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【18-023】中国合弁事業の実務~プロジェクトの進め方と、マイナー出資の留意点

2018年12月28日

野村高志

野村 高志:西村あさひ法律事務所 上海事務所
パートナー弁護士 上海事務所代表

略歴

1998年弁護士登録。2001年より西村総合法律事務所に勤務。2004年より北京の対外経済貿易大学に留学。2005年よりフレッシュフィールズ法律事務所(上海)に勤務。2010年に現事務所復帰。2 012-2014年 東京理科大学大学院客員教授(中国知財戦略担当)。2014年より再び上海に駐在。
専門は中国内外のM&A、契約交渉、知的財産権、訴訟・紛争、独占禁止法等。ネイティブレベルの中国語で、多国籍クロスボーダー型案件を多数手掛ける。
主要著作に「中国でのM&Aをいかに成功させるか」(M&A Review 2011年1月)、「模倣対策マニュアル(中国編)」(JETRO 2012年3月)、「 中国現地法人の再編・撤退に関する最新実務」(「ジュリスト」(有斐閣)2016年6月号(No.1494))、「アジア進出・撤退の労務」(中央経済社 2017年6月)等多数。

はじめに

 ここ数年、日本からの対中投資が増加傾向になってきていると感じます。業種も多岐にわたり、投資手法も中国企業への出資(一部買収)、合弁事業、独資会社設立など様々です。

 そこに共通する傾向として挙げられるのが、当該市場で力のある中国企業とアライアンスを組むことで、中国市場に参入し、又は中国における市場シェアを拡大しようとする点です。即ち、狙いは巨大化する中国の国内市場にあるわけです。中国市場での取引も、従来は日系企業同士の取引が中心であったのが、中国内資企業や、非日系の外資系企業にシフトする流れにあります。その中で、従来は専ら独資会社の形態で中国に子会社を設立していたような企業が、改めて合弁形態での進出を考えるケースも現れています。

 これは見方を変えると、中国における様々な事業分野で、実力を高めた中国企業が市場をリードするようになっており、外資が単独で参入・展開するのが困難な状況にあるとも言えます。中国における外資投資の歴史は、80年代~90年代は合弁事業が中心だったのが、WTO加盟で外資規制が緩和された2000年代以降は独資企業設立が増加しましたが、最近になって改めて、合弁事業が隆盛となっていると感じます。その中でも、中国市場をよく知る中国側パートナーに合弁事業のイニシアチブを委ね、日本側がマイナー出資(出資比率が50%に満たず、会社に対するコントロール権が限定される)に止まるケースが増えているように思われます。新規の合弁会社設立案件だけでなく、中国企業の買収案件でも、日本側が出資比率50%未満のマイナー出資に止まるケースが増えていると感じます。

 今回は、中国における合弁事業の実務に関し、①合弁事業プロジェクトの進め方に関するポイントと、②日本側がマイナー出資をする場合の留意点等について解説します。①については、合弁契約交渉のフローと実務ポイントを紹介し、②については、マイナー出資の問題点と、その対応策や知財戦略を具体的に解説します。

1. 中国における合弁事業プロジェクトの進め方

 まず、合弁事業の契約交渉フローを紹介し、併せて、実務的なポイントとして、合弁事業プロジェクトチームの組成のポイントと、交渉における通訳・翻訳の重要性について述べます。

(1) 合弁契約交渉のフロー

 以下、合弁交渉のフローを説明するとともに、各ステップにおいて法律事務所が提供できるサポートの内容を整理します。

[1] 中国企業に対する法務DDに関しては、拙著「中国企業に対する法務DDのポイント~効果的かつ効率的な実施のコツ~」(N&A中国ニューズレター2016年10月号)を参照
(https://www.jurists.co.jp/ja/newsletters/china_1610.html)。

[2] コンプライアンスDDに関しては、拙著「中国現地法人におけるコンプライアンス制度の段階的構築と、取引先等へのデューデリジェンス調査の実務 (N&A中国ニューズレター2017年6月号)を参照(https://www.jurists.co.jp/ja/newsletters/china_1706.html)。

