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【11-008】“面子主義”と中国経済

和中 清(㈱インフォーム 代表取締役)     2011年 6月29日

裏経済、己がつくり己が乗るなり

 前回この欄では中国の裏経済を考えました。中国の裏経済は社会主義の体制の中で生まれ、市場経済社会の成長とともに増殖しています。

 言わば裏経済は、中国にとって「己がつくり、己が乗るなり」で、中国の国家体制そのものが裏経済を生む源になっています。1958年、戸籍登記条例が交付され人口流動制限管理が始まりました。そして1963年に農業戸籍、非農業戸籍の戸籍二元管理制度がスタートしました。それから現在まで農村から都市への戸籍移動は制限され、今も都市の常住人口は都市戸籍を持つ人と持たない人に分かれます。現在、上海の常住人口は約2500万人ですが、うち上海戸籍がある人は1412万人で戸籍人口と外来人口の比はおよそ3対2です。

 流入人口の増加と都市戸籍の制限で、5年後にはそれは1対1になると予測されます。

 その地に戸籍のない外来人口が増えれば、政府の管理も困難になります。就業証を持たず、労働契約もなく、また営業許可証もなく仕事や事業をする人が増加して裏経済が拡大します。その地に戸籍を持たない身軽さもそれを助長します。

 北京では、外来人の仮住まいとなりやすいビル地下の小部屋での居住を制限し、多くの外来人が従事する市内の雑貨販売を規制していますが焼け石に水の感がぬぐえません。

 また社会主義体制のこんな問題もあります。

 今中国では、26の省市区の公安局長が政府幹部を兼任しています。例えば上海公安局長 は副市長を兼任し、重慶公安局長も副市長を兼任しています。西蔵公安局長は自治区政府の副主席です。公安局長が市委常務委員や省委常務委員、省長助理を兼ねるなどが見られます。政府役人の不正を取り締まる側がその組織の一員でもあるわけです。

 一方、裏経済は社会主義の歴史とも深くつながっています。

 現代中国の歴史は百花斉放運動、反右派闘争、大躍進政策、さらに文化大革命など過酷な闘争と粛清の歴史、言わば共産主義の挫折の歴史です。

 1960年代の中国は、人が人に苦痛を与える「人整人」の社会と形容され、70年代の中国はそれから逃れるために裏口を頼んだ「人託人」と形容されます。

 そして80年代は、運命に翻弄された人々が、どうしようもないというあきらめ“没法子”とともに、自分のことだけを考えて生きる「個人顧個人」と形容されます。

  裏口社会は有名な「走後門」の言葉がそれを端的に現しています。

 「中国人」(フォックス・バターフィールド著、時事通信社)に、あるおばあさんが配給品をもらうため長い列にならび、いつまでも順番が来ずに途方に暮れていた時、自分が求める品を手にした婦人から、“裏に別の扉があるのよ”と言われて裏に回ると、扉には鍵がかかり、別の人から、婦人が言ったのはその扉でなく、あなたや私には決して開かない扉ですよと教えられた裏口社会のエピソードが紹介されています。

 最近も広東省深圳と恵州港の税関で幹部が関税の便宜を図り、月20万元の手当を企業から得ていたとの事件が明るみに出ました。人々の身近な生活でも運転免許をとる時さえ数百元で便宜を図ってもらえるなど今も走後門は連綿と受け継がれています。

 また先ごろ、購買カード、プリペイドカードの管理規範に関する意見が政府より発表されています。発行に実名を取り入れ、個人の不記名カードの上限を1千元まで、記名カードの上限が5千元とされました。また企業が一度に5千元以上、個人は5万元以上のカードを購入する時、銀行振り込みで支払うこととされました。

 中国では春節や国慶節に関係先、さらには政府関係者に購買カードや交通カードを渡すことが慣例化しています。紅い紙袋“紅包”に少額の購買カードを入れて始まった心情的な交わりの一歩がいつしか“権銭交易”と言われる不正にも発展します。また“紅包”は、その習慣に不慣れな外資企業の悩みの種の一つです。

 購買カードが賄賂につながり、またマネーロンダリング防止のために実名制が取り入れられました。しかし千元のカードが実名なら999元の無記名カードが発行されるのも時間の問題です。またカードがだめなら、他の対策がすぐに出るのも中国ならではで、いつものように“規制と対策”のエンドレスのモグラ叩きが繰り返されます。

