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【08-07】台湾の空港にて~ファースト・インプレッション~

今井 寛(中国総合研究センター参事役)  2008年5月20日

 この春、筆者は職場が筑波大学から科学技術振興機構へかわりました。中国総合研究センターでは引き続きコラムを担当しますので、よろしくお願いします。

台湾桃園国際空港へ着陸

 三月に台北へ行く。成田から4時間のフライトで台湾の玄関口である台湾桃園国際空港に到着。実は台湾は初めての訪問である。荷物を肩に昼下がりのコンコースを歩く。落ち着いた雰囲気。そのせいか「初めてここに来たんだ...」みたいな感慨や緊張感は全く覚えなかった。北京、上海、重慶、杭州など大陸諸都市だと、こうはいかない。直ぐに何かが起きるという訳ではない。でも、日本から着いて飛行機を降りると、自 分の体の中にある危機感知センサーがピーンと起動するのが分かる。それは何故だろうか? 

 それは、搭乗した機が着陸直後に滑走路をターミナルへ向けて移動中であるにも関わらず一斉にケータイの電源を入れて話し出す客達のせいか、コンコースに 立っている電話勧誘の物憂げなねえさん達のせいか、巨大な機内持ち込み荷物をかつぐおじさんを見かけたせいか、グリーンの兵隊服の国境警備隊員のせいか、 ターンテーブルをぐるぐる回っている中身が想像つかない段ボール箱のせいか、行き先が近いと「小日本!」と悪態をつくタクシーの運ちゃんのせいか、何のせ いかは分からない。でも、い つ如何なる時間帯に到着しても、油断ならない所に、今、自分は立っているのだと、即座に全身が感じ取る。退屈とは無縁とも言え るこのエキサイティングな刺激は、何度来ても、例え駐在経験があっても、消えることはない。いや、益々深まるというべきか。 

 台北の空港は違う。穏やかである。例え大荷物を抱えてリムジンバス乗り場を探していたとしても、白タクなどが寄ってくることもない。自分のペースで考えていける感じなのである。 

 今回、大陸経験のある現地の日本人の方々とも話したが、台湾は、既に成熟して落ち着いた社会へ達しているようだ。

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麗しの島

 台湾には「フォルモサ(Formosa)」という別称があって、これはポルトガル語の「美しい」を意味する言葉が原義らしい(Wikipediaより) 

 今回は2泊3日と短期の滞在だったので、台湾の自然の美しさに直接触れる機会は少なかったが、日本への帰り道の空港で、その美しさの一旦に触れることが できた。というのは、桃 園国際空港において幾つかの搭乗ゲートのスペースを活用して台湾の美しい自然を紹介する大掛かりなディスプレイを鑑賞したからだ。 

 この展示には本当に感心させられた。台湾の森、海、田園、動物、昆虫、魚類、植物、街など、その美しさを大型の写真ポスターと植木や模型などで余すこと なく表現している( リラックスできる無料のマッサージチェアまである)。以前私はサイエンスとアートの融合を目指したプロジェクトに取り組んでいたが、こ のディスプレイ群はそのイメージに近い。 

 もしかしたらこのようなスペースが確保できたのは、空港の発着枠に余裕があるためかとの考えもよぎったが、まあそれはそれとして「空港で台湾の自然に触れられる」という体験をするためだけでも、こ こに来る価値があるだろう。

 空港は地域の玄関口であり縮図である。空港を体験し観察することは、その社会について知り、理解することにつながると言えよう。


 一昨年訪問した四川大学並びに四川省の皆様方に、心より地震お見舞い申し上げます。