  ステップ 内容 法律事務所のサポート
1 Financial Advisor(FA)の選定、FAによる合弁パートナー候補の選定 FAに合弁パートナーの選定・紹介を依頼する場合、まずはFAを選定し、FAが合弁パートナー候補を選定して紹介します。  
2 合弁交渉相手との守秘義務契約書やLOI/意向書の締結 合弁交渉の開始段階では、守秘義務契約や、LOI/意向書(合弁交渉を進める意向を双方共に有することを確認します)などの簡単な(2~3頁程度が多い)契約を締結するのが通常です。
案件によっては、この段階で、投資に関する基本方針を協議し、下記4記載の基本合意書の締結に至ることもあります。
これらの契約書ドラフトの作成・修正や、契約交渉への参加とサポート等。
3 合弁交渉相手に対する法務等デューディリジェンス(DD)調査の実施[1][2] 新規に合弁会社を設立する場合は、既存会社の買収とは異なり、法務等のDDの実施は必須ではありませんが、以下の場合には法務等DDを実施することがあります。
①  中国側出資者から合弁会社に資産が提供される場合(不動産や機械設備の現物出資、技術ライセンス等)の法務DD
②  出資者が合弁会社の運営を担う場合、人事労務、訴訟・紛争等に関する法務DD
③  贈収賄リスク防止のためのコンプライアンスDD
④  DD調査とは異なりますが、合弁会社の事業に特別な許認可が必要な場合は、その取得の可能性や具体的手続などについて、法的観点からの調査検討が必要となります。これは合弁事業の実行可能性に関わる問題であるため、本格的な契約交渉に入る前の段階で明確に把握しておくことが望ましいと言えます。
DD調査の実施、報告書の作成、報告会議の開催、DDを通じて発見された問題点の解決策に関する提案等。
4 合弁事業に関する基本合意書の締結(MOU/Term Sheet) 法務等のDDを実施したところ、ディールブレイクになるような問題は発見されず、合弁交渉を更に進めることになった場合、正式契約の交渉に入る前に、まず基本合意書を締結するケースが多く見られます。
合弁事業に関する基本方針・条件など(事業目的(合弁会社の経営範囲)と出資者双方の役割分担、出資額・出資方法及び出資比率、董事会の構成と決議事項、技術ライセンス契約など重要な付随契約に関連する条件など)を先に協議し、これらに大きな隔たりがある場合は合弁交渉を停止することで、不必要な交渉コストを防止することができます。
これらの契約書ドラフトの作成・修正や、契約交渉への参加とサポート、付随する法的問題点とそのリスク感に関する調査検討等。
5 合弁契約、技術ライセンス契約等の正式契約に関する契約交渉 基本合意書の締結後に、合弁契約、合弁事業に関連するライセンス契約・販売契約その他の付随的契約の詳細な条件交渉を行います。
DDを通じて発見された問題点の解決策や、合弁会社にとって必要な許認可の取得に関しても、具体的に協議して契約条項に落とし込みます。
合弁会社の定款、就業規則、労働契約の作成に関しても、中国側との交渉が必要です。
これらの契約書ドラフトの作成・修正や、契約交渉への参加とサポート、付随する法的問題点とそのリスク感に関する調査検討等。
6 正式契約の締結 合弁契約、ライセンス契約・販売契約その他の付随的契約の内容が固まると、双方の社内における意思決定手続を経て、契約締結に至ります(必要な社内手続・作成書類や、(上場企業の場合)対外開示などの準備も平行して進めます)。
中国又は日本でサイニング・セレモニーを開催し、契約締結を祝って祝杯を挙げることもよくあります。
契約書は日中両言語で作成することが多く、双方当事者が保有する以外にも、管轄当局への提出用などのため多めに締結しますので、大量の書面にサインや押印をすることになるため、事前準備をしっかりして手際よく進める必要があります。
社内手続の書類作成、開示内容の確認等。
サイニング用の契約最終版を用意し、サイニング・セレモニーの準備・進行をサポートすることもあります。日中双方の関係者と喜びを分かち合えるのは、弁護士冥利に尽きる瞬間です。
7 クロージング:商務部門・工商局等の各管轄当局への届出・登録等(必要書類の作成と当局手続) 正式契約の締結後に、双方が協力して、各管轄当局での届出・登録等の手続を行います。
多数の関係当局に、順に必要書類を揃えて提出しますので、契約締結より以前(正式契約締結の目処が立った段階)に、各当局毎に必要な書類を確認し、予め作成する方が望ましいです。
場合により、市場監督管理総局による独占禁止法上の審査が必要なこともあり、その場合は全体のスケジュールが長期化します。
なお、DD調査で発見された問題点の解消を、クロージングの前提条件にした場合は、中国側に先にこれを実行させ、それが完了したことを確認した後に、当局手続きを進めます。
各管轄当局で必要な手続書類の確認と作成、手続遂行のサポート、届出・登録がなされたことの確認、DD調査で発見された問題点の解消の確認等。
市場監督管理総局による独禁申告手続のサポート。
8 合弁契約に基づく出資等、契約の履行(合弁事業のスタート) 合弁事業の開始に伴い、工場やオフィスの立ち上げ・稼働、従業員等の雇用、資材・設備等の購入、銀行口座の開設、事業に必要な許認可や手続の実行、業務に必要な取引契約の締結、業務の開始などを進めて行きます。 合弁会社の顧問先法律事務所の立場で、実際の事業展開に伴う法的サポートを行います。

