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【19-002】中国の電子商務法に関するQ&A

2019年2月7日

柳 陽(Liu Yang):中国弁護士

 中国弁護士。北京大学卒、慶應義塾大学法学修士。日本企業の中国進出、M&A、事業再編、撤退、労務紛争、一般企業法務等の中国法業務全般を取り扱う。

 本稿では、近時、話題に上がることの多い電子商務法について、実際に質問を受けた内容を踏まえ、Q&A形式で解説を進める。

Q1:最近、中国で「電子商務法」という法律が施行されたと聞いていますが、具体的にどのような内容の法律なのですか。

A1: 電子商務法は、2018年8月31日に中国の立法機関である全国人民代表大会常務委員会で可決され、2019年1月1日より施行された法律であり、中国国内で実施される電子商務( Electronic Commerce、以下「EC」と略します。)活動に適用されます(以下、単に「法」ということがあります。)。同法の適用対象となる「電子商務」とは、イ ンターネット等の情報ネットワークを通じて商品を販売し又はサービスを提供する事業活動をいいます(法2条)。なお、電子商務法は、金融商品や金融サービス、情報ネットワークを使ったニュース情報、動画・音声、出 版及び文化製品等の関連サービスには適用されません。

Q2:誰が電子商務法の規制を受けることになるのですか。

A2: 一言で言えば、EC事業を営む「EC事業者」が電子商務法の規制を受けます。EC事業者は、インターネット等の情報ネットワークを通じて商品を販売し又はサービスを提供する自然人、法 人及びその他組織を指し、具体的には、ECプラットフォーム運営者、プラットフォームの出店者、自 らECサイトを運営し又はその他のネットワークサービスにより商品を販売し又はサービスを提供する事業者が含まれます(法9条)。

Q3:なぜ電子商務法が制定されたのでしょうか。

A3: 電子商務法が制定されることになった背景・趣旨について、全人代常務委員会の担当者は「電子商務に関係する主体で最も立場が弱いのは消費者であり、次に弱いのが『電子商務経営者』、最 も強いのが『電子商務プラットフォーム経営者』である」とした上で、これら「三者の法的権益のバランスを取るため、同法では『電子商務経営者』、特 に第三者プラットフォームの責任と義務を重くして消費者保護を強化した」と解説しています。

 ご存知のとおり、中国では、消費市場の拡大やインターネット、スマートフォンの普及等により、電子商務(EC)の取引規模は著しい成長を見せており、消費者にとって、これまでにない利便性をもたらし、経 済の発展にも大いに貢献しています。しかし、その一方で、EC取引の結果、模倣品の疑いのある商品を販売された等、商品やサービスの品質を理由とするクレームも少なくありません。このような状況において、E C取引における消費者保護の強化とEC市場の健全な発展が促進されることが期待される中で、そのための法律の制定が強く要請され、電子商務法が制定される運びとなりました。

Q4:越境ECについても、電子商務法の規制対象となるのでしょうか。

A4: 越境ECについては、EC経営者が越境ECを行う際は、輸出入監督管理などの関連法令を順守する義務を負う旨が規定されており(法26条)、また、越 境ECプラットフォーム経営者が倉庫保管・物流や通関、検疫などのサービスを提供する際に政府が支援すること(第71条)、越境EC経営者は電子証明書で輸出入手続きを行えること(第72条)等 が定められています。他方、日本から出店する越境ECに関しては、明確な規定がありませんが、中国のECプラットフォームに出店する以上、自らEC事業者として同法の規制を受ける可能性があるものと思われます。 

Q5:EC事業者としてどのような義務を負いますか。

A5: 電子商務法によれば、EC事業者が負う主な義務は以下のとおりです。

(1) 登記義務

EC事業者は、市場主体登記(営業許可)をしなければなりません。ただし、個人が自家製農産品、家内制手工業製品を販売する等、個 人が自分の技能を利用して許可を得る必要のない労務活動及び零細小額取引活動を行う場合には登記は不要です(法10条)。

(2) 安全・環境配慮義務

EC事業者が販売する商品又は提供するサービスは、人身、財産安全の基準及び環境保護基準を満たしていなければならず、法律、行 政法規により取引が禁止された商品又はサービスを販売又は提供してはなりません(法13条)。

(3) 公示義務

EC事業者は、そのホームページの目立つ位置に、営業許可証の情報、事業ライセンスの情報、市場主体登記を要しない場合の当該情報、又は上記情報のリンク先を継続的に公示しなければなりません(法15条)。 

(4) 虚偽広告等の禁止

EC事業者は、商品又はサービスについて全面的に真実の情報を提供する必要があり、虚偽の取引、購入者評価のねつ造等の方法により消費者を欺いたり誤解させたりしてはなりません(法17条)。

(5) 抱き合わせ販売の制限

EC事業者は、商品又はサービスの抱き合わせ販売をする際、目立つ方法で消費者の注意を喚起し、抱き合わせ販売を必須条件として設定してはなりません(法19条)。

(6) データ提供義務

関連する行政部門から法に従って要請があった場合には、ECに関するデータを提供しなければなりません(法25条)。

(7) 紛争対応

紛争が発生した場合、EC事業者はオリジナル契約及び取引記録を提供しなければならず、これらの資料を紛失、改ざん、破壊、隠ぺい、あるいは提供を拒否した場合には、法的責任を負います(法62条)。 

Q6:知的財産権の侵害行為が発生した場合に、ECプラットフォーム事業者はどのような責任を負いますか。

A6: 知的財産権の権利者は、その権利を侵害されたと認めた場合、権利侵害に関する初歩的な証拠を示して、ECプラットフォーム運営者に通知し、削除、遮断、リンク先の遮断、取 引中止等の必要な措置を取るよう求めることができることとされています。ECプラットフォーム運営者は、当該通知を受領後、速やかに必要な措置をとり、かつ、当該通知を出店者に転送するものとし、必 要な措置をとらなかった場合、損失が拡大された部分について出店者と連帯して責任を負います(42条)。

 また、ECプラットフォーム運営者は、出店者による知的財産権の侵害を知っているか又は知るべきである場合、削除、遮断、リンク先の遮断、取引中止等の必要な措置をとらなければならず、必 要な措置をとらなかった場合、当該出店者と連帯して責任を負います(45条)。

以上


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