【13-01】Ⅰ.中国高等教育の発展と背景

2013年 5月22日

宮内 雄史

宮内 雄史:東京大学北京代表所所長

略歴

1947年 川崎市生まれ
1971年 東京大学教養学部教養学科卒(専門:米中関係)
1973年 三菱商事株式会社入社
1974年―1976年 シンガポール南洋大学で中国語研修
1978年―1981年、1983年―1987年 北京に駐在
1997年 業務部中国室 室長
2000年 日本貿易会・国際社会貢献センター 事務局長
2004年 三菱商事(上海)有限公司 総経理室長
2007年 東京大学北京代表所 所長

1.中国の大学生の歴史的位置

 戦後の中国には三回の大きな人口の塊があり、現在の大学生は3回目の塊の後半部分にあたる。

 1回目は、戦後1949年に中華人民共和国が成立してしばらくの、1952年あたりから数年間の安定した発展時期に出生した層。現在の年齢は61歳~55歳頃になる。2回目は1962年から1973年にかけての12年間で生まれた3億人と言う巨大な人口の塊。現在は50歳~39歳になっている。3回目は、1981年~1995年までの15年間に毎年2000万人前後或いはそれ以上が出生したもので、その数、合わせて約3億人。現在の年齢では32歳から18歳となる。(図1)

図1 中国の年齢別大学卒、中高卒者数

図1

 1回目の塊で大学へ進学出来たのは0.5%以下であった。2回目の塊世代では合せて約600万人余、大卒者は50人に一人であった。

 それが一変し始めるのは1999年の事で、この年の大学入学者数は前年より一挙に50万人増えて160万人、それ以降毎年同様のペースで増加し、今や一年で680万人が大学に入学するようになった。(図2)同年次青年の35%である。今後幼児・少年人口の減少に伴い、大学入学者数が現在程度で変わらなければ、この進学率は40~50%に高まって行く見込みである。

 そうして見ると、既にこの10年間で4400万人の大卒者が生まれたのに加え、今後10年間で更に7000万人、20年間では1.5億人もの大卒者が社会に出て行く事になり、中国社会・国際社会に対し、極めて大きなインパクトを与える可能性がある。

 今後の中国では、これまで30年間中国経済の急成長を支えた、労働集約型産業とエネルギー多消費型産業に代わる、新たなリーディング産業の発展が必要になっている。グローバル社会での中国の存在感も大きさを増している。大卒者の比率が大きく増えた中国の青年層は、その担い手として、大きく登場しつつあると言える。

図2 中国の各年大学入学者数

図2

2.財政サポートの伸び

 中国の政府税収の圧倒的な伸びと、教育予算・科学技術予算重視に支えられ、中国の重点大学の施設は極めて充実したものになったし、新たな研究プログラムも多様に展開されている。

 日本では、中国の政府予算が発表されるたびに軍事予算が毎年二桁の伸びを示している事に関心が集まるが、実際には中国の予算規模そのものが毎年二桁の伸びをしているのであり、教育費や科学技術関係費は軍事予算を上回る伸びを示している。この10数年来、国家予算に占める軍事費の相対的比率は低下しており、教育費・科学技術関係費の方は比率も増加している。かくして、21世紀に入ってからだけでも、11年間で教育費は7倍に、科学技術費は8.5倍となった。(図3)

 又、予算の増加は、日本のような国債発行に頼るものでは無く、税収の大幅な伸長によるものである。税収はこの11年間、日本では略横ばい、中国は7倍となっている。(図4)

図3 中国国家予算の教育費・科学技術費

図3

図4 中国・日本の税収入額推移

図4

3.歴史的伝統を持つ中国の有力大学

 中国社会は、この百数十年、大変な混乱と変動の中にあり、教育や大学も翻弄され続けて来たと言える。北京大の設立は1898年、清華は1911年、他に復旦・南京・上海交通・浙江大学等、中国の有力大学の多くは今を遡ること100年以上前、清朝末期に設立されていた。(図5)

図5 中国の主要大学創立時期

図5

 日本軍占領時代は、これらの大学は奥地へ逃避し、例えば北京大の校舎は日本軍の憲兵隊本部に、清華のキャンパスは野戦病院にされた。避難した北京・清華・南開大学は、“西南聯合大学”を結成し、昆明で戦争の最中を生き延びるが、その卒業生がアメリカに渡り、中国系の人間として初めて、楊振寧・李政道の2氏が共同でノーベル物理学賞を1957年に受賞したりしている。

 更に、中華人民共和国の成立後、1952年、新中国ではソ連の大学体制に倣って、社会のニーズに直結する単科大学制へ向け、全国の大学を全面的に再編成した。総合大学であった清華は、工学系のみを残し、理系、即ち物理・化学・生物・数学等は文系とともに北京大の方へ統合され、北京大は文理系大学となった。別途に医学・農学・法学・地質・航空・鉱山等の独立した大学が設立された。全国的にも、浙江・上海交通・天津大学などは工学系、南京・復旦・南開・四川大学などは文理系となった。これら大学が再度総合大学化を図って行くのは1980年代以降である。(図6)

図6 1952年の全国大学再編(北京・清華の例)

図6

 1966年に始まった文化大革命は大学が発端の場でもあり、全国の大学が10年近く麻痺状態に陥ったことは記憶に新しい。

 こうして振り返ってみると、教育は100年の大計とされるが、中国の大学は大変多くの曲折を経て今日、漸くにして2500万人の在学生を擁する安定した発展の地に辿り着いたと言える。(図7)21世紀の経済産業は人材こそがリード役を果たすとされている。中国の大学と、そこから排出される青年たちが、今後の中国の動向を一層力強く支えて行く事になると見られる。

図7 中国の大学・学生の規模

図7

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