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【09-014】立命館孔子学院の紹介

周 瑋生(立命館孔子学院院長)

周 瑋生

周 瑋生(しゅういせい):立命館孔子学院学院長
立命館大学政策科学部・教授
立命館サステイナビリティ学研究センター長

研究分野:エネルギー経済学、環境政策学、政策工学

1.学歴

  • 1982.07 浙江大学工学部熱物理工学科   工学学士学位取得
  • 1986.07 大連理工大学大学院動力工学科 工学修士学位取得
  • 1995.05 京都大学大学院物理工学科専攻 工学博士学位取得

2.職歴

  • 1995.09~1998.03  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術研究員として(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)に勤務
  • 1998.04~1999.03   RITE地球環境システム研究室 主任研究員
  • 1999.04~2000.03   立命館大学法学部 助教授
  • 2000.03~2002.03   立命館大学政策科学部 助教授
  • 2002.04~現在に至る 立命館大学政策科学部教授
  • 2003.04~2004.3   (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 研究顧問
  • 2003.12~2008.03   日本テピア総合研究所 所長(兼任)
  • 2004.04~2009.03 立命館国際機構副機構長(中国担当)
  • 2005.10~現在に至る 立命館孔子学院院長、副理事長
  • 2007.01~現在に至る 立命館サステイナビリティ学研究センタ長
  • 2007.06~2008.3   大阪大学特任教授

3.著書

  1. 「地球を救うシナリオ―CO2削減戦略」(共著)、日刊工業新聞社、2000.8.
  2. 「現代政策科学」(共著)、2004年4月、岩波出版社
  3. 「地球温暖化防止の課題と展望」、法律文化社(共著)、2005.4

1. はじめに―文化の多元化と言語の多様性

 2001年11月、第31回UNESCO総会は、「文化の多様性に関する世界宣言」を採択した。この宣言は終戦直後の「世界人権宣言」に次ぐものとの評価を受けた。何故ならば、それは「文化は時間・空間を越えて多様な形を取るものであるが、その多様性は人類を構成している集団や社会のそれぞれの特性が、多様な独特の形をとっていることに表れている。生物における種の多様性が、自然にとって不可欠であるのと同様に、文化の多様性は、その交流・革新・創造性の源として、人類にとって不可欠なものである」と、本宣言の第一条に謳われるに至ったのである。

 各国が、固有の言語と文化を保護・育成する政策を取る権利を認めた条約で、文化交流の推進をうたう一方で、政府の保護・育成策が表現の自由や人権を侵害しないよう求めている。一方、言語と文化のような「ソフトパワー」は、「ハードパワー」と違って、「ゼロサムゲーム」でなく、排他性、強制性、暴力性をもつものではなく、「グローバル公共財」(非排除性、非競合性)の性格を持つべきと考えられる。

 先進諸国の自国の言語・文化を他国や世界への普及活動は、15世紀から始まった。たとえば、The British Council (ブリティッシュ・カウンシル 、英国文化委員会)、Alliance française (アリアンス・フランセーズ/フランス文化機関)、Goethe Institut(ゲーテ・インスティテュート)、Italian Institute Of Culture(イタリアン・インスティテュート) 、Cervantes(スペイン・セルバンテス)、日本国際交流基金(海外拠点は世界19カ国21カ所、2008年3月現在)などを挙げることができる。孔子学院はこういう先行事例を参考しながら設立されたものといえよう。

2. 発展途上国である中国と孔子学院

 孔子学院の規定によれば、孔子学院は、中国政府が各国の大学などと提携し、中国語教育や世界との文化交流を促進するために設立した非営利公益性教育機関である。孔子の名を冠しているがあくまでも語学教育と文化交流機関であって、儒教教育を行う機関ではない。

 2004年に 7ヵ所、2005年に42ヵ所、2006年に122ヵ所、2007年に 223ヵ所、2008年に305ヵ所、2009年9月20日時点、世界で86カ国・地域、計365ヵ所(うち孔子学院275、孔子学堂70)が設立された。その中、米国は60、日本は11個を占める。10年までに世界で500校の設置を目指しており、現在開設を申請しているのは約40カ国の約150機関に上るという。あまりにも急スピードで増加することで「孔子学院現象」とも呼ばれている。

 東方文化代表の一つである中華文化、世界工場から世界市場へと変貌しつつある急速な経済成長と巨大な市場、とくに金融危機を背景に影響力を強める中国の発展で国際的なパワーバランスが変化したことが、孔子学院の急速な増加の一因だと考えられる。孔子学院本部によると、世界の中国語学習者は4000万人を突破し、2010年には1億人に達すると予測する。また、世界109カ国の3000の大学に中国語のカリキュラムが開設されており、イギリスでも中国語の課程がある中学校や高校は150校から500校になり、7万人の生徒が学んでいる。ロシアでは2004年の50校から今では150校を数え、生徒数は5000人から1万5000人に増加したという。また中国国家留学基金の統計によると、91年に海外からの留学生はわずか1.1万人、06年になると、16万人を超えた。国外漢語水平試験参加者人数は、05年3万人、06年6万人、07年は13万人に達した。これは、中国が文化や言語を強引に「輸出」しているのではなく、「中国の未来に期待した学習者自らの選択だ」と考えられるだろう。

