【13-004】日本短期研修の記録(その4)日本で見たこと、思ったこと

譚 暁媚(曁南大学)   2013年 3月 7日

 「若いうちに遠くへ行くべし」(原題:年軽的時候応該去遠方)という肖復興(作家)の文章を思い出し、外国に行って、外の世界を見てみよう、という気持ちになっただけなのかもしれない。それで私は日本へ旅立った。

 ボーイング777に乗って東京に到着した。こんなに大きな旅客機に乗ったことがなかったので、少し気持ちが高ぶった。出迎えのバスに乗って集合場所に着いた時、初めての日本なので、全てのことが新鮮だった。日本のほとんどの自家用車は、軽ワゴンのように小さく、日本では排気量が小さい車が中心だという。

 こういう車種は、実用的で、よく売れている。東京の最初の印象は、とにかく清潔ということだ。大型車も、小型車も、乗用車も、商用車も、日本の車は、どれも清潔で、中国の車のように、埃が薄く積もっているということはない。窓ガラスもビルの外壁も同様で、ほとんど何も汚れていないと言っていい。それは日本の空気がきれいなため、と言うことだった。

 集合場所は日本の伝統的な居酒屋だった。私たちの団体は70人余り。広州、大連、上海から来日した学生たちで、道すがら自己紹介を聞いていた。多くの人が日本のアニメ・漫画、スター、ショッピング、グルメを目当てに来ていて、私のように単純にちょっと来てみようという人は、ほんの一握りだったろう。居酒屋の料理はまあまあで、本場の味を試すことができた。

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 日本での11日間で、様々な角度から日本を理解した。全体の印象は、日本はとても清潔で、人への配慮が行き届いており、日本人はルールを守り、環境保護が徹底していて、人間関係は親密、なごやかで、社会もバランスが取れた様子が見て取れる。

 日本の清潔さは到着1日目にすぐ分かった。空気は澄んでいて、道路も清潔だ。特にディズニーランドではゴミ一つ落ちていなかった。中国でこうした光景はまず見られない。地面にゴミが落ちているのが当たり前の中国では、日本の観衆が引き揚げた後の競技場にゴミひとつ落ちていないことがニュースになるのも頷ける。

 グループの一人が、その日新調した靴でディズニーランドを一日歩き、水溜りもあったが、靴の表面も底も汚れておらず、まるで履いていなかったようだった。ディズニーランドから戻った後、表参道へ行ったが、運悪く雨が降り出した。私の常識に照らせば、雨の日はきれいな靴で出かけてはいけない。なぜなら必ず汚れるからだ。しかし、意外だったのは、雨が止んだ後、私の靴は洗った後のように、汚れていなかった。東京の道がきれいなことが再度証明された。

清潔さと他人への配慮

 日本人の気配りはだれも称えるところだが、バリアフリー道路や視覚障害者用の歩道は整備が行き届いていて、歩道が突然途切れることもなく、標識もはっきりしており、しかも一般の人がそこを塞いでいることもない。

 信号を待つときはなおさらだ。当然、車が歩行者に対して道を譲らなければならない。一度、私たちは青信号が点滅中に横断歩道を渡り始め、半分渡ったところで赤信号に変わってしまった。車道の真ん中に信号を待つ場所もあったが、車は私たちが渡り終えるのを待ってくれた。これも他人への配慮の一つと言えるだろう。

 東京の路線バスに乗る機会があったが、どの席にも手が届く場所に降車ベルのボタンがあった。立つスペースにも至る所にボタンがあり、乗客に不便はない。中国の路線バスのように、全部で二つしかベルがないのとは大違いだ。また、大きな声で話したり、携帯電話をかけたりする人はおらず、携帯をマナーモードにしたうえで操作している。車内は静かで、周りに迷惑をかける人もいない。

 私たちが普段、暗い道を歩く時は、路面に窪みや段差などがないかどうか、無意識のうちに細心の注意を払っている。ディズニーランドでアトラクションの列に並んだ時、雰囲気を出すため灯りが消されていたので、私たちは路面を見て転ばないように意識的に注意していたが、そのうち、心配無用だと気付いた。なぜなら、通路はすべてバリアフリーだったからだ。私たちは中国の暗い道に慣れてしまったのだろう。

 また、ディズニーランドの全てのトイレには、母親たちのため授乳室が設置されていた。また、日本には8時間労働制があり、私たちのバスの運転手も一定の睡眠時間が確保されていた。私たちの夜の予定がずれ込むと、運転手の退勤時間が遅くなり、その分、2日目の出発が遅くなった。これも運転手の睡眠時間を確保するためだ。

 私が日本で一番驚いたことは、ルールが守られているということだ。朝のラッシュ時、サラリーマンはスーツを着て、ほとんど走るように改札口を潜り抜ける。急いではいるものの、整然と左側を歩いていた。

 朝のラッシュ時、渋谷でバスを降りると、歩道橋から歩道に向かって伸びる長い行列が私たちの目に入った。人々は通路の端に沿って一列に並び、反対側は通行する人のために通路を空けていた。その時は、何のために並んでいるのか、不思議に思うだけだったが、歩道橋に上って、驚くべき状況を理解した。

