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【14-003】中国の改正会社法(2013年12月28日制定、2014年3月1日施行)

2014年 1月20日

柳 陽(Liu Yang):中国弁護士

 現在、長島・大野・常松法律事務所所属。 北京大学・慶應義塾大学法学修士。日本企業の対中投資と貿易、M&A(合併と買収)、知的財産、労務等、対 中ビジネスに関する法務全般を取り扱う。講 演、執筆も多数。

 2013年12月28日、中国の会社法(以下「現行法」)の改正案(以下「新法」)が全国人民代表大会常務委員会(日本の国会の常設機構相当)第六次会議にて可決され、2 014年3月1日より施行されます。新法の施行により、会社設立手続きの簡略化や株主負担の軽減等が図られます。その主な改正内容としては、以下の点が挙げられます。

1.「払込資本金制度」から「授権資本金制度」への転換

 現行法では、実際に払い込まれた資本金額の登記が義務付けられていますが、新法の施行後は会社定款等で定められる資本金額のみを登記すればよく、「払込資本金登記制度」から「授権資本金登記制度」へ 転換されます。よって、今後は、会社の登録資本額、出資方法、出資期限等は、会社の定款で定められる自主的な約定に委ねられることになります。例えば、株主の出資期限は、現行法だと、会社設立日から2年以内( 投資性会社の場合は5年以内)に出資金の全額払込が義務付けられていますが、新法はかかる出資期限の規制を廃止しています。

2.最低登録資本制度の原則撤廃

 現行法では、会社設立の際は最低登録資本制度が設けられており、有限責任会社は3万元(1元は約17円相当)、一人有限責任会社は10万元、株式会社は500万元と規定されています。これに対して、新 法は、別途法令に規定がある場合を除き、これらの最低資本金の規制を撤廃しています。

 また、現物出資は会社の登録資本の70%を超えないことが求められていますが、新法ではこの制限を撤廃し、100%の現地出資による会社設立も認められることになりました。もちろん、手 元に資金がなければ会社の運営ができませんので、実務上100%の現地出資は考えられないかもしれませんが、現物出資の比率に対する法的制限を無くすことにより、株 主がより自由に会社の資本構成を設計できるようになった点は、評価できるものと思われます。

3.登記事項・登記書類の簡略化

 現行法では、会社設立の際に会社登記機関で登記する事項として、株主の引受出資額、払込出資額が規定されていますが、新法の施行後は、これらの登記は必要ありません。また、会 社登記時における出資検査証明書の提出義務も撤廃されています。