 今年、中国では電力不足が深刻化しています。いくつかの複合要因がありますが、大きな原因は石炭価格の高騰で、発電すればするほど赤字になり、電力会社が発電を抑えているからです。今年の1月~5月まで五大電力集団の火力発電業務損失は122億元に達しています。中国では火力発電が80%を占めるのでその影響は大きいと言えます。

図1

 しかしその一方、中国の石炭産地の陜西省で多くの石炭富豪が生まれています。

 陜西省楡林市の神木県、府谷県は人口71万人の県ですが、4千人を超える石炭億元富豪が生まれています。神木県農業商業銀行には2百億元以上の預金があり、大手銀行にもそれと同じ額の預金があると言われます。両県の人口1千人あたり、5.6人の石炭億富豪が存在することになります。その億富豪の一方では、今も走行する石炭貨車の上に積み上げられた石炭を落として盗む行為も見られます。

 また今、中国政府は不動産価格の沈静化に躍起です。不動産業への貸付を抑え、流入する外貨の管理も強め、さらに低価格保障性住宅、政府が土地を安く供給して販売価格の上限を指定した安居房と呼ばれる低価格住宅の建設を拡大するなどの政策を打ち出しています。今年、その低所得者向けの保障性住宅の建設が1千万戸追加されました。5月末時点でその工事は土地の供給や工事資金などの問題で計画の34%しか開始されていませんが、追加の1千万戸は2010年1年間の商品住宅販売数に相当する大変な数です。

 今年各地で住宅価格が低下しているのはそれらの政策の影響が大きいと言えます。しかしその一方で、今年の5月、北京の釣魚台の国賓館近くのアパートが1㎡の最高価格が30万元、およそ370万円で売り出されました。一軒の広さは、千㎡以上ですから驚くべき価格です。

 また最近、広東省で不動産業者に販売価格を顧客に明示して販売するように指導が行われています。政府の価格指導を逃れ、税金を逃れるためにあえて価格を公表しない、言わば相対売の販売が多いからです。

 私はこんな事例を見るにつけ、社会主義市場経済とは何者との思いにとらわれます。

 中国は市場経済を利用して成長しました。しかし気がつけば国を挙げて市場経済にどっぷりと浸かり、もはや社会主義的コントロールは困難な状況になっています。言わば「庇を貸して母屋をとられる」のが、社会主義市場経済が辿る道ではないでしょうか。

 電力不足と石炭億元富豪も社会主義の国でどうしてと思うのが大方の日本人の感覚だと思います。庇を貸した結果が、億富豪以上に政府系関連企業も利得を得て、抜き差しならない状況になっているのが今年の電力不足の裏に読めるような気がします。

 だから社会主義市場経済は社会主義が管理する市場経済でなく、ただ社会主義がそれを利用しているだけの経済と見る方が適切ではないでしょうか。

 一頃、日本では多くの知識人が社会主義市場経済を指して、中国のイデオロギーの矛盾を指摘しました。しかし多くの人々が社会主義からの脱出口を夢見ていた時に市場経済が現れたわけですから、イデオロギーの矛盾など生じるわけがありません。正に黒い猫でも白い猫でも豊かになれれば何でもいいというのが中国人のイデオロギーなのですから。

 日本人と違い、そもそも「管即停、放即乱」、管理すれば停滞し、放置すれば乱れるといわれる中華民族そのものが社会主義には不向きな人種です。本来世界の中で社会主義と一番対極に位置すべきなのが中国ではないかとも思います。

“面子主義”の中国

 裏経済とともに中国経済をとらえる時、避けて通れないのは“面子経済”です。

 中国は“面子主義”の国と言われますが、面子は社会に深く根をはり、なんとも御しがたくその複雑な姿が政治、経済、また社会生活に現れます。

 靖国問題で日中間が揺れ動いた時、多くの日本の世論は、靖国参拝は“日本人の心の問題”でした。時の小泉総理もその態度で参拝を続け日中間が混乱しました。その善悪はともかくとして、問題がこじれた背景には面子も大きく影響しました。胡錦濤主席は国家主席と同時に13億人の中国人の面子を背中に背負った存在です。 

 面子が立たない局面になった時、中国人は日本人には理解できないほど攻撃的になります。それでなくても言葉の少ない総理が心の問題とだけ語り、参拝の姿だけが映像で流れたわけですから中国人の面子を潰すのにこれほどいい材料はありません。

 私もこれまで20年の中国でのビジネスや生活体験で何度もこの御しがたい“面子主義”の洗礼を受けました。今も困ることの一つは、仕事の場で何か問題が起きた時です。よくものの本に、中国人には人前で叱ってはいけないと書かれています。

