【06-04】地域の絆が育てた国際交流、我らが町の多彩な国際理解教育~上海甘泉外国語中学の姉妹校 大阪市立勝山中学校訪問記

2006年12月20日

福留 朋美(中国総合研究センター・スタッフ)/馬場 錬成(中国総合研究センター長)

 上海甘泉外国語中学は、東京の城西大学附属城西中学・高等学校だけでなく、大阪の勝山中学校とも姉妹校協定を結んでいる。今回は、勝山中学校の国際交流活動を報告したい。

 勝山中学校と甘泉外国語中学校の交流は、6年前にはじまった。平成13年7月12日に正式な姉妹校協定を結び、以来、短期交換留学や作品交換などさまざまなプログラムを通して甘泉中学との交流を深めている。

図1

物心両面で支える地域の人々

 同校の中野道治校長先生の話によると、甘泉外国語中学との姉妹校提携のきっかけは、前任の藤井俊弘校長先生が国際交流を実践したいという願いを当時のPTA会長美作文彦氏より伝えられ、当時PTAのOB会長だった谷川和生氏に呼びかけ、協力を要請したことからはじまったという。

図2

 「さまざまな活動を展開する勝山中学校の特色ある教育に対して、地域の人々は物心両面で温かく支えてくれます。そのおかげで生徒たちは、甘泉外国語中学との国際交流を始めることができたし、勉学に励み、運動会や文化発表会などの学校行事でもクラス・学年全体が力を合わせ、取り組むことができます。勝山中学校が教育環境もよく、明るく楽しい雰囲気のある学校なのは、勝山中学校の保護者・周辺地域のかたがたのご協力のおかげです。」

 と、このような勝山中学校の活動は、周辺地域との連携のもとで展開されていることを中野校長先生は強調する。

 今回の取材で、筆者がはじめに驚いたことも、この地域の人々の勝山中学校に対する並々ならぬ援助ぶりだった。

 地域代表の谷川和生氏に話を聞いてみると、勝山中学校の周辺地域である勝山地区や東桃谷地区は、昔から住民の移動が少なく、長年ここに住む人々が多いため、勝山中学校の生徒の父母、祖父母もこの学校を卒業している人がたくさんいるということだ。

 そのため、人と人との間に昔ながらの温かい絆があり、勝山中学校が子どもたちのために国際交流をしたいと願えば、すぐに周辺地域全体が「我らが町の国際交流」と一体となってそれらを成功させるために尽力するのが当たり前なのだそうだ。谷川氏自身も勝山中学校の卒業生である。まさに地域密着型の中学校だ。

 では、実際どのようにして甘泉外国語中学との姉妹校提携を実現させてきたのだろうか。詳しい内容を谷川氏に聞いてみることにした。

 谷川氏は、中国とは25年前から竹の割り箸のビジネスでかかわっており、当時、上海に自社工場をもっていた。勝山中学校の前任の藤井校長先生から国際交流をしたいという強い呼びかけがあったとき、母校の勝山中学校に通う子どもたちに「ぜひ外国を理解し、興味を持ち、視野を広げてほしい」と率先して取り組み、それらを具体化させるため、さまざまなプランを当時の校長先生、PTA会長とともに計画・実行させてきたという。

「おっちゃん」という言葉に感激

 まず、最初に、衆議院議員の中馬弘毅氏に上海の優秀な中学校を紹介してもらった。

 平成13年3月27日、藤井俊弘校長先生と甘泉外国語中学を訪問して仮調印を行った。そして、帰国後、国際交流推進委員会を設置し、その年の7月12日に甘泉外国語中学の代表団が勝山中学校を訪問し、正式な姉妹校提携調印式を行い、短期交換留学や作品交換などの交流が始まった。

 「最初の交流時に様子を見に上海甘泉外国語中学へいったとき、子どもたちが、"おっちゃん"と親しみを込めて言ってくれた時の顔を見て、感激して、やって良かったと思った。」と顔を赤らめながらも嬉しそうに語ってくれた。

 また、長年中国での仕事にかかわってきた経験から「中国の人はイエス、ノーがはっきりしている。謝罪もしない。侵略された歴史から、謝罪をすると全部自分の責任になるという意識が強い。日中の文化や意識の違いが分かった。」という。

城西大学附属城西中学・高等学校 東谷仁(とうこく ひとし)校長

 また、甘泉外国語中学と勝山中学校の国際交流についても、「上海に行くと半分は学校の寮に、半分はホームステイをする。中国の子どもはみな一人っ子なので、兄弟ができたみたいだととても喜んでくれる。甘泉中学の子どもたちは、帰宅してからもよく勉強していて、進学、上昇志向が強いようだ。」と語ってくれた。

 また、劉国華校長先生について中野校長先生に印象を聞いてみると、「劉校長先生は学校経営に格段の手腕を発揮するすばらしい能力をお持ちのかたです。急速に発展を遂げている中国を支える若い人材育成に、情熱を燃やしておられます。日本語を第1外国語にして学校の特色を出し、日本に生徒を留学させることを目標しておられます。校内に日本庭園を造ったり、桜の木を植えたり、『桜まつり』と銘打って日本文化を全生徒に紹介するなど、好日家を育てるための努力をあらゆるところで発揮しておられます」という。

