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【17-001】中国が6年連続特許出願件数で世界一 中国国家知識産権局が2016年の実績速報を発表

2017年 1月27日 馬場錬成(中国総合研究交流センター 上席フェロー)

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1月19日、中国・国家知識産権局は北京で2016年主要知財統計データ及び関連状況を発表した

 中国の国家知識産権局(SIPO)は、このほど2016年の特許に関する出願・登録の統計データと関連状況を発表した。

 特許出願件数では順調に伸びているが、特許技術の実力ではまだ課題があることを率直に示すなど、知財に関する国家の取り組みの一端を明らかにしている。なお、いずれの統計も香港、マカオ、台 湾を除く数字である。

 発表によると2016年に中国・国家知識産権局が受理した特許出願件数は133万9000件で、前年比で21.5%増加して6年連続で世界一位になった。

 前年の2015年の出願件数は、約110万1千件だった。

 また、特許の登録件数は40万4000件であり、そのうち中国国内からの登録特許件数は30万2000件だった。2015年と比較すると3万9000件増加(前年比14.5%増)だった。

 登録された特許のうち、職務発明は27万6000件で、全体の91.4%を占めている。

 2010年から2016年までの特許出願件数の推移を見ると直線右肩上がりであり、この7年間で3.4倍という驚異的な増加率になっている。

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企業別の出願件数でHuawei(華為)がトップに躍り出る

 2016年の企業別の特許出願件数のトップ10は次のようになる。

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 前年5位だった世界トップクラスの通信機器メーカーのHuawei(華為)が大幅に出願数を伸ばしてトップに躍り出た。それでもHuaweiは、出願数よりも出願内容の質を重視していると発表しており、近 年の出願数はむしろ減っているという。

  一方で前年トップだった国家電網は、10位まで転落した。傘下にテレビやスマートフォンの製造、インターネット・ポータル、電子商取引、自動車製造、情 報技術などの事業会社を持っている楽視ホールディングスが、3位に浮上した。中国は変革する世界の産業構造に対応して特許出願動向も変革しており、着実にアメリカ型に近づいてきているように見える。

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特許登録件数では国家電網がトップ

 特許の登録件数のトップ10のランキングは次の表である。国家電網がトップとなっているがHuaweiは2位に甘んじている。H uaweiは特許出願件数よりも出願内容を重視する方針を打ち出しているように、ここでも選別した出願内容を登録している状況が垣間見られる。

2016年国内企業の特許登録件数のランキング
順位 出願人名称 特許登録件数
1 国家電網公司 4146
2 華為技術有限公司 2690
3 中国石油化工股份有限公司 2555
4 中興通訊股份有限公司 1587
5 京東方科技集団股份有限公司 1228
6 騰訊科技(深セン)有限公司 1027
7 珠海格力電器股份有限公司 871
8 中国石油天然気股份有限公司 867
9 聯想(北京)有限会社 763
10 上海華虹宏力半導体製造有限公司 721
各省(市、区)における一万人当たりの特許保有件数のランキング
順位 省(市、区) 一万人当たりの
特許保有件数
1 北京市 76.8
2 上海市 35.2
3 江蘇省 18.4
4 浙江省 16.5
5 広東省 15.5
6 天津市 14.7
7 陝西省 7.3
8 遼寧省 6.4
9 安徽省 6.4
10 山東省 6.3

順調に伸ばしている国際特許出願数

 2016年、国家知識産権局が受理したPCT(国際)特許出願件数は、4万5000件で、前年比で 47.3%増加した。

 そのうち、中国国内からのPCT特許出願件数は4万2200件で、前年比で48.5%増加し、海外からのPCT特許出願件数は2800件で、前年比で31.2%増加している。

 2016年、PCT国際専利出願件数が100件を超える省(区、市)は19に達し、2015年と比較して3つ増加している。そのうち、国 際的な企業活動が集積されている広東省は2万3600件でトップになっている。