 私は叱ることは教育だと考えますから、問題が起きた時に人前で叱れないことは教育の機会を逃します。いつかA君の問題にB君もC君も遭遇することもあるわけですから。

 だから私は敢えてタブーを犯して人前でも大きな声で叱りますが、心の中ではいつも“面子主義”との葛藤が生まれます。また、叱られた時、中国人からは“私は言われたことをしているだけ”、なのにどうしてという言葉が返ります。日本人と中国人では考え方が違い、どうして自分が叱られるのかわからないことが度々あります。だから起こると同時にくどいほど理由を説明し、叱った人にあなたの教育なのだとのフォローも大切です。

“面子”が成長率を押し上げる

 このような中国の“面子主義”は裏経済とともにその経済に大きな影響を与えます。

 政府は2012年の経済成長率目標を8%に設定しています。しかし地方では内モンゴルや貴州省は13%、重慶は13.5%の成長目標です。

2010年の主要都市の経済成長率
  都市名 GDP金額(億元) GDP成長率 省名
1 上海市 14,900.93 8.20% 上海
2 北京市 11,865.90 10.10% 北京
3 広州市 9,112.76 11.50% 広東
4 深圳市 8,201.24 10.50% 広東
5 天津市 7,500.80 16.50% 天津
6 蘇州市 7,400.00 11% 江蘇
7 重慶市 6,527.00 14.90% 重慶
8 杭州市 5,098.66 10% 浙江
9 無錫市 5,000.00 11.50% 江蘇
10 青島市 4,900.00 11% 山東
11 佛山市 4,814.50 13.50% 広東
12 武漢市 4,500.00 13% 湖北
13 大連市 4,410.00 15% 遼寧
14 成都市 4,380.00 10% 四川
15 瀋陽市 4,350.00 14.10% 遼寧
16 寧波市 4,214.60 8.60% 浙江
17 南京市 4,170.00 11.50% 江蘇
18 唐山市 3,800.00 11% 河北
19 東莞市 3,763.26 5.30% 広東
20 煙台市 3,720.00 12.40% 山東
21 鄭州市 3,365.00 12% 河南
22 済南市 3,350.00 12% 山東
23 長沙市 3,300.00 14.50% 湖南
24 ハルビン市 3,258.10 13% 黒龍江
25 石家荘市 3,110.00 11.10% 河北
26 泉州市 3,002.12 12.50% 福建
27 長春市 2,919.00 15% 吉林
28 維坊市 2,791.00 12% 山東
29 南通市 2,760.00 14% 江蘇
30 西安市 2,719.10 14.50% 陝西
写真1

高速鉄道上海虹橋駅コンコース

 中国では地方政府幹部のキャリア評価にはまだ量的尺度、GDPに重きが置かれます。それもあり地方の成長目標はどうしても高くなります。環境や福祉も重視されるようになれば中央と地方の成長目標も、もう少し噛み合うようになるでしょうが今はまだそうではありません。加えて地方の“面子主義”があります。内モンゴル自治区や貴州省はまだまだ発展の遅れた地域です。貴州省はついこの前まで、「天に3日の晴れなし、地に3里の平地なし、家に3分の銀もなし」と言われたほど貧しい土地だったわけですから“面子のエネルギー”が人一倍貯まっています。幹部評価や面子主義が地方のGDPを高く押し上げ、結果として中国の成長率は政府発表の8%を上回る結果に働きます。

 北京オリンピックや上海万博は中国の面子を保ち溜飲を下げた出来事でした。

 今年の6月末には待ちに待った北京上海高速鉄道が営業運転を開始します。上海から北京までの1318㎞を開業時は時速300㎞、近い将来350㎞以上で走り4時間で北京、上海を結ぶ高速鉄道は、正に長年の中国の面子が夢見た姿です。1978年、鄧小平は日中平和友好条約締結文書の交換式に出席するため日本を訪問して新幹線に乗車しましたが、きっとその時から面子が大きなエネルギーとなっていったのでしょう。

 成長し、成熟した日本の社会から見れば面子よりもっと大切なことがと考えるかもしれません。しかしまさにデイナーのテーブルについたばかりの中国では人々の面子があってこそ国を挙げて豊かさに向い進めるのでしょう。

“面子工事”も経済に刺激を与える

写真2

5車線に拡幅された高速道路/アパートの塗装工事

 面子主義は、中国経済を過熱に導きます。世界一、アジア一、中国一は政治家、経済人の価値基準となり、全国で世界一、中国一の話題が生まれます。予算仕分けで、二番ではいけないのですかと問われる日本から見れば、少し羨ましい感もありますが。