 甘泉外国語中学については、「学校全体が日本について関心を持っており、生徒の多くが日本の大学に留学するという目標をはっきりさせています。私たちが甘泉中学を訪問するときは熱烈歓迎で迎えてくださり、勝山中学校との交流は目標をかなえるためにも大切であると考えている生徒がたくさんいます。」と語ってくれた。

相互の代表が訪問する交流が始まった

  勝山中学校にも甘泉外国語中学へ短期留学を希望する生徒がたくさんいて、皆甘泉中学の生徒たちの勤勉ぶりに、とても刺激をうけているという。

 同校では、平成14年3月24日から30日まで、甘泉外国語中学に第1回の体験留学生を派遣した。生徒2人、職員2人が、授業体験をしたり甘泉外国語中学の校庭で毎年行われる「桜まつり」などの行事に参加した。

 続いて平成15年3月25日から31日まで、第2回の代表団を派遣した。生徒2人、職員2人で、勝山中学校の生徒の作品を展示したり授業に参加し、甘泉外国語中学敷地内の寮生活体験などで交流を深めた。翌年平成16年3月には職員2人を派遣して、また、平成17年3月24日には、生徒4人、教師3人を派遣し、授業体験や「桜まつり」などの行事に参加している。

 実際に短期留学へ行った同校三年生の河瀬夏絵さんと榎本真美さんに話を聞いてみた。

写真4

 河瀬さんと榎本さんは、平成17年、中1の春休みに上海に一週間滞在し、甘泉外国語中学校の寮に泊まりながら、実際に中国の生徒たちと一緒に授業を受け、中国の中学生の生活を実体験した。

 河瀬さんに「甘泉外国語中学は、どんな学校でしたか?」と質問すると、

 「皆とても勉強熱心で、毎日45分授業を8時間こなしていました。休み時間は遊んでいますが授業になるとすごい真剣になって、その切り替えの早さにビックリしました。実際の年齢は私たちより1つ下なのに、日本の高校一年生レベルの授業をやっていて、自分も勉強しなきゃなあって思いました」と答えてくれた。

 また、榎本さんに「甘泉外国語中学の生徒と、どうやってコミュニケーションをとりましたか?」と聞くと、

「紙に文字を書いて、手紙の交換みたいにしていました。言葉は通じなくても、いっぱいコミュニケーションをとることはやっぱり一番大事だなあって思いました。国が違うのでたびたび会うことは無理だけど、今後も手紙などで連絡を取り続けたいです」とニコニコしながら話してくれた。河瀬さんも榎本さんも、明るくとても素直な受け答えをする勉強熱心な生徒さんという印象を受けた。実際、勝山中学校の生徒は皆、勉強熱心な子が多いという。

写真5

猛勉強する中国の生徒たち

写真6

 彼女たちの短期留学に同行し、仮調印式や「桜まつり」などにも参加した生活指導担当の川田浩二先生は、「生徒たちの人生において、はじめての経験であり、甘泉外国語中学との国際交流は、生徒たちが日本を見つめ直すよいきかっけになると思います」と語ってくれた。

 このような交流が進むうちに、彼女たちの保護者のなかには、この交流によって、子育てなどについて中国側の保護者とメールで意見を交わす保護者もいるそうだ。

 河瀬さんと榎本さんの保護者のかたがたにアンケートをお願いしたところ、榎本さんのお母さんからは、「中国では、教育に関してはとても熱心で朝早くから授業がはじまり、家に帰ってからも遅くまで自力で勉強していることにとても感心しました。また、中国語が話せなくても、言葉や想いが伝わり、子供たちはすぐに友達をたくさんつくれることに感動しました。メール交換をしている以前ホームステイさせていただいた中国のお母さんからは、機会があれば日本へ来て、東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行きたいといわれます。」と、とてもほほえましい交流の様子が書かれてあった。

 一方、河瀬さんのお母さんからは、「とても疲れて帰ってきましたが、中国での出来事を、1つずつ目を輝かせながら、楽しかったこと、少しガマンしたこと、驚いたことなど、イキイキと話す子どもの姿を見たとき、この交流をさせてよかったなと心から思いました。これからもチャンスがあれば、またいろいろな経験をして、いろんな文化を学習してほしいです。」という。

 子どもだけでなく、保護者同士がメールを交わすということは、それだけ両国の保護者同士がお互いの国に興味を示し、交流に意欲的であるという証拠である。子ども同士がいくら国際交流をしているといっても、親は実際のところ実感がないというのが普通だと思っていただけに、筆者にはとても新鮮な話に聞こえた。

 日中両国の保護者の世代も変わって来ているのかもしれない。今後、このような保護者がどんどん増えてくれればいいと心から思った。

 来年の平成19年3月25日から、勝山中学校の生徒4人と教員3人が甘泉外国語中学へ短期留学として派遣される予定だ。生徒の作品を甘泉中学の『桜まつり』で展示し、甘泉中学との友好交流をさらに発展させると、いまから楽しみにしている。