(2) 合弁プロジェクトチームの組成

 合弁契約の締結後は、新たに合弁会社を立ち上げることになります。よって、合弁プロジェクトの目的は、契約締結に止まるものではなく、その先の会社設立・運営を視野に入れたものとなります。従って、プロジェクトチームのメンバーは、将来の合弁会社の設立・運営を担うことを予定したものであることが望ましく、合弁会社への駐在が予定されているメンバーを含む必要があります。

 かかる見地から、合弁プロジェクトチームの組成に際しては、社内の経営企画、営業、技術、法務、知財、人事総務など主立った部門から、精鋭を集めることが重要です。合弁交渉を進めたコアメンバーが、合弁会社設立後に出向派遣して駐在し、または本社サイドからサポートすることを念頭において、年齢やポジションなどのバランスも考えつつ、合弁会社の事業運営を担っていけるような人選をすることになります。そのうえで、プロジェクトの各ステップにおいて、担当メンバーが、弁護士など外部専門家とも密接に協力することが重要です。

(3) 通訳・翻訳の重要性

 中国における合弁交渉においては、ハイレベルな通訳・翻訳が必要とされます。契約交渉の過程において、微妙なニュアンスの相違から、深刻な誤解が生じるケースがしばしば見られます。特に契約の条件交渉の場合は、双方の理解に齟齬が生じるのを避けるために、法律の専門家が通訳・翻訳を行ったり、通訳・翻訳の内容をダブルチェックする必要性が高いと言えます。

 契約交渉の重要な場面では、弁護士や専門のパラリーガルが交渉等の席で通訳として参加したり、あるいは通訳者の通訳に問題がないか確認したり、又は中文の書面のやり取りに関しても翻訳チェックを行うのが望ましいと言えます。なお、交渉相手の中国側出資者が用意した通訳のみに頼るのは避けるべきです。また外部の通訳に依頼する場合は、その通訳のレベルや、合弁プロジェクトに関する専門知識への理解度をよくチェックする必要があります。

