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【10-004】中国の90后世代とこれからの中国の経済成長

和中 清(㈱インフォーム 代表取締役)     2010年 8月11日

写真1

深圳の東門市場

 中国の改革開放が始まった80年代以後に生まれた人を総称して、80后、90后と言い、その人口は08年末で3億4千万人、人口の26%を占めています。彼らは丁度中国の歴史の節目に誕生した世代です。

 しかしその3億4千万人には、農民工、農村の若者がいます。その彼らと都会で育った若者をひとくくりに80后、90后とも言えませんが、農村の経済成長とともに農村の80后、90后も変わりつつあります。

 今、農村周辺の街の職業学校への入学者が減少を続けていますが、その原因の一つは農村での高校進学者が増加しているからです。中国の経済成長により年々都会と農村の80后、90后の価値観、考え方が近づいていきます。

 深圳の東門市場は衣料品や雑貨などを売る店がひしめき合う、有名な若者の街です。

 ユニクロやスエーデンのメンズ&ガールズのファストファッション、H&M、また福島県のいわきに本社のあるHoneysなども出店し、平日の昼間でも人がひしめき、さながら毎日が年末商戦の様相です。

写真2

ロリータファッション

 そこではすでにロリータファッションの専門店もできています。

 そんなマーケットを引っ張るのが90后と呼ばれる1990年以後に都会で生まれた世代でもあり、中国の消費エネルギーの一翼を担っています。

 都会の90后世代は、生まれてすぐにケンタッキーやマクドナルドに馴染んで成長し、ファッションの世界に飛び込んでいく人たちです。

 彼らは豊かさの中で育ち、考え方が前向きです。新しい事に対しての挑戦意欲も高く進歩的、斬新さを持ち、人生を楽しむことにも価値を見出す世代です。

 これまでの保守的な、時に臆病な面も持つ昔の中国人とは異質な意味で90后とも言われます。またその反動として、現実離れした考え方、行動が時に批判の対象ともなります。生活の苦しさを体験していないだけに、周囲に気を配ることもなく自己本位で、自分に合わないものは無視し、気の向くままに生きているとの批判も聞かれます。

 また、都会の90后の親自身が市場経済社会とともに育った世代でもあります。それまでの中国的価値、伝統を捨てながら、成功のキャリアを求め豊かな生活を求め、成長する中国とともに生きた世代です。

 その親たちの子供が90后であり、だから子供の教育さえお金につながりやすい側面を持っています。

 成功をもとめ多忙な日常を送る両親が直接子供に語りかける時間が減り、その教育は自ずと塾や祖父母に代わりました。

 そんな、両親を見て育った90后と話をすれば、日本の女性は家庭に縛られ気の毒だととらえる人が多くいます。子供の教育もお金の世界との実感を、肌で感じて育ったから、そのような考え方になるのもしかたのないことでしょう。

 そんな90后に今、三つの問題が現れています。

写真3

塾の看板

 一つは教育への懐疑です。試験を受けるマシーンと自身を表現する90后がいます。世の中で成功するためには勉強、勉強という言葉が頭にこびりつき、勉強は大変だという印象を受けながら受験戦争の中を生き、進学プレッシャーでパニックになる90后が今、多く出現しています。

 二つは自己中心で育ち、小さな挫折にも耐えられない90后が増えています。

 一人っ子で、狭い自分の周りのことを考え、困難を避けながら、さらに周りに気を使われながら90后は育っています。だから、問題に出会うと、身の処しかたがわからず、過激な、突飛な行動に走る90后も目立っています。

 三つは未来への心配がないためか、言われたままに、なりゆきまかせに生きることを是とする90后が増えていることです。

 都会の90后世代は親の世代を称して消費の素人と呼び、自らを称して消費の達人とも呼んでいます。

 小皇帝、小さな皇帝と言われ、給料をもらってもすぐに浪費をする月光族とも言われたり、イチゴのように温室で育ち、草苺族と呼ばれたりもしています。

 しかし、そんな90后世代ですが、中国の大きな都市消費をリードする存在には違いありません。

 これから、お金はあるが中国では大学に行けない多くの90后世代が現れます。中国人の海外留学数は近年増加する一方ですが、彼ら90后世代が海外留学の大きな塊となる日が近づいています。

 前にこのコーナーでご紹介した深圳から毎日香港の幼稚園や小学校に通う児童はまさにその予備軍です。

 だから日本の大学に90后世代の留学生をさらに受け入れ、将来の日本ファンを増やしていくことも日本のとるべき方策ではないでしょうか。

 旅行ビザの発給が緩和され、日本への中国人旅行者の受け入れが脚光を浴びていますが、学生の間から日本への理解者を増やしていくことは、旅行よりももっと大切なことでしょう。

