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【24-21】生態系の難題解決を目指すグローバルビッグサイエンス計画(その2)

陸成寛(科技日報記者) 2024年04月11日

気候変動の脅威に対応し、世界が持続可能な開発の道を歩むことができるよう、生態系回復とカーボンニュートラルグローバルビッグサイエンス計画(Global-ERCaN)育成特別プロジェクトはこのほど、第1回学術交流会を開催。国際連合環境計画(UNEP)や国連食糧農業機関(FAO)といった国際機関や、中国を含む十数カ国の専門家・学者が集まり、グローバル科学研究交流・協力を実施することで一致した。今後は世界が直面している生態系関連の難題を解決できるよう協力する。

その1 からつづき)

関連分野の科学研究の経験を積み重ねてきた中国

 Global-ERCaN育成特別プロジェクトの目標は、各国の力を統合し、関連の共同研究を実施することだ。

 中国は、生態系回復とカーボンニュートラルの研究の面で経験を積み重ねてきた。過去30年間、中国生態系研究ネットワーク(CERN)は中国の生態系定位置観測、科学実験、科学的実証の重要な拠点となり、生態系科学研究、生物多様性保全といった面で重要な成果を上げてきた。また、さまざまな生態系のタイプを対象とした長期的なポジショニング研究を通じて、CERNは生態系回復のために、大量の基礎データと技術的サポートを提供してきた。

 中国陸上生態系フラックス観測研究ネットワーク(ChinaFLUX)も、観測地拡大や新技術研究開発、生態系の炭素・窒素・水の循環メカニズム認知、炭素・窒素・水のフラックス時空構造の評価といった面で重要な進展を遂げてきた。20年の発展を経て、ChinaFLUXの観測地は2002年の6カ所から現在の79カ所に増加。観測対象地は、中国の主な陸上生態系タイプをカバーしており、これは、中国の生態系回復プロセスとカーボンシンク能力を評価する重要な観測資料を提供している。

 中国の生態系研究ネットワークも、陸上生態系フラックス観測研究ネットワークも、いずれも世界の長期的な生態系研究ネットワークとフラックスネットワークの中核ネットワークと重要なパートナーとなっている。そのような良好なグローバル協力関係は、さらに広範囲な国際科学計画の展開に対し、強固なサポートを提供することができる。

 中国科学院院士(アカデミー会員)の于貴瑞氏によると、中国は生態系回復とカーボンニュートラルの研究分野において「友達の輪」を築いている。

 Global-ERCaN育成特別プロジェクトには現在、11カ国の科学者数十人が参加しており、今後はオープンサイエンスに基づくグローバル共同研究を推進することになっている。また、同プロジェクトの下に中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院生態環境センター、中国科学院華南植物園、中国科学院瀋陽応用生態研究所、中国科学院植物研究所がそれぞれ主導する5つの作業グループが設置されている。UNEPやFAOといった国際機関や米国、カナダ、日本、フィンランド、オーストラリアなどの科学研究者と協力関係を築き、Global-ERCaNは、移行科学委員会とその事務局、4つのテーマ別作業グループを立ち上げている。

幅広い協力により持続可能な開発を実現

 いかに生態系のポテンシャルを引き出し、生態系回復・管理、自然保護などの手段を通じて、陸上生態系炭素固定能力を高めるかについて、中国科学院地理科学・資源研究所の牛書麗研究員は「それに答えるためには、生態系回復の炭素固定の現状やポテンシャルなど、数多くの基礎的問題を解決する必要がある」と指摘する。

 学術界は4つのトピックを挙げ、こうした基礎的問題に答えようとしている。例えば、世界において劣化した地域を選び、典型的な生態系回復の動的データバンクを構築し、世界の生態系回復の進展におけるカギとなる生態系機能を評価し、生態系回復が炭素循環の過程に対する影響のメカニズムを分析することで、整った科学理論と成熟した管理技術体系を構築することなどだ。

 于氏は「3年の発展により、Global-ERCaN育成特別プロジェクトは、動的グローバルプラットフォームと正確なカーボンシンク計量体系を構築し、生態系回復の炭素固定の効果を定量化・評価し、今後のグローバルビッグサイエンス計画実施に基礎科学の枠組みを提供できる」と自身が描く青写真について説明。「中国には成熟したインフラ体系、良好な国際協力の経験、若手グローバル人材があり、国が生態系構築を重視しているため、それが実現する日は遠くないと確信している」と強調した。

 統合的炭素循環観測システム(ICOS)のWerner Kutsch事務総長はGlobal-ERCaN第1回学術交流会で、「多国間で協力して解決策を探し、科学データを共有することは極めて重要だ。共有は信頼を意味しており、信頼があればこそ協力ができる上、世界中で同一基準に従って活動することができる」と強調。さらに「データを共有することで、良い論文とデータを倍増させることができる。世界の他地域の科学者が異なる考えを持っている可能性があり、彼らがより多くの意見を出すことにより、最終的に問題のより良い解決を推進することができる」と指摘した。

 于氏は「Global-ERCaN育成特別プロジェクトは、世界最先端の研究の力を統合し、生態系回復とカーボンニュートラルといった分野において幅広い国際協力関係を築く。世界の同業者と協力して、持続可能な開発分野の学術能力を高め、世界の劣化した地域の持続可能な開発実現に資する管理と政策案を打ち出し、『ダブルカーボン』の目標達成を加速させていく」と説明した。


※本稿は、科技日報「用国际大科学计划解决全球生态难题」(2024年1月2日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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