 また、上海甘泉外国語中学からの体験留学生の受入も積極的に行っている。

 これまで、平成14年7月11日から一週間の日程で甘泉外国語中学から派遣団が勝山中学校を訪問した。生徒2人、職員3人で、勝山中学校は生徒会主催の歓迎会や、授業参加、校区内でのホームステイ体験などで全校をあげて歓迎し交流を深めた。

 平成16年7月11日から一週間のスケジュールで、甘泉外国語中学より、派遣団が勝山中を訪問した。生徒2人、職員2人で授業を体験したり、ホームステイで日本の家庭生活を楽しんだり市内見学などを行った。最終日の生徒会による歓送会では、全校生徒とともにビンゴゲームを楽しみ大いに盛り上がった。

 平成18年7月10日には、生徒4人と教員2人を受け入れた。授業体験、中国語授業、ホームステイ、奈良・京都見学・ユニバーサルスタジオ・ジャパンなどの観光を行い、盛りだくさんのプログラムに訪問団との交流はますます深まったそうだ。

 両校ともが熱烈歓迎の仲といえる。

写真7

国際交流資金を調達する「勝中祭」の実施

 このような国際交流の資金はどのように調達しているのだろうか。勝山中学校は公立中学校であるため、国際交流費用については自前で調達しなければならない。体験留学生の派遣や受入れ、作品交流、文通などで国際交流を進めていくなかで、航空運賃や郵送費などの費用がどうしても必要となる。

 そこで、勝山中学は国際交流の基金を作るため、毎年10月最後の日曜日に地域の人々が中心になって、「勝中祭」というフェスティバルを開催している。運営資金確保のために、バザーや模擬店を中心としたイベントを行うなど、学校教職員と生徒・保護者・地域が一体となり、ここでもまた学校と地域の連帯感が生まれた。

 第1回勝中祭は、平成14年11月2日に開催したが、国際交流推進委員会とPTAが中心となって勝山中学校、東桃谷小学校、勝山連合町会、東桃谷連合町会などに広く呼びかけ、生徒、保護者、地域の住民など多数の参加があって盛大な行事になったという。

 第2回勝中祭は平成15年11月1日に開催されたが、フリーマーケットや模擬店を中心としたイベントを運動場で開催し、ポスター、チラシなどで地域に幅広く呼びかけた結果、校区内はもちろん、校区外からもフリーマーケット出店の希望があり、当日は、天候にも恵まれ子どもからお年寄りまで予想以上の参加があり、ますます拡がりを見せた催し物になったそうだ。

 このフェスティバルは、勝山中学校の周辺地域である勝山地区と東桃谷町の両連合町会が積極的に協力してくれ、地域町会の防犯支部の方々が駐車や交通整備に全日協力してくれた。青少年指導員が出店やコンテストを実施してくれるなど、毎年純収益で約40万円の資金が集まるそうだ。それらをすべて国際交流に寄付し、甘泉外国語中学への旅費をまかなうことができる。

 地域代表の谷川氏は、この「勝中祭」を両地域の一番大きい催しの会にしたいという。

 また、毎年11月になると、勝山中学校では文化発表会を開催し、作品交流展示会を実施している。このときに、甘泉外国語中学の生徒の書道や絵画などの美術作品を多数展示することが恒例となった。

 中野校長先生は、「書道や絵画等にすばらしい作品が多数あって文化のよさを感じている。」と語ってくれた。

写真8

 勝山中学校の教育方針は、「生きる力」をはぐくむ教育活動を推進することにある。一人一人の人権を尊重し、豊かな人間性を育み、『学び』が育つ集団育成を推進することを、教育目標として掲げている。そのなかでも、特に勝山中学が重要視しているのは、家庭・地域との連携である。

 今回の取材に応じてくれた中野校長先生、地域代表の谷川氏、生活指導担当の川田先生、生徒の河瀬さんと榎本さんすべてから、とても心地よい「我らが町」文化を感じた。このような地域の絆が、生徒たちの『学び』を育て、豊かな人間性を育て、一人ひとりを尊重し、「生きる力」をはぐくむ教育活動を実現させるのだろう。また同時に、このような「文化のよさ」も中国の若者たちへ、甘泉外国語中学との交流をとおして伝えているのではないかと感じた。

 中野校長先生は「甘泉中学との国際交流がうまくいっていることをとても誇りに思っています。政治・思想の違い、宗教の違いなどを乗り越え、また、認め合いながらお互いのよさを理解すること、相手国との交流を通してそれぞれの文化のよさをあらためて再認識できることに、甘泉外国語中学との交流の意義深さを感じております。」と語る。

 自国の文化を異国のひとが美しく表現してくれる喜びに風情を感じ、素晴らしいものだと思える感性を、これからも日中両国の若者たちに大切にしていってもらいたい。

photo9

 


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