に再審査の決定を行うと規定されています。

以上