 日本では成熟社会がとかく問題となりますが、中国人にとって社会の成熟は習うべきもの、取り入れるべきものであり、まさにうらやましい宝の山です。

 だから今、日本を訪れた中国人は、清潔さや安全、環境、サービスに感銘を受けて帰ります。まさに成熟の日本が出番を迎えているわけです。

 90后世代の育った環境、その価値観、考え方で危惧されるところを見れば、

 躾や社会での協調性など彼らに対する日本の教育面での出番も少なからずあります。私は7年後には中国人の海外旅行者が1億人時代になり、そのうちの10%の旅行者を日本に受け入れるべきと常々話していますが、90后世代の教育受け入れにも力を注ぐべきと思います。

 ただ、彼ら90后世代が、将来の中国社会を背負う存在になるかには、危惧されることもあります。

 中国の過酷な歴史は「個人顧個人」といわれ、人が自分のことだけを考えて生きる社会を生み、それが現代中国人の自己本位ともなってあらわれています。

 私は中国人の持つ自己本位が中国社会を不安定にする大きな要素だと思っています。中国はこれからいろんな変化と価値観に向き合いながら進む時代となります。

 豊かな人が先に豊かにと豊かさのみを求めてつき進んだこれまでの時代と異なり、環境に向き合い、また福祉のための移転支出を高め、そこで起きる財政の分配問題とも向き合わねばならなくなります。

 1981年、中国が改革開放に向けて舵をきった時、財政支出の比率は経済建設1に対して社会文教支出が0.34でした。それは90年に1対0.54、2000年には1対0.76と高まり、06年になりそれが同じ水準に達し、これから社会文教支出への支出が高まります。

 私は中国のリスクは貧しさから生まれるのでなく豊かさの中にこそ、リスクがあると思っています。なぜなら中国の格差は日本と異なりエネルギーであり、

 競争のなかった中国では、格差が前に向かう原動力になっているからです。

 今から30年前には上海の人たちは夜、玄関のドアを開け放したまま眠っていました。それはみんなが平等で共に貧しく、盗まれるものもなかったからです。

写真4

高速鉄道とモップ

 少し、本論からそれますが、前回このコーナーでご紹介した中国の高速鉄道が広州を出て武漢の駅に到着すると、すぐにモップを持った多くの女性が横一列に並んで列車の水洗いを始めます。多くの日本人はそんなミスマッチの光景を見れば笑いますが、私は時速394キロの高速鉄道とモップの女性、これこそが中国の驚異であると思います。先端技術と遅れた中国が共存している姿に、計り知れない中国の潜在的成長力、底力が感じられ、これが中国の延々と続く驚異の成長の源であるとそれらの光景を見るたびに感じます。中国熱はそのモップの女性から湧き出しているからです。

 移転支出が高まった時、中国人が自己本位を抑えてそれをすんなり受け入れる社会となるかが中国の安定を左右すると思います。

 都会の90后は、そんな中国人の自己本位の中で育った世代です。

 一人っ子、豊かさがまるで栄養素のように、その自己本位をさらに際立たせるなら、社会の不安定性も増してきます。

 しかし、共に同じ方向に向かっているとは言え、中国には、今はもう一方の極にいる、異質の90后、農村の90后がいます。

 生き方、価値観の異なる90后同士が、中国社会にどんな影響を与えるかは、非常に興味のある問題であるとともに、捉え難い問題でもあります。

 お互いが融合して、バランスのとれたところに納まるのか、2020年以後の中国を読む上でも大きな課題であると思います。


PROFILE

和中 清

和中 清:
㈱インフォームを設立、代表取締役

昭和21年生まれ、同志社大学経済学部卒業。
大手監査法人、経営コンサルティング会社を経て昭和60年3月に㈱インフォームを設立、代表取締役就任。
国内企業の経営コンサルティングと共に、1991年より中国投資のコンサルティングに取り組む。
中国と投資における顧問先は関西を中心に関東・甲信越・北陸から中国・四国と多くの中小企業に及ぶ。

主な著書・監修

  • 経営実践講座(ビデオ・テキスト全12巻) 制作・著作:PHP研究所
  • 自立型人間のすすめ(ビデオ全6巻)  制作・著作:PHP研究所
  • ある青年社長の物語~経営理念を考える~ (全国法人会総連合発行)
  • 経営コンサルティングノウハウ(ビデオ全4巻+マニュアル1冊) 制作・著作:PHP研究所
  • 上海投資ビデオシリーズ全4巻 (協力;上海市外国投資工作委員会)
  • 中国市場の読み方~13億の巨大マーケット(明日香出版)
  • 中国マーケットに日本を売り込め(明日香出版)
  • 中国が日本を救う(長崎出版)

さくらサイエンスプランウェブサイト

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