【06-03】国境を越え、同じ目線で学び合う~上海甘泉外国語中学の姉妹校、城西大学附属城西中学・高等学校訪問記

2006年11月20日

福留 朋美(中国総合研究センター・スタッフ)/馬場 錬成(中国総合研究センター長)

 前号で紹介した上海甘泉外国語中学校は、日本語を第1外国語として選択している生徒が800人もいる。知日家を育てる甘泉外国語中学校と姉妹校の協定を結んでいる東京の城西大学附属城西中学・高等学校を訪問してみた。

 城西中学・高校と甘泉外国語中学校は、2006年2月に姉妹校の文書に調印したばかりであり、実際の交流はこれから始まる。応対に出た東谷仁(とうこくひとし)校長は、「甘泉外国語中学校とは、生徒の交流を通して、過去をしっかり踏まえた上で、50年、100年先の未来を展望する関係を築いていきたいと思っています」とにこやかな中にも力強く語ってくれた。

城西大学附属城西中学・高等学校 東谷仁(とうこく ひとし)校長

姉妹校提携のきっかけは上海の父母会からだった

 甘泉外国語中学との姉妹校提携のきっかけは、2005年12月に上海で開催した城西国際大学の父母会だった。城西中学高校の系列大学の1つである城西国際大学には、現在甘泉外国語中学校から約20人の学生が交換留学生として来日し勉強している。

 その学生たちの父母会を上海で開催したとき、たまたま東谷校長も大学の教師と同行し、甘泉外国語中学校を訪問した。そして劉國華校長と初めて出会った。劉校長は前回紹介したように、穏やかな物腰だが学校経営に関しては素晴らしい能力を発揮している。

 劉校長の印象を東谷校長に聞いてみると、「同年代かなという親しさもありましたが、いかにも有能そうな劉校長に、並々ならぬエネルギーを感じました。大人の風格を備えた懐の深い人。にこやかに話すなかにも確固とした信念を持って行動する姿や校長として教職員を統率する力と実行力には脱帽です」と言う。

姉妹校交流の調印をした 劉国華校長(左)と東谷仁校長(右)

 また、甘泉外国語中学校全体についての印象は、「日本語を第一外国語とする生徒が800人、第二外国語とする生徒が400人いると聞いたときは驚きました。中国にもこのような学校があって、またその教育に共鳴して多くの生徒が集まっていることに敬意を表した次第です。日本から多くの留学生を受け入れ、その留学生のために日本のニュースを自由に見られるよう配慮したり、留学生が日本文化を紹介し交流する機会をたくさん作っていることに感銘を受けました」と語ってくれた。

 学校教育のあり方や国際交流で意見を交換しているうちに2人はすぐ意気投合し、両校の姉妹校提携が持ち上がったのだという。「思い立ったことはすぐに行動に移すところや、いつもにこやかで誰とでも気楽に話ができるところなどは、劉校長も私もとてもよく似ていると思います。これまで上海と東京で2回盃を交わしましたが、幅広い話題で盛り上がり夢を語り合いました。」

 行動は早かった。翌年の2006年2月には、劉校長ら甘泉外国語中学の一行が姉妹校の調印のため、同校を訪ねてきた。東谷校長がニコニコしながら嬉しそうに見せてくれた姉妹校協定文書「友好交流基本協定」は、一瞬、正式な外交文書かと見間違えるほど、立派に装丁された書類になっていた。

国際性を重視する城西教育

昨年の韓国姉妹校との交流会について嬉しそうに話す東谷校長

 同校の教育方針の骨子は、個性の尊重、自主・自立、国際的視野の養成である。国際教育ではコミュニケーション能力を重視した英語教育にも力を入れ、1982年以来24年間、留学生の交換や国際理解協力を積極的に行ってきた。しかしその交流の相手は、アメリカ、カナダ、オーストラリア等の英語圏の国々であり、語学研修が目的の中心だった。父母の中にも英語国民との積極的な交流を希望する人がたくさんいる。

 しかし東谷校長は、「資源の乏しい日本、かつて中国をはじめアジアの国々を侵した日本が、これからの国際社会で信頼され、名誉ある地位を占めようとしたとき、先ず近隣諸国との友好関係を築くことが何より大切だ」と、中国や韓国との交流に関心を持っていたと語る。

 同校は、韓国のソウル市内にある中京高校、瑞草高校と姉妹提携を結んでおり、2002年の日韓ワールドカップ開催をきっかけに、これまで様々な国際交流プログラムを実施してきたという。

 特に、2005年9月に高校2年生全員が、修学旅行で韓国の姉妹校を訪問した際には、日本語を第二外国語で選択する同学年の生徒が歓迎会を開いてくれ代表者同士が「未来を見つめ、友情を築いていきましょう」とメッセージを交換し、これからの両校の交流を誓い合ったという。生徒同士はすぐに打ち解けて、グループごとに自己紹介をし、若者に共通する話で大いに盛り上がり、とても内容の濃い交流会になったそうだ。

 「たった2時間程度の交流会にもかかわらず、別れ際、手を取り合って涙を流す生徒達の姿を見て感動した」と東谷校長は、そのときの光景を思い浮かべるように語ってくれた。近隣諸国にありながら、お互いに歴史も文化も異なる。過去には両国の間で不幸な出来事もあった。

 「しかし若い世代が歴史的な出来事を学びながら、同じ目線から過去を学び未来を展望する交流を行い友情を築くことは、国際社会に必要不可欠なことであるということを実感した」と語ってくれた。

取材中の東谷校長(右)と馬場中国総合研究センター長(左)

同じ目線で過去を学び、未来を展望する

 戦争体験もないし過去の歴史的な出来事にも実感を持っていない生徒たちだが、韓国へ修学旅行に行ったときには、戦争体験を韓国の人に語ってもらったり、国内の戦争体験者からも話を聞く機会を持っているという。

 そのような体験を通して、若者たちが同じ目線で理解しあうことが大事だという教育方針だ。

「急速にグローバル化が進む社会においては、東アジアなど日本の近隣諸国との友好的関係を築くことが、まずなによりも必要不可欠であると私は考えます。特に両国の若者達には、これからも国境を超えて、同じ目線で過去の歴史や未来を学び合えるような関係を、ぜひ築いてもらいたいと思っております。」

 甘泉外国語中学校との姉妹校提携を、心底嬉しそうに語る東谷校長は、気さくで優しい瞳をした、いかにも生徒想いの先生という印象を受けた。土日に学校説明会や父母会を行うなど、自らも精力的に仕事をこなす姿は、とても世間一般の堅苦しい雰囲気の校長先生のイメージとは異なり、どちらかといえば仲の良い担任の先生と話しをしている、といった感じの親しみやすい雰囲気だった。

 相手を知り、相手に知ってもらうことをテーマとした城西中学高校の国際理解教育は、東谷校長の「生徒たちがこれまでとは違った無限の未来へ飛翔するステージを作りたい」という願いから来ているのかもしれない。

 いま、甘泉外国語中学校との交流にそなえ、中国語の講座を検討中とのことだ。来年9月には100人以上の生徒が修学旅行で上海甘泉外国語中学校を訪れ、現地の生徒とのさまざまな交流プログラムを実行させようと計画しているそうだ。

 また感動的なドラマが生まれるだろう。国境を超えて笑顔のコミュニケーションを楽しみ、言葉や文化の壁を越えた友情を深めてほしい。


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