【07-10】国際プロジェクトの事務局を受けるか受けないか~中華の国と島国のセンスの違い~

今井 寛(筑波大学大学院教授・中国総合研究センター特任フェロー)  2007年10月20日

国際プロジェクトの事務局比較

 現在、中国総合研究センターでは、日本と中国の大学や研究機関の研究協力の実態について調査を進めている。私も日本の大学や研究機関を訪問して、中国と協力を進めている研究者に会って、現状や課題、中 国総合研究センターに望むこと等についてインタビューを行っている。

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 先日、地球科学分野の研究者から、興味深い話を聞いた。昨近中国が国際学会を招致したり、国際プロジェクトの事務局になったりする事例が増えているというのだ。 

例えば、世界気候変動プログラム(WCRP)と地球圏−生物圏国際共同研究計画(IGBP)について、WEBサイトをチェックしてみると、日 本と中国が引き受けているコアとなるプロジェクトの事務局数は以下のようだ。 

 まず、コアプロジェクトの主事務局については、日本が1事務局受けているのに対して、中国も1事務局設置している。 

 また、一部のコアプロジェクトは、主事務局以外にも、地域センターを設けている。この地域センターの数を比較すると、日本が1事務局であるのに対して、中国は3事務局引き受けているとのこと。

 国際プロジェクトの事務局を引き受けると、どんなメリットがあるかというと、例えば、どこにどのような研究者がいて、どのような研究が進んでいるかといっ た情報が集まってくるそうだ。他方、事 務局を置いてプロジェクトをマネージメントするのは手間やコストがかかるし、そのための人員も配置しなければならな い。 

別に事務局を引き受けなくても、プロジェクトへは参加できる。でも、まあこれは漠然としたことかもしれないが、情報とか国際研究社会における存在感と いったものに重きを置くなら、積 極的に事務局を引き受けた方が良い。いずれにせよ、実際に研究に要するコストよりは高くはないだろう。

国際社会における「存在感」の重視

 先に上げたのは、あまたある研究分野の中の一つの例に過ぎない。もしかしたら他の分野では、日本は積極的に国際プロジェクトのマネージメントを引き受け、 中国はそれ程熱心でないということがあるかもしれない。でも私自身の経験からすると、この地球科学のような事例は珍しいことではないと想像される。もしこのような「日本は消極的で、中国が積極的」というのがよくあることなのだとすれば、原因は次のようなものになるのではないか。

 まず、ここ数十年来、日本はアジアにおける唯一の先進国だった。だから、国際プロジェクトの世話を、世界の地域ブロックで分担する時は、アジアでは日本に降ってくることが多い。つまり、特 段積極的にならずとも、自然と日本が分担するという構図ができていた。

 一方、中国は科学技術面では後発の伸び盛りの国。世界において科学技術面でのプレゼンスを高めようという気運がある。このため、国際会議やプロジェクトのお世話をするということが、国 内でも比較的評価されやすいと考えられる。

 また、よく「ハコモノ行政」と言われるが、一般に我が国では国際プロジェクトの事務局みたいなふわふわした話の予算は比較的通りにくいと思う。目に見えにくく、し かもやらなくても参加できるにも関わらずカネをかけるというのは、賛同が得られにくいのだ。一方、中国は昔から横のつながりを重視するネットワーク社会である。情報を得ることの重要性について、庶民に至るまで理解している。

 更に、もっと奥深いところがあると思うのは、それぞれの国の成り立ちの違いである。中国は、古くからまさに中華の国。国際社会の中心として動くことに慣れている。どんなふるまいをすれば良いか、そのことが自国にとって長期的にどんな利益を生むのか、生来身に付けている。一方で、日本は生粋の島国。他国は遠い。自然と目に見える自分の範囲だけで、利益を生むかどうかを考えてしまう。「国際貢献」という言葉のニュアンスは、自国の利益ではなく、あ くまで無償のボランティアと見なされることが普通だろう。

 今後国際社会において、日本的国際貢献センスが先を行くのか、中国的中華のセンスが追い越すのか、よく見極めていきたい。


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