【16-06】1200年の中国伝統芸術「皮影戯」で日中を繋ぐ劇団影法師 柴廣義さん

2016年10月24日 取材・文・写真:茉莉花(フリーライター)

柴廣義

柴廣義: 中国国家二級舞台美術設計士

 1976年、中国河北省唐山市芸術学校にて舞台美術を学び、1977年、唐山市皮影劇団に入団。 皮影戯の舞台美術、人形デザイン、テレビドラマ・広告等の製作を手掛ける。1996年に来日。 株式会社劇団影法師の文芸美術部に所属し、日中合作皮影戯「西遊記」・「杜子春伝」を始め、数々の皮影戯の人形・舞台美術を製作。 2002年には、NHKみんなのうた「夏恋花」の美術製作。他 にもPC等を使った印刷デザインや美術講師としても活躍中。又、中国清時代の皮影戯を現代に蘇らせるべく人形の復元に取組んでいる。国内外の美術展にて多数受賞歴あり。

 2011年ユネスコ世界無形文化遺産に登録された中国の影絵劇 皮影戯。およそ1200年前の唐の時代の紙人形による影絵芝居がその原型であると言われている。
日本および海外で活躍する劇団影法師にて、皮影戯の人形製作から演技、舞台美術製作までを担う第一人者・柴廣義さんに皮影と劇団影法師、中国と日本への想いを聞いた。

 一枚の真っ白な布のスクリーンを隔てて繰り広げられる光と影の芸術―。皮影戯は、牛のなめし皮を切り抜いて彫刻・彩色を施した人形を用いる中国伝統の影絵人形劇だ。ひとたび観劇すれば、人 形たちの織り成す繊細かつ躍動感のある動き、色鮮やかながらもどこか素朴で懐かしい影絵の世界に大人も子供もたちまち魅了されてしまう。

写真1 中国伝承「白蛇伝」の物語で使用する皮影人形。
カラフルな色彩と精緻な彫刻を施した人形は、操作により豊かな表情を見せる。(写真提供:劇団影法師) 

 柴廣義さん、中国河北省唐山市出身、59歳。日本における中国皮影美術製作の第一人者である。芸術学校で舞台美術を学んだ後、唐山市皮影劇団へ入団。舞台美術設計士として活躍する。柴 さんが皮影人形製作と関わるようになったきっかけは、1976年の唐山大地震と関係している。当時の被害は甚大で中国政府の公式発表によると死者数は約25万人にものぼった。劇団スタッフも数名が命を落とし、道 具や設備の多くが失われた。ほどなくして再開した公演活動に伴い、人手不足に陥った劇団内で、舞台美術製作に加えて人形作りも担当することになった柴さんは「デザイン、背景製作、人形製作、演 技など一人で4人分の仕事をした」という。

写真2 笑顔の柴さん

 1988年訪中ツアーで唐山市にやってきた日本の劇団・影法師の公演を見たことが、柴さんと影法師の運命の出会いとなる。1992年、今度は柴さんたち中国側が訪日公演を行う。そ して1996年には唐山市皮影劇団と影法師による日中合作「杜子春」の公演が実現した。その後、柴さんは長く働いた皮影劇団を退団して来日。以来20年間ずっと影法師で皮影戯美術のデザイン、製作、演 技を担当している。現在は伝統技術を引き継ぐべく、若手の育成にも力を入れている。

 皮影人形づくりは、彫刻や色塗りの他に、パーツ毎に異なる皮選びなど多くの工程と繊細な技術と経験を必要とする。短いものでは10日間前後、長いものでは半年もの期間をかけて制作するという。一 枚一枚異なる厚みと風合いを持つ皮素材を相手に、根気のいる作業だ。「最初は皮影の人形作りは嫌いだった。でも、毎日仕事が終わった後、夜中に家で練習をした。一生懸命作っていたら、段々上手になって、周 囲に褒められるようになって。今では大好きになった。(笑)それで、20年も影法師で皮影の仕事をやっているんだよ!」と、くしゃくしゃの笑顔で話す柴さん。「影法師は公演回数が多くて忙しいけれど、仕 事がいっぱいあるのは幸せなことだし、好きなことをやっているから疲れない。それにね、ぼくたちの皮影戯を観たお客さんが感動してくれると自分もすごく感動する! 心の交流には国と国のことは関係ない。日 本に来て本当によかったって思うよね。」

 最後に、柴さんに今後の夢をたずねてみた。「元々舞台美術の製作をやっていたから、大きな物が作りたい。北京の故宮にある九龍壁! あれを作りたい! だんだん年をとってきたから、元 気なうちに挑戦したいね。」

 少年のようにきらきらと目を輝かせて話すと、今度はゆっくりと両手に抱えた「孫悟空」の人形に視線を落とす。愛おしそうに相棒を見つめる姿が胸を打った。

皮影戯(ピーインシー)

 皮影戯は、牛のなめし皮を切り抜いて彫刻・彩色を施した人形を用いる中国伝統の影絵人形劇。皮影人形は多くの工程を経て出来上がる。デザインを紙に描き、素材となる皮を部位ごとに選び、し るしをつけて彫り、色つけをする。乾燥させてから、透明感を出すためにニスを塗る作業を繰り返す。人形は頭部、腕、二の腕、手、胴体、腰、脚など11のパーツから成り、各パーツは糸で連結して組み立てる。多 くの関節を持つことで、なめらかでスピーディーな動きが可能となり、人形の表現力も広がる。子供たちが大好きな演目『孫悟空』等、アクロバティックで機敏な動きもお手の物。(写真提供:劇団影法師)

皮影人形は大きさにより製作時間が異なる。長いものでは半年にも及ぶ。

「西遊記」の一場面より。孫悟空が飛んだり回転したり、スクリーン上で自由自在に動き回る。

劇団影法師

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1978年創立。既成の概念にとらわれないアイディアと新技術を導入した創造活動により、文化庁主催公演をはじめ日本全国で活動、児童青年演劇界をリードする。また、こ れまでに欧米やアジア各国を代表する16か国の劇団と23作品にも及ぶ国際共同制作を行い、海外公演も数多く実施している。平成16年外務大臣より表彰される。

劇団影法師HP http://www.kageboushi.com/

※出典:「1200年の中国伝統芸術「皮影戯」で日中を繋ぐ劇団影法師 柴廣義さん」『和華』第11号(2016年7月),pp.36-39,アジア太平洋観光社。


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