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【19-09】東京大学、立命館大学の日中韓連携に高評価 大学の世界展開力強化事業

2019年4月11日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 独立行政法人日本学術振興会は5日、政府支援を受け中国、アジア、東南アジア諸国の大学と連携して大学の世界展開力を高める事業を進めた13の大学・大学グループのうち、東京大学と立命館大学が最も優れた成果を挙げたとする最終評価結果を公表した。

「大学の世界展開力強化事業」は、国際的に活躍できるグローバル人材の育成と大学教育のグローバル展開力の強化を狙い、文部科学省が2011年度から始めた。今回、最終評価結果が公表されたのは、初年度の2011年度から2015年度まで実施された「キャンパス・アジア中核拠点形成支援」と名付けられたプログラム。この支援対象として採択された13の大学(複数大学から成るグループを含む)が、それぞれ中国、アジア、東南アジア諸国の大学と連携してグローバル人材育成のための拠点や仕組みづくりを目的に掲げ、5年間、さまざまな取り組みを行った。

2年半で二つの学位

 最終評価の結果、最高の評価である「S」を与えられたのは、それぞれ中国と韓国の大学と組んだプログラムで大きな成果を挙げた東京大学と立命館大学。東京大学公共政策大学院は、北京大学国際関係学院、ソウル大学国際大学院とコンソーシアムを形成した。目的は、公共政策・国際関係分野のダブル・ディグリー(複数学位制度)・プログラムを共同開発して実施し、3大学の国際競争力を強化することに加え、多文化的視点を持つアジアの次世代リーダーを育成すること。

 2012年度に東京大学と北京大学、東京大学とソウル大学間でそれぞれ「ダブル・ディグリー・プログラム」に関する覚書が締結され、2015年までに東京大学から北京大学へ6人、ソウル大学へは4人のダブル・ディグリー生(大学院生)が派遣された。一方、東京大学は北京大学から7人、ソウル大学から17人のダブル・ディグリー生を受け入れている。ダブル・ディグリー生は出身大学で1年間、二つ目の学位を受ける別の大学1年間、残るもう一つの大学で1学期間(半年)学習する。この2年半の学習で二つの学位(北京大学、ソウル大学は修士、東京大学は専門職学位)を与えられ、残りのもう一つの大学からは、「キャンパス・アジアプログラム」で単位を履修したことを示す認定書を与えられる。

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〈東京大学が受け入れたソウル大学ダブル・ディグリー生たち〉
(2013年8月八王子セミナーハウス:日本学術振興会ホームページから)

 この「ダブル・ディグリー・プログラム」とは別に、「交換留学」に関する3大学連名の覚書が2011年度に締結され、翌2012年度から各大学から相手国2大学に5人ずつ留学生を派遣、同数を受け入れる交流が始まった。こちらは出身大学で1年間、他の2大学で1学期(半年)ずつ学習し、この2年間の学習で出身大学の学位に加えて、他の2大学から「キャンパス・アジアプログラム」で単位を履修したことを示す認定書を受ける。2012年度から2015年度までに東京大学から北京大学へは12人、ソウル大学へは23人の交換留学生を送り出し、北京大学からは27人、ソウル大学からは3人の交換留学生を受け入れた。

 最終評価は、「交換留学」と「ダブル・ディグリー・プログラム」が着実に実施されたことに加え、インターンシップの実施、学生・修了生による自主的なトークイベントの開催、留学先の言語を学ぶ機会の提供などを挙げて、「キャンパス・アジアの優れた成功モデルの一つ」と高い評価を与えている。

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〈北京大学でのサマースクール2014〉
(日本学術振興会ホームページから)

日中韓3カ国語で卒論

「S」評価を受けたもう一つの大学である立命館大学のプログラムは、日中韓の3大学間で「移動キャンパス」や「共同カリキュラム」を実行し、東アジアの次世代人文学リーダーを養成することを目指している。立命館大学の連携大学は、中国の広東外語外貿大学と、韓国の東西大学。3大学の学生が、学部2年生、3年生の時に3大学のキャンパスを順に移動しながら学ぶ「移動キャンパス」は、1学期は広州の広東外語外貿大学で毎年2~4月に開講する。現地教員の中国語による中国社会文化研究などの人文学科目講義や、他の2大学から派遣された教員や遠隔システム利用による各国の歴史に関する授業などが行われた。会計事務所や人材派遣会社などでのインターンシップも実施した。

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〈3大学教職員合同会議〉
(2014年2月広東外語外貿大学:日本学術振興会ホームページから)

 5~8月に実施された2学期は立命館大学に他の2大学の学生も参加して、日本研究・日本文化の講義や小集団演習を実施したほか、自治体(京都市)や企業(メーカー、新聞社、書店、観光ホテルなど)でインターンシップも経験した。2013年度には東日本大震災被災地の宮城・岩手県沿岸部を訪問し、復興に関わる自治体職員や外国人から話も聞いている。3大学の学生たちは京都市にある国際シェアハウスで自主管理の共同生活を送った。

 3学期は、釜山の東西大学で9~12月に行われ、1、2学期と同様、各種講義のほかIT企業やメーカーなどでインターンシップを体験した。

 現地語で現地の人文学を学ぶという「移動キャンパス」の効果は、参加した学生たちの語学力向上に顕著に現れている。2016年1月にはその年の3月に卒業する3大学の学生30人の合同修了式が広東外語外貿大学で開催された。このうち立命館大学の学生10人は東アジアに関連したテーマの卒業論文を日中韓3カ国語で書いた。合同修了式では立命館大学生を含む30人の3大学学生全員が卒業論文の要旨を日中韓3カ国語で書き、母語以外の言葉で卒論発表を行っている。

 立命館大学の取り組みに対する最終評価では、学士課程としてはかなり挑戦的なプログラムである「移動キャンパス・共同カリキュラム」を円滑に進めたことに加え、中国と韓国の学生には日本での就職を支援し、日本人学生のグローバル企業就職も実現させたことに高い評価を与えている。

 2013年6月に閣議決定された「日本再考戦略」では、グローバル人材育成のために留学を増やす方針が打ち出された。減少傾向にある日本人の海外留学について、2010年の約6万人から2020年までに12万人に倍増し、外国からの留学生についても、2012年の14万人から2020年までに30万人に倍増する目標が盛り込まれている。「大学の世界展開力強化事業」は、対象となる世界の地域を毎年、変えながら現在でも続いており、2019年度は約13億円の予算が組まれている。文部科学省はこれまでの取り組みによって、「日本再考戦略」に盛り込まれた留学生の送り出し・受け入れ目標達成に貢献し、さらに日本の大学のグローバルな展開も強化された、としている。

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