3. 立命館学園と立命館孔子学院の設立

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立命館孔子学院の地理分布

 立命館学園は、学生・生徒・児童総数約4万7千名を擁する私立総合学園として伝統を築いている。孔子学院の設立は立命館学園が「アジア太平洋地域のハブ大学に」という国際化の第三段階の目標において、教育・研究・文化の重要な交流拠点を築いたことになる。

 立命館学園は「平和と民主主義」の理念に基づいて戦後間もないころから中国との交流に取り組んできました。現在、立命館大学と立命館アジア太平洋大学で合計1000名以上の中国人留学生が学び、協力協定を締結している中国の大学は70以上に昇る。また2004年からスタートした『中国の大学管理運営幹部特別研修』は60の大学及び各省の教育省・財政などの省庁から800名が受講するまでにいたっており、中 国政府や日本政府から非常に高い評価を受けている。立命館学園と中国の協力関係は一歩一歩確実に前進しており、立命館孔子学院開設は、これまでの学園の取り組みの結実の一つであると言えよう。

 立命館孔子学院は、学校法人立命館と北京大学の提携によって、2005年10月に京都に開設された日本での第一号である。その後2007年には本学院の東京学堂が開設され、翌2008年には同済大学との提携で、同学院の大阪学堂が開設された。立命館孔子学院の設立母体は、特定非営利活動法人(NPO法人)である。

4. 立命館孔子学院の主な事業

 立命館孔子学院は設立して5年目を迎えた。「学堂、窓口、架け橋」として漢語教育の促進、文化交流の拡大を主旨に、常に漢語教学の旗艦的な役割を志し、日中文化の双方向交流を促し、また現代中国の研究センターであるべく数多くの開拓的な事業を展開し、持続可能なモデルの模索に努めてきた。ニーズに応じた特色ある中国語講座、高品質の漢語教育の提供を心がけ、また「中国理解講座」「敬学講座」「現代中国講座」「北京大学講座」等の多彩な講座を実施し多数のご参加を賜りましたこと、そして世界初の国別孔子学院会議─第1回日本孔子学院会議並びに第1回世界孔子学院フォーラムを発案、孔子学院間の相互交流の新たな方式を提示した。

 立命館孔子学院の具体的な事業は、北京大学同済大学をパートナー校として、立命館大学(及び小学校)における中国語教育の推進、日中文化の交流と理解促進、中国留学支援などの多様に展開している。併せて、社会事業としても、市民にむけた中国語講座や、日中相互理解のための講演会、セミナー等を企画・実施している。発足以来、立命館孔子学院は、主として立命館大学(中国語部会及び教学部、国際部)と連携し、また北京大学及び同済大学の協力を得て、中国語教育と文化交流を事業の2本柱としてきた。毎年50~60の語学講座を開講し、約700名の学習者を有する。その開講科目等の詳細は、立命館孔子学院のHP http://www.ritsumei.ac.jp/mng/cc/confucius/をご参照されたい

 目指す特色としては、第1は、「日本においての中国語教育の先端的地位を築くこと」である。孔子学院の取り組みを行う上で、真っ先に直面する課題は、規模効果、教員育成、教材開発、資格認定などがあげられる。立命館孔子学院では各レベルで多彩な中国語教育を行う上で、北京大学との共同編集事業として、漢字圏に適した、特に日本人向けのレベルに応じた教材(初級、準中級、中級と準高級)の開発を進め、中国語教師の育成プログラムを進行中である。

立命館孔子学院主催中国語スピーチコンテスト

立命館孔子学院主催中国語スピーチコンテスト

 今、民間レベルで中国語講座が数多く展開されているが、私たちは彼らと競争するのではなく、教育システム自体を開発し提供していくフラッグシップ的な役割を担っていくことを目指している。

 二つ目は「日本と中国の交流の中心的な窓口となること」である。日中両国は相互理解を促進するための努力が今以上に必要だと感じている。例えば、戦 後の日本経済発展の歴史を中国に紹介する資料はそれほど多くない。

立命館孔子学院と北京大学の教材共同編集会議

立命館孔子学院と北京大学の教材共同編集会議

第1回敬学講座:弘揚東方文化構建和諧世界(王毅大使、当時)/中国理解講座(毎月1回、計45回)

第1回敬学講座:弘揚東方文化構建和諧世界(王毅大使、当時)/中国理解講座(毎月1回、計45回)

中国温家宝総理来訪立命館大学(2007.4.13)

中国温家宝総理来訪立命館大学(2007.4.13)

 また中国に関する日本の報道も外交に偏ったものが多いように感じる。立命館孔子学院は、日中文化の双方向交流と理解の促進に努めている。

 立命館孔子学院は、2007年度と2008年度と2年連続して「先進孔子学院」に選ばれた。

 日本初の孔子学院としての個性を生かした事業展開に、今後ますますご期待いただけるよう努力して参りますので、一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

立命館孔子学院主催:第1回世界孔子学院フォーラム(2007.5.10-12、京都)

立命館孔子学院主催:第1回世界孔子学院フォーラム(2007.5.10-12、京都)

立命館孔子学院主催:第一回日本孔子学院会議(2006.11.25)

立命館孔子学院主催:第一回日本孔子学院会議(2006.11.25)


立命館孔子学院事務局

〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1 アカデメイア立命21内
TEL:075-465-8426  FAX:075-465-8429
E-MAIL:confuciu@st.ritsumei.ac.jp
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/cc/confucius/