 最近も重慶の“世界一の航路標識塔”建造が、その費用があまりに大きいので“面子工事”だと指摘されています。上海の東方明珠に対抗して3500万元が費やされたうえ、工事途中で爆破された“三峡の明珠塔”や重慶奉節県の移住者の記念塔、“華字塔”の前例がまた繰り返されるのではと心配されています。

 また、湖南省長沙市ですべての通りに面する住宅をタイルに貼り直すなどの約1億元かけて行われる地域環境整備事業が面子工事ではないか、財政のムダではないかと話題になっています。中国の地方の多くは“第一のコンプレックス”に陥っているとも言われますが、面子工事は地方も大都市にも共通することです。

写真3

ユニバーシアード会場

 2008年に北京でオリンピック、2010年には上海万博、広州でアジア運動会、今年は深圳ではユニバーシアードがあります。深圳の市内から会場の龍岡区に至る道路は片側3車線が5車線に拡幅されました。国際的な催しの前には、開催地では必ず道路に面したアパートやビルの塗装が塗り替えられます。塗装でダメなものは道路から見えないように高い塀で覆われます。8月にユニバーシアードが開催される深圳では会場周辺の工場や商店は会期中、政府から営業停止の強制措置が出ています。

 上海では1994年に467mの東方明珠テレビ塔が竣工しましたが、1998年には421mの金茂大厦、2008年に492mの上海環球金融中心が竣工し、またさらに上海環球金融中心の隣では2014年の竣工を目指して632mの上海タワーが建設中です。また内陸都市の面子なのか、“第一のコンプレックス”なのか、2015年の完成を目指して重慶では458mの国際経貿中心が建設中です。

写真4

上海環球金融中心と金茂大厦

 中国の都市はどこでも旧市街から離れて新区が開発されています。そして新区に図書館などのすばらしい文化施設がつくられます。しかし多くの人が居住する市街から遠く離れているため訪れる人もまばらで、文化も面子でとらえられているとの批判も起きています。

 国土が広く地平線を見て生活をしてきた中国では目立つということがDNAに刻まれているのでしょうか。一般の中国女性も公園で写真を撮る時さえ、自然にモデルのようなポーズになります。だから社会のいろんな分野で、世界一や中国一が競われます。

 土地購入では一番の“地王”が毎年現れ、1㎡30万元の住宅が話題になり、テレビコマーシャル落札額一番の“褾王”が次々に生まれます。芸術、美術の世界でも記録が更新され、中国の美術品は億元時代に入ったと言われます。著名なオークションの2011年春拍会では斎白石の松柏高立図が4.255億元で落札されて中国現代画の記録を塗り替えました。

 また陳逸飛の代表作の山地風は8165万元で中国油画の最高を記録しています。

CCTV 中央テレビ局ゴールデンタイム広告落札企業(褾王)の推移
企業名 業種 金額(百万元)
1995 孔府宴酒 31
1996 秦池酒 67
1997 秦池酒 320
1998 愛多VCD 電機 210
1999 歩歩高 電機 159
2000 歩歩高 電機 126
2001 娃哈哈 飲料 22
2002 娃哈哈 飲料 20
2003 熊猫手机 携帯電話 109
2004 蒙牛 牛乳 310
2005 宝潔 女性用品 380
2006 宝潔 女性用品 394
2007 宝潔 女性用品 420
2008 伊利 牛乳 378
2009 納愛斯 洗剤 305
南方都市報 2009年11月19日

成長する農村の“面子経済”

写真5

飛行機の中の黄色い帽子(農民旅行)

 今年の第一四半期、中国のテレビの販売台数は前年比マイナス5.2%でした。しかし薄型の液晶テレビは5.2%の増加。プラズマテレビは19.1%の増加で、中国メーカーのTCLの3月の液晶テレビの売上は前年比25%増でした。

 中でも第一四半期の農村での液晶テレビの販売は前年比21.7%の増加です。

 2010年の第一四半期から農村での薄型テレビの出荷量が都市を超えはじめ、今年の第一四半期にはその状況が鮮明になっています。家電を農村にという家電下郷の売上は2011年の第一四半期は270億元ですが、その多くが薄型テレビで、創維は今年の家電下郷に55インチの液晶テレビを投入しています。

