【13-02】Ⅱ.中国人留学生・中国への留学

2013年 5月27日

宮内 雄史

宮内 雄史:東京大学北京代表所所長

略歴

1947年 川崎市生まれ
1971年 東京大学教養学部教養学科卒(専門:米中関係)
1973年 三菱商事株式会社入社
1974年―1976年 シンガポール南洋大学で中国語研修
1978年―1981年、1983年―1987年 北京に駐在
1997年 業務部中国室 室長
2000年 日本貿易会・国際社会貢献センター 事務局長
2004年 三菱商事(上海)有限公司 総経理室長
2007年 東京大学北京代表所 所長

1.海外への留学

 2012年、留学の為に中国を出国した学生は約40万人、海外留学中の中国人学生は合わせて110万人程となった。これは、海外にいる日本人留学生6万人の18倍の規模であり、世界の留学生数の20%程にもなる。(図1)

 アメリカに於いても、この数年の増加は特に著しく、インド人を抜いてトップになり、アメリカの全外国人留学生の25%を占めるほどになった。(図2)

図1 中国人留学生各年出国者数

図1

図2 アメリカ在学中の留学整数

図2

 一時は海外へ留学したまま戻って来ない人材を中国本国に呼び戻そうとの動きや主張が高まったが、一巡感とともに、中国自体が更に大きくグローバル化して行く中で、海外に居着いたまま中国と何らかの関係を保つ事でも、中国にとって有用な人材であるとの認識も強くなっている。

 中国の各有力大学では、全学生が在学中に一度でも海外経験(短期長期留学、交流訪問)を持つ事を方針として掲げ、それを機に卒業後海外へ留学するのも積極的な事として認識しサポートするようになっている。

 大量の留学生の中には、偽の語学証明書で留学は出来たものの、実際には言葉も通じず勉強もしないまま遊興に耽るような問題等、種々発生はしているものの、全体としては海外で高度な学歴を取得する中国人留学生が膨大な人数になりつつある。

 アメリカでは年間博士号を取得する学生は約5万人、そのうち外国人は1.7万人であるが、中国人が5000人、インド人2200人、韓国人1500人、日本人は330人である。出身大学のランキングでは、アメリカの大学を抑えて、清華大学がトップ、北京大学が2位となっている。(図3)

図3 アメリカでの博士号取得者数

図3

 日本人のノーベル賞受賞者の例からも、発明発見から受賞までは2-30年の時間がたっており、最近アメリカなどへ大量に留学している中国人学生の中から将来ノーベル賞を受賞するような人材が輩出される可能性も十分有り得ると見られる。(図4)

図4 中国系ノーベル賞受賞者

図4

 こうした大量の中国人留学生の動向は、将来毎年4-50万人もの海外留学を経験した中国人青年たちが、中国の国際的な接点で活躍を始めて行く事を示しており、従来の華僑とは又異なった、新たな国際的人的ネットワークが形成されて行くものと見られる。

 又、現在海外に学ぶ110万人もの青年達は、ソーシャルネットワークを通じ国内の友人・知人達に膨大な海外の現地情報を提供しており、マスコミや公式発表などとは異なったレベルで、中国の広範な青年達が、海外の多様な情報や知識を直接吸収出来ている事も、中国の今後の発展や国際化にとって極めて大きなインパクトを持つものと見られる。

2.中国への留学生の増加

 他方、中国への留学生受け入れも急増している。10年間で、日本では外国人留学生が2倍に増加し16万人程になったのと比べて、中国では一挙に6倍に急増し、2012年は日本の倍の32万人となった。(図5)

図5 日・中への外国人留学生推移

図5

 日本への外国人留学生の6割は中国人、2割が韓国人であるが、中国への留学生中、日本人は6%、韓国人は20%である。特に、日本へはアジア諸国からが大半であるが、中国へはアジア諸国のみならず、欧米からの留学生も急増している。アメリカ人、フランス人、ドイツ人、何れも日本へ来ている人数の10倍以上となった。インドも15倍、ロシアなどは40倍程になる。中国のトップ大学のキャンパスを歩いてみれば、日本の大学などよりも遥かに国際的で多様な人々が見られる。(図6)

図6 出身国・地域別留学生数

図6

 日本へ来た留学生は知日家になるのと同様、中国へ来た留学生は知中国家になるであろう。してみると、今後アメリカに於いても、ヨーロッパ諸国に於いても、知日家と知中国家の比率は10倍以上の開きになって行く事が示唆されている。(図7、8)

図7 アメリカ人留学生・日中両国への人数

図7

図8 フランス人留学生・日中両国への人数

図8

 外国人留学生の留学目的も、中国語研修にとどまらず、正式に学位を取得するコースへの留学生が増加しており、各大学とも英語コースを含め、留学生受け入れ態勢を急拡大している。中国文化・中国経済・中国法等中国関係の他、例えば、医学分野では英語で医学教育を受け医者資格取得を可能にする留学生向けコースがあり、約40大学に毎年5000人程の外国人学生が来るようになっている。トップ大学には殆ど英語によるMBAコースがあり、ここにも多くの留学生が来ている。工学系では情報・コンピューター関連への留学が多い。(図9)

図9 中国への外国人留学生(分野)

図9

 かくして、中国へ向けての世界各国からの留学生の増加は、上記海外への中国人留学生の増加と相まって、今後中国を核とした世界的な人的ネットワークが広く形成されて行くであろう事を示唆している。

 そうした点で言えば、少しでも多くの日本人学生が中国のトップ大学に留学し、中国の大学の卒業生・同窓生として、国際的に形成されるこうした人的ネットワークに直接入って行けるチャンスを掴む事も、今後の日本の国際化を展望して行く上で大変有為な事と言えよう。


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