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【09-006】人材育成~東京工業大学・清華大学、大学院合同プログラムの紹介~

東京工業大学 清華事務室

1. プログラムの概略

清華大学正門 

清華大学正門

 東京工業大学・清華大学大学院合同プログラムは、中国の清華大学と東京工業大学とが共同で、大学院(修士課程、博士後期課程)の合同プログラム(聯合培養項目)を設置し、日本語・中国語・英語を駆使して国際的リーダーシップを発揮できる日中双方の文化・習慣に通暁した優れた人材を育成するのを目的としています。2005年には、国際化推進事業として文部科学省による大学教育の国際化推進プログラム(戦略的国際連携支援)にも選定されました。

 このプログラムに入学する清華大学生、東工大学生は、それぞれ一定期間(1年~1年半)相手大学にも在籍し、両大学で研究を行なって、修士課程の学生は双方の修士号を、博士後期課程はどちらか一方の博士号を授与される大学院レベルではわが国最初の、デュアル・ディグリー(双方学位)プログラムです。

東京工業大学キャンパス

東京工業大学キャンパス

 日中それぞれの国における理工系大学のトップ校として、東工大と清華大では、1985年に学術交流協定を結び、着実な信頼関係を築 いてきました。2002年には、その交流をさらに発展し、経済を含む日中交流の推進・拡大を支える人材育成を目指した「大学院合同プログラム」の発足を検討し、2年間の準備期間を経て2004年2月に合意に達し、清華大では2004年9月に、東工大では2005年4月に一期生の授業をスタートさせました。

 合同プログラムには、材料工学などのナノテクノロジーコース、生物プロセスなどのバイオコース、経営工学などの社会理工学コースの3コースが設定されています。定員は現在ナノテク、バイオがそれぞれ5名、社会理工学が2名です。入学試験はそれぞれの大学で行い、東工大の学生は2年半で、清華大の学生は3年で両大学の修士号を取得します。2007年10月からは、博士後期課程もスタートしました。博士後期課程はおおむね3年をかけて博士号を取得します。

 互いに渡航前には研究・一般生活に対応できるよう語学研修もプログラムシステムに取り入れられており、互いの国を理解するのに充分な準備をした後での留学となります。清華大での十分な質と量の日本語による授業を提供するため、東工大では特任教授を清華大に派遣し、常駐させているほか、年間計画にもとづいて、多くの教員を清華大に派遣し、集中講義を行なっています。また、清華大の教員による東工大での特別講義も開講しています。

photo3

東工大学位記授与式後に東工大の学位記を持って、
誇らしげに学長・副学長との記念撮影をする合同プログラム生(清華大学生)。
現在は日本企業に就職、博士課程に進学と、それぞれの道を進んでいます。
左から齋藤副学長、牟田副学長、学生、伊賀学長、学生、学生、大倉福学長、西村監事。(2008.9)

 また、双方とも学生寮・奨学金等を用意し、滞在中の生活面では不安なく、研究に励める環境が整っています。多くの企業から資金協力を得て、清華大学生が来日して1年あまり滞在する費用を、東工大から奨学金として支給しています。

 合同プログラムでは、企業からの派遣社員(大学院生、研究生)も受け入れています。これにはバイオ、ナノテクの理工系だけでなく、経営や法学の文系での受け入れも可能となっています。業界を問わず企業の人材育成に応えられるプログラムと言えます。清華大内には東工大北京事務所が設置されていて、プログラム学生にはきめ細かな指導や助言を与えることができ、プログラム学生のケアなどの体制も整えられています。そのような繋がりから、スポンサー企業に就職を決める両大学の学生も増えて来ました。清華大は、中国の重点大学のナンバーワンであることはもちろん、論文投稿数ではトップという理工系の枠を越えた大学となっています。清華大に派遣された学生は、中国で最先端の研究の現状を知ることができるとともに、中国の学術分野で指導的な役割を果たしている教授らと直接、触れ合う機会を得ることができます。学生にとっても、両国にとっても大きな財産となるシステムです。それ故、プログラム生の選考には両大学での研究を追究できる能力・体力・気力を持った学生を選抜し、大学院生の中でもトップクラスの学生のみが合格できる難関のプログラムと言えます。

 東工大と清華大の連携は、この間、生物学系の学生交流会などさまざまな催しを通して強化されてきました。合同プログラム発足以来、「東京工業大学・清華大学大学院合同プログラムニューズレター」を発行し、プログラムに関連するトピックスや研究室の紹介など、関係者をはじめ協力企業とのコミュニケーションを密にする活動を行っています。

