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【14-05】FOODEX JAPAN 2014に見る中国の産学連携

2014年 3月12日

石川 晶(中国総合研究交流センター フェロー)

 2014年3月4日より7日までの4日間、千葉県の幕張メッセで一般社団法人日本能率協会等が主催するFOODEX JAPAN 2014(第39回国際食品・飲料展)が開催された[1]

 初日に行われたオープニングセレモニーには、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使を含む28名の各国大使、関連団体の代表者らのテープカットにより華々しく開幕した(写真1参照)。

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写真1 ケネディ駐日アメリカ大使らによるテープカットの様子(写真提供:一般社団法人日本能率協会)

 FOODEX JAPANは、1976年より毎年開催されるアジア最大級の規模を誇る食品・飲料の専門展示会である[2]。主催団体のひとつ一般社団法人日本能率協会によると、今回は日本国内の企業と78カ国・地域の企業が参加し、出展企業数は2,808社にのぼり、会期全体の来場者数は7万5,766名を記録した。

 出展している企業ブースの取り扱い品目は非常に広範で、青果物、畜産品、水産品およびそれらの加工品、健康志向食品、調味料・香辛料、麺類、穀物、乳製品、ソフトドリンク、酒類、そして昨今ではベビーフード・シルバーフード等も出品されている。

 FOODEX JAPANには中国からも毎年多くの企業が参加し、今年も188社(筆者調べ)がブースを構えていた。

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写真2 中国企業出展エリア

 筆者は今回の本イベントに参加している30社の企業に直接聞き取り調査を行った。その内、産学連携を行っている企業12社からの回答があった。本調査はFOODEX JAPAN 2014に参加した中国企業全体を対象としたものではなく、詳細な分析と言えるものではないが、それでもある程度の傾向を把握することはできよう。

表1 産学連携を行っているFOODEX JAPAN 2014出展企業

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 表1のとおり、食品製造企業の産学連携の具体的な内容は、冷凍・解凍技術、野菜等の原材料の栽培技術、商品のパッキング等、多岐にわたるようである。

 基本的には地元ないし近隣の大学との産学連携が多いが、一方で遠く離れている企業と大学間で連携するケースもある。H社は茶を取り扱う福建省の企業で、北京の中国科学院中国農業大学と緊密な関係を築き、またL社は台湾の大学と共同研究しているという。他にも海外の大学(日本、アメリカ)との産学連携を模索している企業もあった。

 H社は産学連携のひとつのモデルケースと言える。企業と大学間の頻繁な人材の往来があり、大学の研究者が同企業の要職も担っているという。また提携先の大学院を修了した卒業生が、そのままこの企業に就職するケースが毎年あるという。このような産学連携を通じ、茶の生産量が増え、病気に対するノウハウ等の技術的な蓄積もできたという。

 マーケティングの面でも産学連携の影響が少なくないという。H社は中国農業大学のもつ国際的なネットワークを活用し、欧米にも販路を広める試みを始めている。またI社は、今回のイベントの日本語通訳に、技術提携先の武漢大学の学生を派遣していた。

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写真3 中国ブース

 表1の中に、野菜を取り扱う企業が多いが、いずれの企業も近年は無農薬・低農薬栽培、有機栽培を重視しているという。これは日本等への輸出のみならず、中国国内でもニーズが非常に高まってきているためであると、G社の企業の担当者は説明した。

 日中関係が厳しい状況ではあるものの、上記のような企業にとって、日本市場は依然として大きな魅力があるようで、積極的にビジネスを展開したいと多くの参加企業の担当者は口を揃えていた。

 なお、次回のFOODEX JAPAN 2015は、2015年3月3日から6日まで、会場は今年と同じく幕張メッセで開催を予定している。

関連リンク:
「FOODEX JAPAN 2014」オフィシャルページ
一般社団法人日本能率協会(JMA)


[1] FOODEX JAPAN 2014の主催は日本能率協会の他、一般社団法人日本ホテル協会、一般社団法人日本旅館協会、一般社団法人国際観光日本レストラン協会、公益社団法人国際観光施設協会であり、外務省、厚生労働省、農林水産省、観光庁、千葉県、千葉市、日本貿易振興機構(ジェトロ)も後援に名を連ねている。また関連の44団体も協賛している。

[2] なおFOODEX JAPANの来場対象は、食品・飲料のバイヤー(外食・中食、小売、商社・卸、食品メーカー、ホテル)であり商談を主な目的としている(一般向けのイベントではない)。