 正に農村の“面子市場”が動き出しています。農村の面子市場はテレビ以外に既に住宅

 が動き、3階建ての新住宅が農村にどんどん拡がっています。さらに面子市場はクーラーやバイク、さらには小型車、そして旅行などのサービス市場に向かい始めています。

 最近中国の国内便に乗ると黄色い帽子をかぶった農村旅行者が目立ち、農村を車で走ると保険会社の看板が目立っています。

 それを支える背景には前にこの欄で紹介した農民工の故郷送金があります。最近も私の身近にいる農民工に、今いくら送金していると尋ねると給料全額送金しているよというツワモノもいました。さらにそれに加えて農村の大きな変化がその背景にあります。

 今、中国版一村一品運動があちこちで展開されています。豆製品加工、仔豚繁育基地、苗や花卉基地など、村が主導して農民専業合作社を設立して新産業を興し、その結果、農家の現金収入が増加しています。農民家庭総収入の60%以上をそれらの収入で稼ぐ農家も増えています。自ずと現金収入が農村の面子市場を刺激することになります。

図2
図3

“面子主義市場経済”で突き進む中国経済

写真6

上海市財政局ビル

 “面子主義”は経済に刺激を与える反面、過熱と多くのムダも生みます。

 それが典型的に現れるのは面子が権威と結びつく時です。中国では都会も地方もどこに行っても政府庁舎の威容に驚きますが、面子が権威と繋がるために建物は大きくなります。

 中国では、どこかの街が何かの都市宣言をすれば、我も我もとあっという間にそこに集中するという“面子競争”が起こりがちです。多くの都市が総部基地宣言をして、世界企業の本部を取り込むために競い、中身はまだ伴わなくとも緑色都市宣言をして環境関連企業の誘致を目指します。新エネルギー自動車の推進都市は全国で13都市に及び、公共交通やタクシーへの新エネルギー車の導入を進めています。

 2010年の中国の新素材産業規模は800億元以上で、「中国新素材産業発展報告」の予測では、2015年までにその規模は2千億元に拡大すると見られています。

 そのため全国にすでに7ヶ所の新素材国家ハイテク技術産業基地や70余の新素材関連特色産業基地が誕生しています。さらに今後、国家級新素材園区や産業基地の数を100以上とする計画が掲げられています。

 現在、中国の風力発電設備容量は世界一となっています。しかし逆に風力発電設備機器企業の淘汰が始まっています。上位10社で国内市場の80%を占める中で100近い企業が乱立しているわけですから自ずと供給過剰、価格低下が起き、利益率は低下して3~5年内に80%の企業が消失すると言われています。

 このような例からも一部の産業では供給過剰と面子が表裏の関係にあるとも言えます。

 考えて見れば人間の経済社会では“ムダ”と“実”と“楽”とは紙一重なのかも知れません。もったいない、節約を唱えながらも、一方で消費を奨励しなければ経済社会が成り立たないという側面を持っているのが人間の経済社会なのでしょう。

 先ごろ日本のテレビで長寿のDNAが取り上げられました。カロリー制限により眠っているDNAを起こせば、長寿の仲間入りができるということですが、仮に日本人の全員が摂取カロリーを30%減少させれば、健康長寿と引き換えに、食品や飲食市場は30%縮小し、皆が健康になれば医療も製薬企業も立ちいかなくなるかも知れません。年金もどうなるのか心配ですね。同じように“裏経済”も“面子主義”も功罪併せ持ちながらも管理不能、“なるようになるさ”で走り続けているのが中国経済、社会主義市場経済というより“面子主義市場経済” という言い方が当てはまるのが中国経済なのかもしれません。


PROFILE

和中 清

和中 清:
㈱インフォームを設立、代表取締役

昭和21年生まれ、同志社大学経済学部卒業。
大手監査法人、経営コンサルティング会社を経て昭和60年3月に㈱インフォームを設立、代表取締役就任。
国内企業の経営コンサルティングと共に、1991年より中国投資のコンサルティングに取り組む。
中国と投資における顧問先は関西を中心に関東・甲信越・北陸から中国・四国と多くの中小企業に及ぶ。

主な著書・監修

  • 経営実践講座(ビデオ・テキスト全12巻) 制作・著作:PHP研究所
  • 自立型人間のすすめ(ビデオ全6巻)  制作・著作:PHP研究所
  • ある青年社長の物語~経営理念を考える~ (全国法人会総連合発行)
  • 経営コンサルティングノウハウ(ビデオ全4巻+マニュアル1冊) 制作・著作:PHP研究所
  • 上海投資ビデオシリーズ全4巻 (協力;上海市外国投資工作委員会)
  • 中国市場の読み方~13億の巨大マーケット(明日香出版)
  • 中国マーケットに日本を売り込め(明日香出版)
  • 中国が日本を救う(長崎出版)

さくらサイエンスプランウェブサイト

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