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【14-008】百度(バイドウ)の著作権侵害をめぐる攻防の結末

2014年 3月 7日

朱根全

朱根全:北京雷津文化発展有限公司CEO
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)北京センター 所長

1968年 5月 中国江蘇省南通市生まれ
1983年 9月~1987年 7月 北京第二外国語学院日本語科在学
1987年 7月~1998年 3月 中国文学芸術界連合会国際部日本担当
1990年 7月~1991年 7月 日本音楽著作権協会(JASRAC)研修 
1997年12月~1998年12月 桐原書店著作権管理研修
1999年 5月~2012年 3月 日本音楽情報センター(JAMIC) 所長
2008年 8月~現在 北京雷津文化発展有限公司CEO
2010年 4月~現在 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)北京センター 所長

 中国検索最大手の百度は2011年2月、メディアプレイヤー「百度影音」のPC用を発表した。ユーザーは百度影音を使えば、優酷土豆、捜狐、テンセントなどが著作権を保有する動画コンテンツを直接視聴できる。百度影音は各サイトの動画と直接リンクして再生することが出来るので、ユーザーが各サイトにジャンプすることはしなくてもいい。

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 百度は2011年8月に百度動画APPを発表し、2013年時点でユーザー数が1億人を超え、1日平均のアクティブユーザー数は2000万人に達した。百度動画は35万作品以上の映画、テレビドラマ、および大量のアニメ、バラエティー番組などの動画コンテンツを収納している。百度影音もまた、最も人気の高いメディアプレイヤーになった。App Storeのダウンロードランキングのうち、百度動画APPは1位に輝き、全面的な独占を実現した。

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 動画サイトはモバイルユーザーを巡り競争を激化させているが、百度はその中で機先を制した。中国国内で主流のアンドロイド市場の統計データによると、百度動画、愛奇芸、PPSといった代表的な動画サイト専用アプリのダウンロード件数は3億8000万件を突破しており、中国国内のモバイル動画業界でダウンロード件数が最多となった。これに続くのは優酷土豆で、アプリのダウンロード件数は2億6400万件を突破した。それらにPPTV、捜狐動画、テンセント動画が続き、ダウンロード件数はいずれも1億件を超えた。

 こうした実態に対し、コンテンツを制作している各界のメーカー、媒体、関係者は、百度の作品ただ乗りであり海賊行為であるとして非難を強めていった。

 百度影音と百度動画のただ乗り行為は、動画サイトの生存空間を著しく脅かしている。これに対し捜狐、テンセント、優酷土豆集団、楽視は2013年11月13日、国内外の著作権組織・機構と共同で、「中国動画サイト海賊版撲滅共同行動」を北京で正式にスタートさせた。

 優酷土豆集団、捜狐動画、テンセント動画、楽視網、万達影業、光線伝媒、楽視影業は「中国ネット動画海賊版撲滅共同行動宣言」を発表し、百度などの日増しに深刻化するネット動画の海賊版、ただ乗り行為に共同対抗することを表明した。この宣言の発起人側はまた、百度の海賊版による100件以上の著作権侵害を提訴したと発表した。これには百度がただ乗りしている著作権を有する1万作品以上が関連しており、すでに百度に対して3億元(約51億円)の損害賠償を請求したという。また中国映画著作権協会(MPA)、アメリカ映画協会(MPAA)、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が同宣言の式典に出席し、オンライン動画の海賊版撲滅に賛成を表明した。

 発起人側は、「百度は近年、検索エンジンと『避難港』の原則を利用し責任を回避し、百度影音を通じて各動画サイトの著作権を有する作品の保護を解除し、クローラにより動画情報を不当に入手し、動画サイトのコンテンツにただ乗りしてきた。同時に百度の提供する技術、通信量、ネットアライアンス、販促費のサポートにより、1000以上の小規模な海賊版動画サイトによって膨大な海賊版動画産業チェーンを形成した。百度は絶えず境界線を突破し、数年前に百度音楽と百度文庫の事件が物議を醸すこととなった。百度もこれにより、著作権行政部門の警告と行政処罰を受けた。しかし百度音楽と百度文庫に続き、百度は動画産業(モバイル動画を含む)を『重大な被害エリア』にしようとしている」と指摘した。

