【07-12】日中共同研究推進制度のあり方~一連のインタビューを行ってみて~

今井 寛(筑波大学大学院教授・中国総合研究センター特任フェロー)  2007年12月20日

 前号に引き続き、日中共同研究に取り組んでいる大学や研究機関の研究者やマネージャに対する一連のインタビューから、研究推進制度のあり方について幾つか考えてみたい。

研究分野による違い

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 元々持っていた筆者のイメージは、日本人と中国人が海を越えて協力して研究するのだから、その過程において次々と問題が出てくるというものだった。確かに話を聞いてみると大筋ではその合っているのだが、研 究分野によってもかなり状況が異なることもまた事実である。例えば、情報分野の協力は比較的ハードルが低いと言えよう。通信ネットワークの発達した現代では、情報というものは国境を簡単に越えてしまうところが ある。情報には物理的な重さも形もない。特 にソフト分野だと、研究に使う道具は基本的にはコンピュータがあれば良いので、日中どちらにいても研究はでき る。少なくとも研究者が日本と中国との間を行き来できれば、それ程大きな障害はないようだ。あ とは十分な研究資金を確保できるかどうかが鍵になる。

 片や、材料・物質系のように実験が必須の分野がある。研究を進めるためには、大型の実験装置などハードを準備することが不可欠である。そうなると、誰が その装置をどのようにして調達するか、日 中どちらの実験室に設置するか、装置を相手国へ持ち込む際に関税はかかるか、持ち込んだ装置の所有権はどちらにあ るか、メインテナンスなど管理は誰がするのか、またその費用はどうか・・・というように、途 端に話は複雑化する。このような分野では、研究資金を確保する ことに加えて、実験装置の位置付けや扱いに関する明確な方針が双方で納得されていることが必要であるし、時 には研究機関を越えて上部機関の方針に従う場面 も出てくる。このため、研究に入る前の準備段階の調整に時間を要することが多い。

 また、そもそも研究データを取得できるフィールドが片側の国にしかない(多くは中国側)という分野もある。例えば、地球科学や一部の生物分野である。共 同研究の分担は、観 測機器の持ち込みとフィールドでの観測といったように相補う形になるため、ますます話は複雑になる。観測機器は日本側が用意するとして もメインテナンス費はどちらが出すのか。地 球科学分野では外部資金が切れた後も長期にわたって観測を続けるケースがあるが、その場合は機器の管理や費用は どうするのか。研究者レベルで了解していたとしても、政 府の方針から観測データを実際に国外へ持ち出せるか否かといった問題もある。

 ここでは幾つかの事例を上げるに留めるが、分野間でかなり事情が異なる状況だ。このため、日中間の共同研究推進支援制度を設計する場合は、研究分野による特徴の違いを踏まえることが必要と考えられる。

対等の共同研究なのか援助なのか

  急速に力をつけてきたとは言え、中国は研究面において全体としてはまだ発展途上の段階にあると言えよう。今のところ欧米先進国との共同研究のように、どの分野においても学術水準からみて完全に対等の協力ができるという訳ではない。ただ一方で、ODAのような援助や指導求めるレベルではないケースも多い。完全な対等性を求められる競争的資金を獲得するのはきついが、援助の段階は卒業している分野である。「完全対等研究」未満「援助&指導」以上という共同研究 の枠組みがあると良いと思える。また、欧米先進諸国が中国に対してどのようなアプローチをしているか興味がある。まだ詳細は不明であるが、聞いたところでは彼らは中国が発展したかなり先を見越して付き合っている節がある。 

 我が国もこのような状況をしっかりと把握して、現場のニーズに合った日中共同研究推進制度を構築していくことが求められる。


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