【12-01】中国での報道ぶりは?/山中伸弥氏にノーベル賞

鈴木 暁彦(中国総合研究センター フェロー)     2012年10月19日

 山中伸弥・京大教授が英国の研究者とともに、ノーベル生理学・医学賞を受賞するというニュースは、中国でも大きく報じられた。中国の各メディアは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究者が2012年のノーベル賞に選ばれたと速報したうえで、「臓器が壊れたら、”純正部品”を使う?」「彼らの発見によって我々は不老長寿になれる?」「大変SF(サイエンス・フィクション)的」などの見出しで伝え、強い関心を示した。不老長寿は古来、中国人の夢として語られており、新しい医療技術への期待は大きいようだ。

 iPS細胞は、体の細胞を人工的なプログラミング(初期化)で受精卵に近い状態に戻したもので、体のいろいろな細胞に変化する多能性をもち、組織や臓器の再生や難病の治療に活用できる、と期待されている。この細胞は、患者や負傷者自身の細胞から作るので、他人の臓器を移植した場合に起きる「拒絶反応」という危険性がない。さらに、受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)と違い、皮膚などの細胞から作るため、倫理上の懸念を軽減させたことも評価された。

 「臓器が壊れたら、”純正部品”を使う?」との見出しで伝えたのは北京の夕刊紙、北京晩報。同紙の記者は記事の中で、「この革命的な研究成果を、どうすれば、さらに通俗的に説明できるだろうか。ある評論家は次のように言う。自転車の部品が壊れたら、古い部品を修理するより、いっそのこと、新しい部品に取り替えた方がいい。秦の始皇帝以来、どれだけの人が不老長寿を追い求めてきただろうか。しかし、医療技術は部品の修理に留まっている。たとえ臓器移植をしても、それは他人が使った古い臓器と交換しただけ。今年のノーベル賞は特別の意義がある。つまり、人類は新しい部品と交換する希望が見えたのである」と伝えた。

http://bjwb.bjd.com.cn/html/2012-10/14/node_20.htm

 長江商報(武漢)は、ノーベル賞の特集ページに「彼らの発見によって、我々は不老長寿になれる?」との見出しを掲げ、「患者は自分の皮膚の細胞で、臓器を”製造”できる」と記載。皮膚の細胞から幹細胞を作って培養し、組織や臓器を再生して移植する過程を図解で詳述した。

http://www.changjiangtimes.com/szb/20121009/a14.html

 揚子晩報(南京)は「大変SF的」とし、心臓外科医の説明を紹介。臨床に広く応用されるようになれば、この技術は疾病治療に革命的な変化をもたらし、臓器提供者が不足している問題は、理論上、解決できるという。この医師は「例えば腎臓移植が必要な患者は長期間、臓器提供を待たなくても、自分の細胞から新しい腎臓をつくることができる」と記者に語った。ただし、臓器交換が可能になれば、人は不老長寿になれるのか、という問題については、「人体の老化は多面的であり、一つの臓器を交換したから、全身が若返るということではない」という話も伝えている。

http://www.960961.cn/yzwb/html/2012-10/09/node_8.htm

 現代快報(南京)は「魔法の”プログラミング”で、皮膚細胞が心臓や脳の細胞に変わる」との見出しとともに、「将来は、壊死した細胞を交換し、心筋梗塞やパーキンソン病を治療し、臓器再生に応用できそうだ」との期待を表明した。

http://kb.dsqq.cn/html/2012-10/09/node_45.htm

 東方早報(上海)は「これは”ノーベル倫理学賞”でもある」と報じた。受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)は、倫理学上の問題を抱えていたが、iPS細胞は、自分の細胞から作るため、倫理的な懸念を軽減させた、と指摘している。

http://epaper.dfdaily.com/dfzb/html/2012-10/09/node_16.htm

 中国各地の新聞がこのニュースを大きく扱っており、関心の高さを示している。

以上



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