 モバイルネットワーク市場が急速に発展しており、2013年の中国のユーザー数は6億4800万人に達した。中でもモバイル動画の発展ペースは驚異的で、主要動画サイトの通信量のうちモバイル端末の比率が40%以上に達している。百度動画のモバイル版におけるただ乗り・海賊版というモデルは、その他の動画サイトからコンテンツを洗いざらい盗み取るようなもので、その損失の規模はPCの時代を大きく上回る。これを今のうちに防止しなければ、始まったばかりのモバイル動画産業チェーンに壊滅的な損失をもたらすだろう。

 しかし海賊版撲滅共同行動宣言に直面しながらも、百度は反省も謝罪もしておらず、同式典から30分内に声明文を発表し、責任を押し付け、自社が自ら海賊版・ただ乗り行為をしていたことを否定した。百度は、「当社は2012年より海賊版動画コンテンツ撲滅の行動を大々的に展開しており、海賊版コンテンツと判断次第これに自動フィルタリングをかけており、検索結果に表示されることはない。悪意ある動画サイトに対して、百度動画は百度検索と共同でこれらのサイトへのアクセスを禁止し、海賊版動画サイトの伝播を徹底的に防いだ。百度の動画商品は今年6月から現在まで、海賊版および不適切なオンライン動画コンテンツへのアクセスを、計580万回以上遮断した。そのうち百度動画APPだけでも、報告された150万件以上の問題を処理した」と主張した。

 百度はまた、「海賊版は国内動画業界の共通の難題だ。当社は今後も撲滅に力を入れ、著作権を持つ動画の発展を支援する。当社はまた同業者と協力し、技術革新と緊密な協力により、著作権保有コンテンツによる動画業界の発展を促していく」と表明した。

 これに対して発起人側は、「百度は小規模の動画サイトの海賊版行為に積極的に協力している。当方と百度は2年以上にわたり交渉を続けているが、未だに解決されていない。百度の海賊版は自発的な行為であり、フィルタリングの不足という問題ではない。百度はこれによって利益を上げているわけではなく、海賊版コンテンツによりモバイルネットワークにおける地位と競争力を固めようとしている」と主張した。

 「中国動画サイト海賊版撲滅共同行動」は社会から強い反響を得た。中国中央テレビ(CCTV)、新華社、人民日報などの100社以上の国内メディアが詳しくこれを報じ、AFP通信、ロイター通信、ウォール・ストリート・ジャーナル、NHK、香港南華早報、タイムズなどの約20社の海外メディアが活動に出席した。

 今回の活動の翌日、中国国家版権局はメディアを通じ、公共の利益を損ねる著作権侵害・海賊版行為の撲滅を支持すると表明し、11月19日に百度に対して行政処罰を視野に入れ調査を開始した。

 この調査前の11月15日より、百度はモバイル端末用アプリの一部で、優酷土豆、捜狐動画、テンセント動画の著作権を持つ映像コンテンツのただ乗りを停止している。

 北京海淀裁判所は11月29日に判決を下し、百度の優酷土豆に対する著作権侵害が認められた。裁判所は百度に対して直ちに著作権侵害行為を停止し、49万元(約833万円)の罰金を支払うよう命じた。

 中国国家版権局の調査によると、百度は自社のメディアプレイヤーにより、利用者に対して大量の海賊版サイトを検索結果として表示し、海賊版コンテンツにアクセスさせた。これには一定の主観的な過失があり、情報ネットワークの伝播権を侵害し、公衆の利益を損ねたとしている。

 中国国家版権局は12月27日、百度に対して著作権侵害行為を停止するよう命じ、25万元(約425万円)(上限額)の行政処罰を下した。この事件は、中国国家版権局が、中国公安部(省)、中国工業・情報化部(省)、中国国家インターネット情報弁公室と2013年より展開している、ネットワーク海賊版撲滅特別行動「剣網行動」の10大事件のうち最大の事件となった。

 百度影音は12月30日、新浪微博(ウェイボー)を通じ、10月より全面的にモデルチェンジを開始し、著作権を持つコンテンツによる娯楽のプラットホームを構築すると発表した。PC用でもモバイル端末用でも、百度影音では海賊版コンテンツがほとんど検索できなくなった。これにより、今回の動画サイトの海賊版撲滅の嵐が収束に向かっていった。

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11月13日「中国動画サイト海賊版撲滅共同行動」に賛同した権利者、権利者団体代表による発会式


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