【16-08】中国、インドの経済成長は続く インド人教授が講演

2016年 5月12日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 中国とインドはそれぞれのやり方で経済成長を遂げ、イノベーションの成果も挙げている、とインド・トリバンドラムの開発研究所教授、スニル・マニ(Sunil Mani)氏が9日、政 策研究大学院大学で開かれた講演会で語った。

 現在、政策研究大学院大学教授を兼ねるマニ氏は、オランダの国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所の大学院長でもある。専門はイノベーションの経済・政策学。講演では、中 国とインドのイノベーション活動をテーマに、両国の特徴や違いを詳しく解説した。大きな違いの一つにマニ氏が挙げたのは、製造業の規模。中国が米国を追い抜いて世界最大となっているのに対し、イ ンドは6位と差がついている。国内総生産(GDP)比で表した産業構造も中国が農業9.17%、工業42.72%に対し、インドは農業17.83%、工業30.09%と工業化への移行度合いでも開きがある(%の 数字は2014年時点)。

写真1 スニル・マニ教授

 一方、労働力と資本という旧来の要素だけでなく技術上の進歩も表した数値とされる「全要素生産性」で、1990~2008年の年平均経済成長率を比較するとどうか。4%強の中国が世界のトップで、イ ンドも2.8%で2位につけている。マニ氏は、両国の経済成長力の高さを強調するとともに、今後数字は落ちるにしても引き続き高い経済成長を維持する、との見通しを示した。

 さらに特許に関する数字を挙げて、研究開発の効率はむしろ中国よりインドの方がよいと指摘しているのが興味深い。マニ氏が根拠として挙げたのは、米国で特許がとれる成果を得るまでに、中 国とインドではそれぞれどれだけの研究開発費が投じられているかを示した数字だ。中国は、米国で取得できた特許一つ当たり、購買力平価で5,900万ドルの研究開発費がかかっている。こ れに対しインドは1,300万ドルと相当、安上がりだ。また、研究者の数は中国の方がはるかに多いが、研究者1人当たりどれだけの研究開発費を使っているかをみると、両 国とも購買力平価で年間17万ドル強とほとんど差がない。研究開発の効率を比べると、中国よりインドの方が上ということになる。

 研究開発の効率がよいインドの特徴は、多国籍企業が示す高い関心からも裏付けられる、とマニ氏は指摘する。多国籍企業が研究開発、技術サービス、製 品設計でそれぞれ活動したいと望む国について調べた国際的な調査結果を示し、インドが多国籍企業にとって最も活動しやすい国に挙げられていることを紹介した。インドを最も好ましい国とする答えは、研究開発、技 術サービス、製品設計のいずれも40%を超す。この調査では、中国もインドに次ぐ好ましい国とされている。両国とも多国籍企業にとって工業生産活動がしやすい国とみられているということだ。こ れを裏付ける例として、世界最大の通信機器メーカーである中国企業「華為技術(ファーウェイ)」が、インドのバンガロールに最初の海外ソフト研究開発センターを1999年に設立している事実を、マニ氏は示した。氏 によると、この研究開発センターは、2,700人ものインド人技術者を雇用している。

 中国はハイテク企業をイノベーションの核とし、インドはソフト産業重視という違いがあるものの、技術開発に関する限り両国は協力し合う。マニ氏はそう予測し、特にインドについては、同 じ性能を持つ製品を他の国よりはるかに安くつくることを意味するフルーガルイノベーションの中心国として成長するとみている。氏によると、フルーガルイノベーションの考え方、手法は、医 療機器をはじめとして先進国へも広がり始めており、インドはすでに、製造業、サービス業におけるフルーガルイノベーションのハブ(中心地)になっているという。


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