2. マイナー出資の留意点

 続いて、合弁事業において日本側(外国側)がマイナー出資となるケースが多いことを踏まえ、かかるマイナー出資の場合の問題点と、その解決策について述べます。

(1) マイナー出資の問題点

 中国で合弁事業を行う際に、外国側出資者がマイナー出資の場合、実務上よく見受けられる主なデメリット又はリスクは、以下の通りです。

主なデメリット又はリスク
合弁会社の経営方針に関わる事項
1 会社経営及び事業運営に関する重要事項について、中国側出資者の意向で一方的に決められてしまい、日本側出資者の意見や利益が顧みられないおそれがある。
2 合弁会社の存続や運営内容をめぐる意思決定において、中国側出資者と意見が対立し、意思決定ができないデッドロック状態に陥るおそれがある。
3 利益配当は、中国側出資者と出資比率に応じて分配する必要があり、また、配当そのものを行うか否かの意思決定にも、中国側出資者の意向を考慮する必要がある。
合弁会社の日常運営に関する事項
4 合弁会社の日常経営について、実質的に中国側出資者のコントロール下に置かれる可能性がある。
5 中国側出資者のグループ内関連企業との間の関連者取引等により、会社利益が実質的に流出するおそれがある。
6 合弁会社の有する技術秘密や営業秘密が、中国側出資者の関連企業や第三者に、流出・漏洩するおそれがある。
7 合弁会社に、中国側出資者の社内規程や人事労務制度などが導入される場合、社内制度や人事労務が中国式に運営され、中国企業に見られがちな社内管理上の問題が生じるおそれがある。
8 合弁会社が主導で販売を行う場合、中国側出資者が従来から有する商流やコネクションを利用する結果、従業員の不正や公務員・国有企業社員に対する賄賂、商業賄賂などのコンプライアンス違反行為が生じるおそれがある。
合弁会社の撤退に関する事項
9 外国側出資者又は中国側出資者が、合弁事業からの撤退や合弁会社の解散を決意した場合に、双方で意見が対立し、紛争に至るおそれがある。
合弁会社の紛争に関する事項
10 中国側出資者と紛争になった場合、中国国内で行われる仲裁手続や強制執行において、地方保護主義(地元中国企業の利益保護)の影響などにより、外国側出資者が不利に扱われるおそれがある。

(2) その対応策

 上記のデメリットに対しては、①合弁事業開始前の合弁契約の交渉段階及び契約締結の段階で、マイナー出資者である外国側出資者の利益を保護するため、マイナー出資者にとって有利な内容の会社ガバナンス等に関する条項や、いわゆるデッドロック防止条項を、合弁契約、定款及び関連契約に入れ込むことや、②合弁会社の社内規定やモニタリング制度を適切に構築すること等を検討する必要があると思われます。

 実際に考えられる解決策として、以下の事項をご検討いただければ幸いです。

中国企業に対する法務DDに関しては、拙著「中国企業に対する法務DDのポイント~効果的かつ効率的な実施のコツ~」(N&A中国ニューズレター2016年10月号)を参照(https://www.jurists.co.jp/ja/newsletters/china_1610.html)。

コンプライアンスDDに関しては、拙著「中国現地法人におけるコンプライアンス制度の段階的構築と、取引先等へのデューデリジェンス調査の実務 (N&A中国ニューズレター2017年6月号)を参照(https://www.jurists.co.jp/ja/newsletters/china_1706.html)。

実務上の解決策
合弁会社の経営方針に関わる事項
1 会社経営及び事業運営に関して重要と思われる事項について、董事会の全員一致決議事項として合弁契約及び定款に規定すること(重要事項に関する拒否権の確保)。
2 中国側出資者と外国側出資者とが合弁会社の運営において意見が対立し、合意達成が困難な際の解決策として、いわゆるデッドロック防止条項を合弁契約及び定款に規定したり、出資スキームを工夫すること(オフショア投資スキーム)。[3]
3 会社の利益の配当・内部留保に関する方針や判断基準についてよく協議し、それを合弁契約もしくは定款に規定し、又は社内規定として定めること。
合弁会社の日常運営に関する事項
4 董事長、副董事長、総経理及び副総経理について、中国側出資者と外国側出資者が交代で任命することを合弁契約及び定款に規定すること。
5 日本側出資者が派遣する総経理・副総経理などの経営幹部が、合弁会社に常駐し、中国側出資者の派遣する経営幹部とのコミュニケーションを密にして、経営状況のモニタリングを欠かさないこと。
6 合弁契約と同時に技術ライセンス契約を締結し、その中で技術秘密保持について具体的に規定するとともに、鍵となる技術者との間でも秘密保持契約や競業避止契約などを交わすこと。[4]
7 合弁会社の社内規程や人事労務制度を新たに構築し、その際に日本側出資者の求める基準や要件を満たすようにすること。併せて、技術秘密・営業秘密の漏洩・流出を防止する秘密管理体制や、従業員の不正その他の社内不正行為を防止するコンプライアンス体制を構築すること。
8 合弁会社の事業運営に際し、賄賂・商業賄賂を防止するため、外部との販売契約や調達契約などの取引契約について、コンプライアンスに関する条項が規定された自社雛形契約を用意すること。
合弁会社の撤退に関する事項
9 合弁契約及び定款において、外国側出資者の撤退の権利の確保及び中国側出資者の一方的な撤退の防止のため、持分譲渡や解散・清算に関する詳細な規定を置くこと。
合弁会社の紛争に関する事項
10 合弁契約及び定款の紛争解決条項において、仲裁手続の中立性が保たれるように、適切な仲裁機関や仲裁手続を定めた仲裁条項を置くこと。

