【18-27】注目研究領域でも中国の先導顕著に

2018年12月12日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 国際的に注目度が高いとみなされた研究領域の約半数に中国が評価の高い論文を発表していることが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の論文分析で明らかになった。こ のほか米国との国際共著論文の数でも最も多い国となっているなど、中国が先導する研究領域が着実に増えていることを裏付けるデータが示されている。

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(ブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」から)

 科学技術・学術政策研究所が12月3日に公表したブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」は、まず論文総数の比較に加え、他の論文に引用される数が上位1%に入る論文(トップ1%論 文)と上位10%に入る論文(トップ10%論文)を、それぞれ注目度が高い論文(価値の高い論文)として国別の比較を示している。

 2003~2005年3年間の平均値と2013~2015年3年間の年平均値を比べると、日本は論文数が67,888本から64,013本と6%減っている。またトップ1%論文は385本から335本、ト ップ10%論文は4,601本から4,242本とどちらも8%減った。全世界で見ると論文数、トップ1%論文、トップ10%論文はこの間に全て62%ずつ増えており、米国、中国、ドイツ、英国、フランス、韓 国という主要国も軒並み数字を伸ばしている。減っているのは日本だけだ。

 日本以外の主要国の中でも目立つのが中国の伸び率。2003~2005年3年間の年平均値では、いずれの数字も日本を下回っていたのが、2 013~2015年3年間の年平均値は全て1位の米国に次ぐ2位につけている。論文数219,608本(2003~2005年3年間の年平均値に比べ323%増)、トップ1%論文1,954本(589%増)、ト ップ10%論文21,016本(484%増)と伸び率は急激で、本数も日本を大きく引き離している。

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科学技術・学術政策研究所ブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」から)

 科学技術・学術政策研究所が2年ごとに作成している「サイエンスマップ」からも、中国の国際的影響力が急激に向上していることが裏付けられた。「サイエンスマップ」は、論 文データベース分析により国際的に注目を集めている研究領域を抽出し、かつそれらの領域がどのような関係にあるかを図として示したもので、国際的にも注目されている分析手法となっている。2 011年~2016年の論文を対象にした最新の「サイエンスマップ2016」は、2年前に公表された「サイエンスマップ2014」(2009年~2014年の論文が対象)に比べると、国 際的に注目されている新しい研究領域が647から895に増えているのが目を引く。

 この理由の一つとして科学技術・学術政策研究所が挙げているのが、中国の役割増大に伴う研究者コミュニティの拡大。国際的に注目を集めている研究領域として抽出された領域のうちで、中国がトップ1%の 論文を一つ以上出している領域が51%に上る。米国の90%、英国の63%、ドイツの56%にはまだ及ばないものの、14年前(「サイエンスマップ2002」)の12%から、着 実に数字を伸ばしてきたことが分かる。日本は33%とここでも中国に大きな差をつけられている。

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注目される研究領域中、トップ1%論文を含む領域数・割合の国別推移

(「サイエンスマップ2016」から)

 サイエンスマップ2016から、中国が先導している研究領域であると見て取れる領域は何か。「ナノサイエンス研究領域群」、「エネルギー創出研究領域群、ソフトコンピューティング関連研究領域群」、「 社会情報インフラ関連研究領域群」を、科学技術・学術政策研究所は挙げている。

 国際的な影響度を測る指標として、近年、国際共著論文の数に対する関心が高い。ブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」には、米国と共著論文を出している上位10カ国を挙げた表も示している。米 国は論文数、トップ1%論文、トップ10%論文のいずれも1位を堅持しているから、米国との国際共著論文が多い国ほど先導する研究が行われている国とみなすことができる。

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(科学技術・学術政策研究所ブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」から)

 ここでも1位は中国。全研究分野で、米国との国際共著論文の21.2%を中国が占めている。さらに分野ごとでみても8分野中、「化学」「材料科学」「計算機・数学」「工学」「環境・地球科学」「 基礎生命科学」の6分野で1位、残りの「物理学」は2位、「臨床医学」は3位と他の国を圧している。日本は、全分野で8位、分野ごとでも「材料科学」の5位が最高で、「計算機・数学」に 至っては13位と振るわない。


関連リンク

  • 科学技術・学術政策研究所が12月3日に公表したブックレット「論文の量と質から見た日本の科学力」
    http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinkou/025/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/02/17/1382206-14.pdf
  • 「サイエンスマップ2016の概要」
    http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-NR178-SummaryJ.pdf

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