※主な改正内容

現行法

新法の改正内容

7条2項
会社の営業許可証には、会社の名称、住所、登録資本金、払込資本金、経営範囲、法定代表者の氏名等の事項を記載しなければならない。
【一部削除】:払込資本金
23条
有限責任会社を設立する場合は、以下の条件を満たさなければならない。
…(2)株主の出資額が法定資本金の最低限度額に達していること。…
【変更】23条
有限責任会社を設立する場合は、以下の条件を満たさなければならない。
…(2)会社の定款の規定に合致する全株主が引き受けた出資額を有すること。…
26条
有限責任会社の登録資本金は、会社登記機関に登記した全株主の引き受けた出資額とする。会社の全株主の初回出資額は、登録資本金の20%を下回ってはならず、また、法 に定められる登録資本金の最低限度額を下回ってはならない。残りの部分は株主が会社の成立日から2年以内に全額払い込む。このうち、投資性会社は5年以内に全額払い込むことができる。
有限責任公司の登録資本金の最低限度額は、3万人民元とする。法律、行政法規に有限責任会社の登録資本の最低限度額についてより高い規定がある場合は、その規定に従う。
【変更】
26条
有限責任会社の登録資本金は、会社登記機関に登記した全株主の引き受けた出資額とする。
法律、行政法規及び国務院の決定に有限責任会社の登録資本金の払込、登録資本金の最低限度額について別途規定がある場合は、その規定に従う。
27条3項
全株主の金銭出資金額は、有限責任会社の登録資本金の30%を下回ってはならない。
【全文削除】
29条
株主は、出資金を払い込んだ後、法により設立された出資検査機構による出資検査を受け、かつ、出資検査証明書の交付を受けなければならない。
【全文削除】
30条
株主の初回出資金は、法により設立された出資検査機構による出資検査が完了した後、全株主が指定する代表者又は共同で委託する代理人が、会社登記機関に会社登記申請書、会社の定款、出 資検査証明書等の書類を提出し、設立登記を申請する。
【変更】29条
株主が会社定款に定められる出資額を全額引き受けた後、全株主が指定する代表者又は共同で委託する代理人が会社登記機構に会社登記申請書、会社の定款等の書類を提出し、設立登記を申請する。 
33条3項
会社は、株主の氏名又は名称及びその出資額を会社登記機関に登記しなければならない。
【一部削除】:その出資額
59条1項
一人有限公司の登録資本金最低限度額は、10万人民元とする。株主は、会社の定款に定められる出資額を一括して全額払い込まなければならない。
【全文削除】
77条(2)項
株主会社を設立する場合は、以下の条件を満たさなければならない。
…(2)発起人が引受及び募集した資本が法定資本の最低限度額に達していること。…
【変更】76条
株主会社を設立する場合は、以下の条件を満たさなければならない。
…(2)会社の定款の規定に合致する全発起人が引き受ける株主資本総額又は募集する払込株式資本総額を有していること。
81条1項
発起設立の方式により株式会社を設立する場合は、その登録資本金は会社登記機関に登記する全発起人が引き受けた資本総額とする。会社の全発起人の初回出資額は、登 録資本金の20%を下回ってはならず、残りの部分は発起人による会社の成立日から2年以内に払い込む。このうち、投資公司は5年以内に払い込むことができる。全額を払い込むまで、第 三者に対して株式を募集してはならない。
同条3項
株式会社の登録資本金の最低限度額は、500万人民元とする。法律、行政法規に株式会社の登録資本の最低限度額についてより高い規定がある場合は、その規定に従う。
【変更】80条1項
発起設立の方式により株式会社を設立する場合は、その登録資本金は会社登記機関に登記する全発起人が引き受けた資本総額とする。発起人が引き受けた株式を全額払い込むまで、第 三者に対して株式を募集してはならない。
同条3項
法律、行政法規及び国務院の決定に株式会社の登録資本金の払込、登録資本金の最低限度額について別途規定がある場合は、その規定に従う。
84条1項
発起設立の方式により株式会社を設立する場合は、発起人は会社の定款に定められる自己の引受株式を書面により全額引き受けなければならない。一括納付する場合は遅滞なく出資額を全額払い込み、分 割納付する場合は遅滞なく初回出資額を払い込まなければならない。金銭以外の財産をもって出資するときは、法によりその財産権の移転手続を行うものとする。
同条3項
発起人が初回の出資を払い込んだ後、董事会及び監事会を選出し、董事会が会社登記機関に会社の定款、法により設定された出資検査機構が発行した出資検査証明および法律、行 政法規に定められるその他の文書を提出し、設立登記を申請しなければならない。
【変更】83条1項
発起設立の方式により株式会社を設立する場合は、発起人は会社の定款に定められる自己の引受株式を書面により全額引き受け、かつ会社の定款の規定に従い出資額を払い込まなければならない。金 銭以外の財産をもって出資するときは、法によりその財産権の移転手続を行うものとする。
同条3項
発起人が会社の定款に定められる出資額を全額引き受けた後、董事会及び監事会を選出し、董事会が会社登記機関に会社の定款及び法律、行政法規に定められるその他の文書を送付し、設 立登記を申請しなければならない。
178条3項
会社減資後の登録資本金は、法定の最低限度額を下回ってはならない。
【全文削除】

 新法の施行を受けて、今後、会社登記管理条例をはじめとする一連の法改正がなされることになるので、引き続き注目したいところです。


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