 以上の対策は、ある程度マイナー出資者のリスクを低減することができますが、完全に回避することは困難な面があります。様々な手法を組み合わせて利用し、日常的なモニタリングを欠かさないことが重要と思われます。

(3) 特許・ブランド戦略の観点

 前項で述べた各対策は、中国側出資者が不当なアクションを取る場合に備えた対策という面が強く、その意味でやや受け身の対策とも言えます。ここでは、日本側出資者が、合弁契約交渉及び合弁会社の運営において、より積極的に中国側出資者に対して優位に立つための方策について述べます。即ち、メーカーの場合であれば、中国で特許登録された技術を保有し、これを合弁会社にライセンスすることが考えられます。また、メーカー及びサービス業に共通するものとして、社名や商品名に一定のブランド価値がある場合に、これを中国で商標登録し、合弁会社にライセンスすることが考えられます。

 中国では、登録された特許技術や商標は、比較的確実に法的保護を受け易いといえ、実際に外資企業が特許権や商標権の侵害訴訟で勝訴しているケースは多数存在します。更に、上述のライセンス契約の条項において、ライセンサーたる日本側出資者の権利保護を図る内容の規定を置くことが可能であり、その場合は中国側出資者による技術の漏洩・流用や、商標の冒用を、より効果的に防止することができます。

 かかる見地から、中国においては、日本以上に積極的な特許・商標等の登録出願戦略を取ることが検討されるべきと考えます。

 日本企業の多くは、特許情報が公開されるのを嫌って、重要な技術を敢えて特許出願することなく、ノウハウとして秘匿する傾向が強いように感じられます。他方で、最近の中国大手企業は、特許・実用新案や商標の登録出願に大変積極的であり、登録が認められると、すぐ侵害訴訟を提起するなど権利行使にも積極的です。日本企業がノウハウで秘匿していた技術が外部に漏洩・流出したり、又は競合の中国企業の技術レベルがアップして、類似する技術を自主開発するに至った結果、第三者に先に特許登録されるおそれもあります。

 ブランドについても、商標登録がなされていれば、模倣品業者に対する権利行使が比較的容易であるのに対し、商標登録されていない場合は、専ら反不正当競争法による保護に限定される結果、訴訟などの権利行使のハードルが高くなります。更に、会社の商号だけでなく、個別の商品名称も商標登録したり、中国市場向けに漢字の名称を考案して商標登録することも、模倣品対策の見地から効果が見込まれます。

 以上の通り、合弁事業に関して積極的な特許・ブランド戦略を検討することをお薦めします。一度、社内の知財部メンバーに外部専門家も交えて、上記の観点から、自社が保有する知的財産の「棚卸し」を行ってみるのもよいかと思います。

3. おわりに

 中国が近年も安定的に経済成長を続けており、世界経済における中国のプレゼンスが益々高まる中、日本企業にとって中国市場の重要性も高まりつつあります。中国市場の厳しい競争環境の中で生き残りを図るための方策として、合弁事業の意義が再度評価されています。

 以前によく見られた日中の合弁事業では、日本側がマジョリティ出資であったとしても、実際には合弁会社に対して十分なコントロールを及ぼすことができず、実態は中国側出資者のコントロール下に置かれているケースがしばしば見られました。日本側がマイナー出資の場合に、適切に合弁会社をコントロールし、更にその事業を積極的にリードしていくことは、多くの日本企業にとってチャレンジングな課題だといえるでしょう。

 日本側出資者がマイナー出資の場合であっても、一定のコントロールを適切に及ぼしつつ、合弁事業を真の成功に導くための戦略的な取り組みが改めて重要となっており、本稿がその一助となればと願っております。

以上


 

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