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【14-002】中国会社法における資本制度の改革(その2)

2014年 1月17日

屠 錦寧

屠 錦寧(Tu Jinning)

 中国律師(中国弁護士)。1978年生まれ。アンダーソン・毛利・友常法律事務所所属。京都大学大学院法学博士。一般企業法務のほか、外国企業の対中直接投資、M&A(企業の合併・買収)、知 的財産、中国国内企業の海外での株式上場など中国業務全般を扱う。中国ビジネスに関する著述・講演も。

その1)よりつづき

3.最低資本金に関する改正

 2005年の会社法上、最低登録資本に関する制限が設けられている。例えば有限責任会社の場合には、最低登録資本は3万元(株主が一人または一社しかいない場合は10万元)とされていた。株 式会社の場合には、最低登録資本は500万元とされていた。また、払込資本について登録資本の20%とは別に、最低登録資本以上の金額を払い込まれて初めて会社の設立が認められる。当該規定の趣旨は、会 社の濫立を防止し、債権者の利益を保護することにある。

 登録資本は、会社法の規制のみならず、他の業界規定でも最低資本金の規制がある。例えば、外商投資ファイナンス・リース会社は1000万米ドルに、電 信企業は業務範囲に応じて100万元~10億元に達していることを求められている [1] 。会社法の規制と業界規制などの最低資本金に関する法令の中で最も高額なものが登録資本の最低額になる。

 今回の法改正では、会社法上の最低資本金の規定を削除した。業種、経営内容を問わずいかなる会社にも適用される登録資本の最低額が撤廃されたが、最低資本金制度を完全に廃止したわけではなく、業界規制、地 域規定などに最低資本金に関する規定があればそれに従うという明文の規定は会社法にある(会社法26条)。

 なお、理論上は、最低資本金がないため登録資本が1元でも会社の設立が可能であるが、実際には、会社の設立において、基本的な資本を支出する必要があり、最低資本金の要件がなくても、株 主は通常最低の費用支出を下回らない金額を会社の登録資本とすることになろう。

4.出資の構成に関する改正

 出資の方法について、会社法では、貨幣、現物、知的財産権、土地使用権の4種類が最も一般的な方法として列挙されるほか、「金銭により評価し法により譲渡することができる」と いう抽象的な基準に適合した財産も評価のうえ出資することが可能である(会社法27条1項)。出資の構成は、各種の出資方法が出資総額に占める比率である。

 2005年会社法では、「全ての株主の貨幣による出資金額は有限会社の登録資本の30%を下回ってはならない」と定めている。すなわち、非貨幣出資の最高割合は登録資本の70%を上回ることができない。 

 出資の構成に関する制限は、会社の正常な経営のために必要な現金の確保にあり、貨幣以外の有形資産や無形資産の価値上の不安定性と換金面での不確実性により、そ の割合が高すぎると会社の債務返済能力が弱まるというところにあるといわれる [2] 。しかし、このような規定は、非貨幣資産を大量に保有しているにもかかわらずキャッシュ・フローが足りない出資者にとって投資する際に資金的な困難をもたらすことになる。そのために、法改正では、貨 幣による出資金額が登録資本に占める割合の最低限を削除し、出資構成に関する制限を完全に廃止した。

むすびにかえて

 今回の法改正は、払込資本に対する行政登記手続の撤廃等によって、会社側の負担軽減を図ろうとしているように思われる。しかし、払込資本そのものが廃止されたわけでなく、前述したように、株 主がその引き受けた資本を定款・株主間契約における約束とおり払い込む義務を有するほか、(別途の定めがない限り)株主が払込資本の比率に従って配当を行い、増資の引受優先権を有する [3] ことから、株主間や株主と会社との関係では依然として重要である。最低資本金規定の削除も、登録資本の金額に関する要件がなくなるという意味ではなく、業種、経営規模、所在地、優 遇の享受等の関係で登録資本が規定上または実質上一定の金額に達していることを求められることもあるため留意する必要がある。また、法改正の外商投資企業に与える影響は不明なところが多い。三資企業法( 外商投資企業の基本法)の見直しの動きがあるなか、改正会社法の施行状況はより一層注目される。

 以上


[1] 「外商投資リース業管理規則」16条、「電信業務経営許可管理規則」(2009年3月1日公布、2009年4月10日施行)5条、6条。 

[2] 趙旭東『中国会社法学』(成文堂・2013年)251頁以下参照。

[3] 会社法35条(法改正後は34条)


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