 また、バイオ・ナノテクノロジー・社会理工学コースそれぞれの教授や研究室による成果発表会ともいえる「合同シンポジウム」を東工大や清華大で開催し、研究交流の拡大を着実に進めています。これらの催しのいくつかを以下に示しておきます。合同プログラムは、人材育成策として大きな意義をもっているだけでなく、日中の学術交流に参加することで、双方の研究活動の内容、そのレベルを知る有意義な場であるといえます。

2. 各種活動の紹介

■多種のシンポジウムの開催

■[1ST International Graduate Symposium on Biotechnology, Bioengineering and Biomedical Science (IGS3BS-1)]

photo4

清華大学のメインビルディングで開催されたIGS3BS-1は総勢100名の参加者で盛大に行われました。

*平成21年3月22日(日)於:清華大学

 従来の教員主導のシンポジウムとは趣向を変えて、両大学の学生を中心とした交流会とし、学生の企画・施行により開催しました。

 両大学の学生間の距離を縮めた有意義な機会となりました。


■[2008 Tokyo Tech-Tsinghua University Joint Symposium]

photo5

ショットプレゼンテーションの光景(左)発表する清華大三期生の陳云深氏(右)

*平成20年11月19・20日 於:東京工業大学田町キャンパス、人材開発センター富士研究所

 東工大グローバルCOEプログラムのAsia Materials Week の一環として、ナノテクノロジーコース単独のシンポジウムとしてではなく、清華大とのジョイントシンポジウムとして開催しました。一日目は東工大の田町キャンパスで、二日目は場所を富士山裾野の人材開発センター富士研修所に移して、開催しました。

 合同プログラムで日本に滞在中の清華大学生はもちろん、北京の清華大からも多数の教員が参加しました。日本に滞在中の清華大学生は、担当教員との久々の再会で緊張の中、short presentation とポスター発表を行ったのち、夜遅くまで、ディスカッションで盛り上がっていました。

■各種イベント

■「フェアウェルパーティ」

farewellparty

*平成21年2月23日 於:東工大大岡山キャンパス

 毎年、相互の大学を行き来している東工大学生と清華大学生の送別会や歓迎会を来賓・スポンサー企業の方々を招き、開催しています。 学生達は普段接することのない中国大使館やスポンサー企業・JST(科学技術振興機構)の来賓の方々と、研究のこと、夢、就職のことなど、多岐に渡った歓談ができ、楽しいひとときを過ごしていました。

■「企業見学ツアー」

*平成20年10月30~31日 於:長瀬産業㈱R&Dセンター、ナガセケムテックス㈱

 合同プログラムのスポンサー企業である長瀬産業株式会社のR&Dセンター(神戸市)やナガセケムテックス㈱(竜野市)の工場の見学ツアーに清華大学生が招待されました。数々の最先端の機械や技術に触れ、学生達は感激していました。

 帰京途中には、京都にも立ち寄りました。

見学終了後の記念撮影。バックのポールには日本国旗・社旗に加え、中国国旗も掲げられました。

■「学術ツアー」

*平成21年3月16~23日  中国:上海、福州、北京

 毎年、バイオコース長が企画している中国学術ツアーには東工大関係者の他、スポンサー企業の方々も参加されています。教員や合同プログラムの学生とともに、中国各地の主要大学・研究所・企業を訪問し、シンポジウムや学会へ参加するツアーで、スポンサー企業には好評です。去る3月に開催されたツアーは上海での中日再生医療バイオフォーラムや福州での肝臓学会、清華大学での前述のバイオシンポジウムと盛りだくさんの内容でした。

 東工大と清華大学間の交流を軸に、今後は企業・産業界のニーズに応えるべく華東地区を含めた中国の有力大学との交流活動が広範囲に展開されつつあります。

上左・右:福建省福州の西湖賓館で開催された「第五回国際人工肝臓学会」
下左:大学附属の上海一の漢方の研究所見学。
下右:中日再生医療バイオフォーラムに出席した森准教授とフシバイ特任助教。

参考文献:

  1. 東京工業大学・清華大学大学院合同プログラム
    http://ttjp.ipo.title_grayech.ac.jp/program/about_program_top.html
  2. 平成17年度大学教育の国際化推進プログラム(戦略的国際連携支援)選定取組みの概要及び選定理由
    http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/kekka/05080201/003/005.htm

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