【08-05】細かな所から人生を見る—冬日雑記

柯晨峰(大阪大学大学院「博士課程大学院生共同養成プロジェクト」国費派遣留学生)  2008年3月20日

葉が枯れて落ち、風と共に去っていった、
心配しないで、
来年の春には又、緑になるから……

 同じような冬、1杯の熱いお茶を両手で持ち、窓の外も同じように風が吹き渡る。でも、ここは異国の地、嵐山の葉も香山と同じように赤く色づいているのだろうか?

4か月前

  飛行機が関西空港に着陸した。北京と同じような快晴である。日本語は話せないが、漢字と英語の表示板があり、支障なく税関を通過した。森・准教授に電話を掛けると、伊丹空港まで迎えに来てくださるという。 

 伊丹空港行きのバスに乗る時、重い荷物を老人が運んでくれることになった。しかし、大変そうなので一緒にバスの指定区域まで運んだ。不思議である。老人がなぜ肉体労働をするのか? 

 伊丹空港までの所要時間は80分。この時間を利用し、新しくやって来た土地を窓から眺めるとしよう。好奇心に満ちた時、バスは早くも着いてしまった。 

下車すると、日本国籍の蚊にキスされた。出迎えにきてくれた准教授に、「日本の蚊は外国人をいじめるのが好きなのかな」と冗談を言ったら、笑いながら「申し訳ない」と言われた。

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自己紹介

 「Nice to meet you」と声を掛け、研究室にいる日本の全ての学生と知り合った。「I come from nankai university, China. I will stay with you for one year」私は中国政府から公費で派遣された共同養成の博士課程院生である。大阪大学工学部応用化学専攻・井上教授のこの研究室で新たな1年の研究生活を 送ることになる。

 人生とは所詮、衣・食・住・足(交通)であるが、私には更に研究室がある。

衣編

 日本の衣料品や装飾品には余り関心がないが、ちょっとしたことが深く印象に残った。研究室の一部の学生が会議に参加する際、背広に着替え、正装で 出席したのである。この点については、論文を発表する必要がない限り、他の国ではそれ程重視されていない。日本人は以前の中国人と同じように、それぞれの 場に合わせてどのような服を着るのかを非常に重視しているのかもしれない。そのほかに、日本は完璧に自分たちの民族衣装—和服を保存している。

食編

 中国人が最も幸福になるのは八大料理系統が目の前にあり、数え切れない程の料理が並ぶ時である。中国南部で育ち、中国北部で学んだ私は、日本料理 と広東料理に幾つかの似ている点があることに気付いた。日本料理は特に手が込んだものが多く、涎が出てしまう。広島風お好み焼き、大阪風うどん、出石風そ ば、天ぷら、たこ焼きに新鮮な刺し身・寿司等があり、どれをとっても新鮮・滑らか・爽やか・柔らかという日本料理の特色を備えている。日本の料理の色は中 国のようにバラエティーに富んだものでないが、それぞれに工夫が凝らされ、賛嘆してやまない。しかし、美しいとはいえ、物足りない点があり、それは1つ1 つの料理の量が中国よりもずっと少ないことだ。私にはしばしば「猪八戒が朝鮮人参を食べて、有り難味を知らない」と感じたことがある。

住編

 私が住んでいるのは大阪府の留学生会館だが、これ以前に何度か転居している。建物は特に珍しいものでないが、ゴミの分別収集に深い感銘を受けた。 大体どの地方でも、ゴミは3種類に分けて収集され、ゴミ袋の色は都市によって異なる。最大の違いは日本がゴミ処理有料制度を実施していることであり、冷蔵 庫、椅子、電子レンジのような粗大ゴミは捨てる時に料金を前払いする必要がある。中国人の考え方と大きな違いがあり、私はゴミ問題に対する認識が一変し た。

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 11月の工学部見学会で、私は舞州工場を参観し、日本の資源リサイクル率の高さに大きな感銘を受けた。中国ではエネルギーの消費を全く考えておら ず、粗放式の発展モデルは憂慮すべきものだ。この他、日本では再生紙を大量に使用しているが、わが国では紙のリサイクル率がかなり低い。日本の森林被覆率 が中国よりもずっと高いことを知らなければならない。

足(交通)編

 1日目は准教授が自分で車を運転し、迎えに来てくださった。翌日、私はスクールバスで吹田キャンパスと豊中キャンパスの間を往復した。3日目には モノレールを利用し、続いて乗ったのは阪急電車、JR電車及び地下鉄である。大阪は都市交通が発達し、電車もかなりの輸送量を引き受けている。このため、 たとえ道路であっても、上下8車線を有する中国の都市に比べ流れがスムーズで、環境が保護されている。日本は鉄道旅客輸送の役割を最大限に高めた国だ。都 市の商業センターはしばしば鉄道駅の周辺に設けられ、こうした都市計画はかなりの特色がある。各鉄道駅は1つ1つの関節のようであり、素晴らしい弾力性と 重要性を備えている。同時にまた、資源を最大限利用することができる。日本という資源の乏しい国だからこそ、こうした省エネの計画が生まれたのか。それは わからない。