行政法執行の件数も増加

 2016年、全国の専利(特許、実用新案、意匠)行政法執行処理件数の総数は、48,916件で前年比36.5%増加した。そのうち侵害紛争処理件数は20,351件に上っている。前 年比で42.8%増加し、専利詐称調査事件は28,057件で、前年比で32.1%増加した。

 年々、知財をめぐる紛争数が増えており、知財の権利を主張する傾向が強くなっている。

 また、2016年に専利審判審査委員会が受理した審判請求件数は13,107件で、審判請求の終了件数は17,623件だった。

 一方、無効審判請求件数は3,969件で、無効審判請求の終了件数は4,100件であった。

 弁理士資格を取得する傾向も強くなり、2016年の全国の弁理士資格試験の応募者は3万人を超えた。このうち合計4954人が試験に合格し、過去最高となっている。現在、全 国の専利代理機構は1500社を突破し、執務弁理士は1万4000人を超えている。

知識産権局が4つの特徴を表明

 国家知識産権局は、知財統計速報の発表と同時に知財状況の4つの特徴も提示した。

1、国内発明専利保有件数は100万件を突破

 2016年末まで、中国の国内特許保有件数は110万3000件に達し、初めて100万件を突破した。

 これはアメリカ、日本に次ぎ世界で3位である。中国(香港、マカオ、台湾を除く)では、一万人当たりの特許保有件数は8.0件に達し、「十二・五」期末(2015年末)と比較して1.7件上昇した。& amp; amp; amp; amp; lt; /p>

 「第十三次五カ年計画(十三五)」計画要綱では、一万人当たりの特許保有件数の目標は12件になっているが、このペースなら実現できるだろう。

2、特許は品質及び数量の同時向上を実現

 2016年は「十三五」初年度で、中国国内の特許出願件数及び登録件数は安定的に継続して成長した。

 特許出願は、専利(特許、実用新案、意匠)出願の中で40%程度を保持し、企業からの国内特許出願件数及び登録件数は、いずれも全体の6割以上に達した。

 企業を中心とするイノベーション主体の発明運用能力は継続して高まっており、中国の特許審査能力の向上にも役立っている。

3、一部技術分野の知財ポートフォリオはまだ遅れている

 世界知的所有権機関(WIPO)により区分される35の技術分野のうち、2016年は、29技術分野において中国国内の特許保有件数が外国からの特許保有件数より多くなった。2015年と比較して1分野、p p p p ; > 増加している。

 しかし、光学、エンジン、輸送、半導体、オーディオ・ビジュアル技術、医学技術などの6分野では、外国に依然として差をつけられている。

 特に、光学系とエンジン分野では、外国の特許保有件数は、中国国内の特許保有件数のそれぞれ1.4倍と1.2倍になっている。10年以上維持されている有効特許保有件数を見ると、外 国出願人の保有件数は中国出願人の1.9倍であり、特に自動車などの運輸分野では5.7倍に達している。

 そのため、中国は一部の技術分野での知財ポートフォリオを強化させる必要があると発表している。

4、出願人の外国での知財出願の件数は増加

 中国は「走出去(出て行こう)」戦略を進めており、近年は知的財産権を重視して国際競争に参加する革新的な企業が多く現れている。

 PCT知財出願件数は順調に増えており、2016年の中国の出願人が国家知識産権局に出願したPCT出願件数は、4万2000件で、全年同期比で48.5%に達している。

 しかし、先進国と比較すると、中国の海外知財ポートフォリオは依然として差をつけられている。WIPOのデータによると、2015年には、中国の外国への知財出願件数は世界6位で、アメリカの1/6、日 本の1/5でしかなく、ドイツの半分にも至らなかった。今後中国は、外国での知財ポートリォリオを強化させる必要があるとしている。

 このように知財の力を客観的に評価し、国際的な競争力の不足に言及する発表を見ると、中国の知財に対する課題と展望を的確に把握し、国家として取り組む姿勢が見える。


出典:権威発布!2016中国専利数拠排行榜
http://mp.weixin.qq.com/s/kudSZmbepUAl6Gwc_AFOVg