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【16-009】中国の新広告法の施行と施行後の摘発事例

2016年 6月13日

柳 陽(Liu Yang):中国弁護士

 現在、長島・大野・常松法律事務所所属。北京大学、慶應義塾大学法学修士。日本企業の対中投資と貿易、M&A(合併と買収)、知的財産、労務等、対中ビジネスに関する法務全般を取り扱う。

 現在、中国で事業を展開している日系企業の多くは、テレビ、新聞紙からバス・地下鉄の車内広告、インターネットまで、様々な媒体を通じて自社製品・サービスの広告を打ち出している。中国において、このような広告を規制する基本法として、「中華人民共和国広告法」が存在する。同法は、1995 年 2 月 1 日に施行され、2015年4月24日に全国人民代表大会常務委員会第14回会議において施行後初めて改正された。改正された広告法(以下「新広告法」といい、改正前の法律を「旧法」という。)は、2015年9月1日より施行され、「中国史上最も厳しい」広告法であると評価されている。

 本稿では、新広告法施行後に実際に当局より摘発・公表された事例として、絶対的表現の禁止に抵触するとされた事案、虚偽広告の禁止に抵触するとされた事案、及び小学生向け広告の禁止に抵触する事案を紹介しつつ、広告する際に禁止される表現の内容を説明する。

事例1:絶対的表現の禁止に抵触するとされた事案
概要 A有限公司は、2015年8月から11月までの間、自社のホームページにおいて、投資商品の宣伝を行った際に「最良」という表現を使用した。
課された行政罰 過料20万元(約360万円。以下1元=約18円として換算する。)
新広告法の関連規定 第9条第3号
広告に次の各号に掲げる事由があってはならない。
…(三)「国家級」、「最高級」、「最良」等の用語を使用する。

 この事例は、広告において、いわゆる「絶対的表現」を使用したことにより行政罰に処された事案である。新広告法においても旧法においても、広告で絶対的表現を使用することは禁止されているが、新広告法では旧法と比べて、広告主が広告で絶対的表現を使用した場合に科される過料が高額化している。すなわち、旧法下では、広告主に対して広告費用の一倍以上、五倍以下の過料に処することとされており、過料の計算の基礎となる広告費用を何によって算出されるかが必ずしも明確ではなく、また、本事例のように自社ホームページのみで広告する場合には広告費用がさほど掛からないように思われるため、過料があまり高額には達しないものと想定されていた。これに対して、新広告法は過料を比較的高額な「20万元から100万元〔注:約360万円から約1800万円〕」と定め、その範囲内で行政部門の自由裁量で過料の額を決めることができることとしたため、旧法に比べ、高額な過料を科されるリスクが増大し得ると評価することができる。

事例2:虚偽広告の禁止に抵触するとされた事案
概要 B有限公司は、2015年7月から9月までの間、屋外広告でシステムキッチンの図面に「表面に油防止の塗装が施されている」と宣伝していたが、当局が調査を実施したところ、コンロの壁部分にのみ油防止の塗装が施されており、それ以外の部分には油防止の塗装が施されていなかったことが発覚。
課された行政罰 過料82万元(約1476万円。)
新広告法の関連規定 第28条第2項第2号
虚偽又は誤解を招く内容により消費者を欺き、誤導した広告は、虚偽広告とする。広告が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合、虚偽広告とする。
…(二)商品の性能、機能、産地、用途、品質、仕様、成分、価格、生産者、有効期限、販売状況、受賞歴等の情報、又はサービスの内容、提供者、形式、品質、価格、販売状況、受賞歴等の情報、並びに商品又はサービスに関する承諾内容等の情報が実際の状況に合致せず、購買行為に実質的な影響を及ぼした場合

 新広告法においても旧法においても、広告主が虚偽広告を使用することを禁止していたが、旧法では虚偽広告が何を意味するのかという点が明確に示されていなかった。これに対して、新広告法では、どのような広告が虚偽広告に該当するかという具体的な規定を新たに設けている。上記の他に、①商品又はサービスが存在しない場合、②虚偽、偽造又は検証不能な科学研究の結果、統計資料、調査結果、ダイジェスト又は引用語等の情報を証明材料とする場合、③商品を使用した又はサービスを受けた効果を捏造する場合、④虚偽又は誤解を招く内容で消費者を欺き、又は消費者を誤導するその他の状況も、虚偽広告の一態様として規制されている。

事例3:小学生向け広告の禁止に抵触するとされた事案
概要 C有限公司は、2015年9月、自社の名称及び提供しているサービス等の広告内容が印刷された文房具1000個(658元相当)を小学校で配布した。
課された行政罰 過料658元(約1万1844円)
新広告法の関連規定 広告法第39条
小・中学校、幼稚園内で広告活動を実施してはならず、小・中学生及び幼児の教材、補助教材、練習帳、文具、教具、制服、スクールバス等を利用して広告を掲載する又は形を変えて広告を掲載してはならない。但し、公益に資する広告は除く。

 旧法では、学校内での広告については特段の規制がないこととされていたが、新広告法では、新たに中学生以下の学生向けの広告の実施場所、方法に規制を課した。この事例は、過料の金額自体はそれほど高くないが、学校等の内部での広告が制限されることになったという点で、大いに意味があるといえよう。

 今回の新広告法の改正は、①規制する広告の範囲をより拡大し、②違反事例に対してより重い過料を課すことにしたという点で、一層、商業広告の規制を強めた改正であると評価することができる。上述のとおり、日系企業の多くは中国市場において様々な媒体を通じて自社製品の広告を行っているが、中国において広告を行う際には、新広告法の規制に抵触しないよう充分に留意する必要がある。

以上


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