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 日本の電車は自動券売システムを全面的に採用している。こうした手段は大阪のような大都市にとって非常に効率が高いと思われる。日本語を話せない 私にとっても、面倒な手間を省くことができる。1枚1枚の乗車券は、私が巡り歩いた各地の都市を証明するものである:大阪、東京、神戸、京都、奈良、姫 路、城崎、竹野、広島……

研究室編

 毎朝9時、私は阪大工学部応用化学専攻というこの鉄筋鉄骨建ての建物に入り、研究作業を開始する。夜になると、星空を眺めながら帰宅する。実験室 に来た当初に、私にとって最も必要なのは各実験室の暗黙のルールに適応することであった。なぜなら、化学は手を使う学問であり、計器の配置・使用・洗浄等 の手順及び各方面の調整が作業の効率と作業に取組む情熱に影響するからだ。研究室の学生は英語が流暢であるか否かを問わず、皆辛抱強く私がわかるまで説明 してくれた。もし私が唯一の外国人学生でなかったら、皆はこのプロセスを何度も繰り返してくれただろうか、と好奇心が湧いた。

 化学はプロセスが面倒で厳密なものであり、この点は指導教官の井上教授と私達が討論会を開いた時に身に沁みた。最初の討論会で、私が約15分間話をした 後、井上教授から質問を受け、和田教授も条件について盛んに質問された。教授方は化学反応について非常に詳しく理解されており、温度とか、パーセント収率 とか、緩衝液の濃度とか、pHとか、たくさんの質問を出された。私は大いに感激した。わが国では、グループ内の教官が私の実験の細部について完全には理解 していなかった。最後にデータ結果を並べると、井上教授は「君はその得たデータをどう解釈するのか」と尋ねた。だらだらと一通り述べたが、井上教授は私の 解釈に満足せず、私の分析に手を貸してくださった後、はっきりしない細部について再び質問された。科学研究の良き習慣、厳格な科学的態度、正確な分析方法 は私が研究室で得た最大の収穫である。「人に魚を与えるよりも漁の仕方を教えたほうがよい」のだ。

 井上教授ら数名の教師は科学研究に対し、非常に厳格な態度をとっていらっしゃるが、生活面では非常に暖かみがあった。普段、日本の教授はとても忙しく、井 上教授も例外でない。しかし、阪大に来たばかりの頃、井上教授は私の日常生活について細かく気を配られ、安いホテルの予約とか、会館への引っ越しとか、さ らには会館の家電製品が正常に作動するかどうかのチェックまで手伝ってくださり、その上、私を車に乗せ、学校から会館までのルートを教えてくださった。日 本人のきめ細かな態度に感心し、また、感動した。

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 研究室の学生はいずれも日本人だが、幸いなことに助教を務める中国の楊先生がいた。外国で中国人に会うと、格別な親しみを覚え、楊先生も私が日本での生活 に早く溶け込めるよう助けてくれた。科学研究の面で、楊先生は私に課題の細かい点の指導を与え、2人でよく活発に討論したものだ。平日には、日本の美味珍 味を食べによく一緒に出掛けた。彼は私の真の教師であり友人でもある。

 研究室の日本人学生は非常にエネルギッシュであり、味気ない研究生活に色取りを添えてくれる。モスバーガーでアルバイトしている氷見さんは多くのハンバー ガーを持ち帰ることが多く、皆でハンバーガー・パーティーを開いた。小寺さんはどこからか非常に辛い唐辛子味のAFTER DEATHソースを探してきた。これはゲームで負けた人に罰を与える格好の代物となった。沢さんは毎日もの静かに座っているが、お酒の話になると非常に喜 び、延々と喋り続ける。深沢さんと東野さんはいつも美味しいカレーライスを皆にご馳走してくれる。清水さんはまだ4年生だが、クリスマスパーティーを開い た時、可愛いサンタクロースに変装した……こうしたことを思い出す度に、楽しい気分になり、悩みなど吹っ飛んでしまう。

結びの言葉

 異国の地にあっても、孤独を感じたことはない。異郷にあっても、同じように 足取りは軽やかである。日本人のマナー、きめ細かさには照れることも多いが、親しみを感じる。同じように漢字を使用する民族であり、私達の間には多くの似 通った点があるが、異なる面も多い。星空を見上げれば、永遠に同じものだ。同じように穏やかな月の色を観賞し、同じように安らかな月の光を浴びる……

柯晨峰

柯晨峰:

略歴

04年7月南開大学化学学院卒業。
04年8月〜07年7月南開大学大学院博士課程で著名な学者劉育教授に師事し、超分子化学を学ぶ。 
07年8月〜現在、「博士課程大学院生共同養成プロジェクト」の国費派遣留学生として、大阪大学工学研究科応用化学専攻井上佳久研究室に留学。 
04年〜現在、劉育教授の指導の下に国家973重大研究プロジェクトに参加。世界著名な化学雑誌『J.Am.Chem.Soc.』(2篇)、『J.Org.Chem.』(2篇)『 Chem.Comm.』(1篇)に論文を発表した。


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