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【18-014】中国の外商投資参入ネガティブリスト(2018年版)

2018年 9月25日

柳 陽(Liu Yang):中国弁護士

 中国弁護士。北京大学卒、慶應義塾大学法学修士。日本企業の中国進出、M&A、事業再編、撤退、労務紛争、一般企業法務等の中国法業務全般を取り扱う。

 中国の国家発展改革委員会及び商務部は2018年6月28日に「外商投資参入ネガティブリスト(2018年版)」(以下「2018年版ネガティブリスト」という。)を公布し、当 該リストは同年7月28日から施行された。以下、2018年版ネガティブリストの概要について紹介することとする。

1.ネガティブリストについて

 日本企業を含む外国企業は、中国へ投資して会社を設立し、又は既存会社へ資本参加する際に、分野によって中国法上の制限を受けたり、又は禁止されることがある。すなわち、外 国企業による中国に対する投資分野は、中国国務院の外商投資の方向を指導する規定により、奨励類、許可類、制限類及び禁止類の4つに分類されており、その名称のとおり、奨励類への投資は奨励され、制 限類への投資は一定の制限を受け、禁止類への投資は禁じられている(それ以外の分野は許可類となる。)。このうち、制約として大きい、制限類及び禁止類を具体的に列挙したリストが、ネガティブリスト( 外商投資参入特別管理措置)と呼ばれている。2018年版ネガティブリストは、新たに制定されており、2017年7月28日から施行されていた「外商投資参入ネガティブリスト」(以下「旧ネガティブリスト」と いう。)に代替するものである。

 中国では、外商投資企業がネガティブリストに定められた業務分野に従事するものでない限り、原則として設立時から届出制による管理が適用され、外商投資総合管理情報システム上で届出を行えば足りる。こ れに対し、外商投資企業がネガティブリストに定められた業務分野に従事する場合、設立等を行う際には、審査制による管理が適用され、商務部門における審査認可手続を経る必要がある。

2.2018年版ネガティブリストの特徴

 2018年版ネガティブリストは、外国資本の参入を制限又は禁止する対象として48項目を挙げるに留まり、これは旧ネガティブリストが対象とした64項目から減少した。また、従 来のように制限類と禁止類に分けてリストアップする方法を廃止し、制限類、禁止類という分類自体をなくし、規制業種ごとに制限及び禁止の項目をまとめて記載する方法を新たに採用した。さらに、将 来的な規制の撤廃措置についても初めて規定した。

3.主な緩和措置

 2018年版ネガティブリストにより、外国投資者は、製造業やサービス業を中心とした大幅な規制緩和を享受することとなっている。緩和措置は様々な分野に及んでいるが、日 本企業が進出する主な業務分野における緩和措置は下表のとおりである。

旧ネガティブリスト 2018年版ネガティブリスト
製造業
【制限類】
自動車完成車、専用自動車の製造:中国側の持分比率が50%を下回らず、同一の外国投資者は中国国内に2社以下の同類(乗用車類、商用車類)の完成車製品を生産する合弁企業を設立することができ、中 国側合弁パートナーと共同で中国国内のその他の自動車生産企業を合併する場合、及び純電気自動車の完成車製品を生産する合弁企業を設立する場合には、2社の制限を受けない。
・専用車、新エネルギー車の製造は出資持分比率の制限を受けない。
・2020年に商用車についての出資持分比率の制限を撤廃する。
・2022年に乗用車についても出資持分比率の制限及び合弁企業を中国国内2社に限る制限を撤廃する。
【制限類】
レアアースの製錬、分離(合弁、合作に限定)、タングステンの製錬
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
船舶(ブロックを含む)の設計、製造及び修理(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
幹線、支線航空機の設計、製造及び整備、3トン以上のヘリコプターの設計及び製造、水陸両用飛行艇の製造並びに無人機、軽航空機の設計及び製造(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
汎用航空機の設計、製造及び整備(合弁、合作に限定)
左記の制限は撤廃された。
インフラ
【制限類】
送電線網の建設、運営(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。
商業分野
【制限類】
ガソリンスタンド(同一の外国投資者が30を超える支店を設立し、複数の供給業者から仕入れた異なる種類及びブランドの製品油を販売するガソリンスタンドチェーン店は、中国側の持分支配とする)の 設立、運営
左記の制限は撤廃された。
交通輸送業
【制限類】
鉄道幹線の建設、運営(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
鉄道旅客輸送会社(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
国際海上輸送会社(合弁、合作に限定)
左記の制限は撤廃された。
金融業
【制限類】
一つの国外金融機構及びその支配もしくは共同支配を受ける関連者が発起人又は戦略投資者として一つの中国資本商業銀行に投資する場合の出資比率は20%を超えてはならず、複 数の国外金融機関及びその支配もしくは共同支配を受ける関連者が発起人又は戦略投資者として投資する場合の出資比率は25%を超えてならない。
左記の制限は撤廃された。
【制限類】
証券会社(設立時は人民元普通株、外資株及び政府債券、社債券の引受及び保証推薦、外資株の取次、政府債券、社債券の取次及び自己取引に限定。設立から満2年経過後、条 件を満たす会社は業務範囲の拡大を申請することができる。中国側の持分支配)、証券投資ファンド管理会社(中国側の持分支配)
・証券会社、証券投資基金管理会社は外資比率が51%を超えない。
・2021年に当該制限を撤廃する。
【制限類】
生命保険会社は外資比率が50%を超えてはならない。
・生命保険会社は外資比率が51%を超えない。
・2021年に当該制限を撤廃する。
【制限類】
先物取引会社(中国側の持分支配)
・先物取引会社は外資比率が51%を超えない。
・2021年に当該制限を撤廃する。
技術サービス
【制限類】
測量製図会社(中国側の持分支配)
左記の制限は撤廃された。

4.まとめ

 前述したとおり、2018年版ネガティブリストの施行により、外国投資者が中国で投資できる分野や投資が可能な程度は拡大され、全体的に外商投資に対する規制が緩和される方向である。他方、2 018年版ネガティブリストにおいて、宗教教育機構への投資、書籍、新聞、定期刊行物の制作を禁止する規定が明記されるなど、教育や文化産業については一部の規制を強化する動きも見受けられる。

 なお、中国全土に11箇所ある自由貿易試験区においては、2018年版ネガティブリストが適用されず、自由貿易試験区独自のネガティブリストが存在しているが、か かるネガティブリストも2018年7月に更新されている。

 2018年版ネガティブリストは、今後、不定期的に改訂される見込みであり、日本企業が中国での新規投資を検討する際に、まずは2018年版ネガティブリスト又はその将来の改訂版に基づき、投 資制限の有無等を確認すべきであろう。

以上


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