 行列は歩道橋を上がり、再び下りて、その先頭は路線バスの乗車口につながっていたのだ。つまり彼らはバスに乗るため、自発的に歩道橋を一つ挟んで順番に並んでいたのだ。中国では全く想像できないことだ。中国ではバスに乗る時、列に並ぶことなど、どこにもなく、ただ押し合うのみ。日中の差は何と大きいことか。

 地下鉄のエスカレーターの乗り口付近でも、中国では人々が一塊になって押し合っている。日本では自発的に、一人ずつ列に並んでエスカレーターに乗り、しかも左側に寄って右側は道を急ぐ人のために空けている。(この暗黙のルールは、日本のデパートや地下鉄のエスカレーターならどこでも見られる。)

 中国の地下鉄では、係員が一日中、「降りる人が先です」と喉も破れんばかりに叫んでいるが、守る人はわずかだ。日本では降りる人が途切れるまで、乗り込もうとする人はいない。なぜなら、すでに順番に並んで待っているからだ。

 中国の地下鉄の混雑振りを知っている私たちは、日本の秩序を見て、こうすればもっと効率がいい、と実感した。人が押し合ったりしないだけでなく、車も押しのけ合ったりしない。日本では車の追い越しは少なく、車間距離も保っているため、交通事故の発生率も低い。さらにトンネルや寂れたところでは100メートルおきに緊急電話が設置され(これもはっきりと表示されている)、もし何か緊急の事故が発生した場合はすぐに緊急電話をかけることができる。

 最も感動したことは、日本では人間関係が和やかで、ディズニーランドでは、従業員が微笑みながら挨拶してくれた。例えば私たちが乗った船が出発する時、スタッフは微笑みながら手を振り、私たちが本当に探検に行くかのように見送ってくれた。舟遊びをしている人がいれば、知り合いでなくても親しげに手を振って挨拶してくれた。さらに感動したことは、アニメのキャラクターたちが観客に向かって熱心に手を振り、音楽にあわせて踊り、観客もキャラクターに向かって手を振っていた光景だ。たとえ自分だけに手を振ってくれているのではないと分かっていても、とても嬉しいものだ。

 社会の調和は、信頼関係や助け合いにも現れていた。自由行動の日、原宿に行く計画を立て、路線バスの中で地図を調べたものの、よく分からなかった。私たちが困っているのに気付いたお年寄りがすぐ近寄ってきて、私たちが迷子にならないよう、繰り返し道を教えてくれた。そのお年寄りは私たちが行きたい所を誤解していたが、親切な気持ちに感動した。表参道の「キデイランド」が見つからず、路上で女性に尋ねたところ、彼女も地図では分からなかったため、直接その店に電話して聞いてくれ、しかも私たちを店まで連れて行ってくれたのだ。

 夜、新宿から帰る道が分からなくなった時も、一人の女性が向こうから近寄ってきて、何か困っているのか聞いてくれた上で、何も言わず、ケータイを取り出して帰りの道を調べ、詳細にメモしてくれた。相互信頼と助け合いは、社会全体の信頼性の基礎となっている。日本はそれを実現しているが、私たちはどうだろうか。長年呼び掛け、スローガンを叫んでいるが、実際に実行できたことはどれだけあるのだろうか。

 日本にいると、小さな出来事の中に環境保護への意志を感じることができる。例えばトイレの液体石鹸は節水のため、簡単に洗い流せるものになっている。浴室の蛇口も節水のため、自動的に水が止まるようになっている。日本では冷房の温度をセ氏28度にするよう呼び掛けており、公的な場所はどんなに暑くても、28度以下にはならないので、街角では団扇が無料で配られている。私たちはパナソニックとアサヒビールを見学したが、そこではリサイクル100%を実現しており、ごみが再利用されている。日本人の環境保護に対する努力は、だれもが認めるところだ。

 日本でのエピソードと成功事例をたくさん紹介したが、外国を崇拝して自国を否定しているわけではなく、日本には学ぶべきところがたくさんある、と思うのだ。例えば教育、クリエイティブ産業(創造産業)、アニメ・漫画は素晴らしく発展している。同志社大学のTim先生が講義の中で話されたように、クリエイティブ産業の産業連鎖はとても長く、派生商品はさらに成長を促し、ファンの心をつかむ可能性がある。

 我は以前、クリエイティブ産業に関する論文を書いたことがあるが、中国のクリエイティブ産業は日本に学ぶところが多く、少なくともアニメ・漫画で日本に勝る国はない。

 11日間は、長いとも短いとも言える。深い感動と中国各地から来た友人に出会った。最後の数日は非常に名残惜しかった。日本での毎日はとても快適で、中国に帰国した後、社会を変えたいという衝動に駆られた。日本に行って得たものは、「出国」の2文字だけでは総括しきれないものである。

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■編集部注:筆者は2012年7月16日~26日、研修プログラム「翔飛日本短期留学」に参加し、日本を訪問した。所属は当時の在籍大学名。原文は中国語で、ウェブサイト「客観日本」向けに出稿されたものを日本語に仮翻訳した。


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