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【08-003】光触媒の中国での現状とダイヤモンド電極の新しい応用―第7回CRCC研究会基調講演(平成20年2月26日開催)

只 金芳(中国科学院理化技術研究所教授)   2008年3月20日

藤嶋昭:

 JST中国総合研究センターセンター長の藤嶋昭でございます。本日の講師を務められる中国科学院理化技術研究所の只金芳教授をご紹介します。日本政府の国費留学生で来日、東大でドクターを取った後、日本の企業にし ばらく勤めてから、私がおります神奈川科学技術アカデミーと東大の方にポスドクとして研究をしてくれました。4年前教授で中国に戻りまして科学技術の第一 線で研究をしています。

 只さんも一生懸命光触媒のことを研究し、特に中国政府のISO、光触媒の規格化、国家規格が始まっていますけれども、その中国代表の研究者としてやって くれているということです。日本にもよく来て規格化問題、特に日本が提案しているものに対して何カ国かというか、世界中の加入している国の半数以上が賛成 しないと、日本の提案したISO案が通らないんですけれども、中国側で頑張ってくれまして、中国内での光触媒の規格化をつくろうということでの活躍をして います。

今日は光触媒の中国での状況についても触れてお話をしていただきます。

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只金芳:

 皆さん、今日は。ただいま藤嶋先生よりご紹介いただきました中国科学院理化技術研究所の只金芳(シキンホウ)です。本日は、私は中国の光触媒の標準化問題を中心に中国の光触媒技術の現状及びマーケット状況にも触れてご紹介させていただきます。

  酸化チタン光触媒は皆さん御存じのように、日本発で、藤嶋先生が最初に発見された技術です。セルフクリーニング効果、アンチバクテリア、抗菌性効果及び水処理と空気浄化といった4つの基本的機能を持っています。 

 この光触媒技術は、大変すばらしい技術です。これまで証明されたように、我々が研究しているいろいろな汚れや汚染を取り除くのにとても有効な技術であることが分っています。 

 日本の市場には、新しい光触媒技術を応用したたくさんの商品が出ています。中国も同じ、光触媒技術から生まれた商品がいろいろ出回っています。中には効果のないニセモノも見受けられます。 

 中国ではこの光触媒の技術は、2000年以降から流行り出しています。現在世界ではインフォメーションの伝達がとても速いので、たくさんの中国人留学生 や技術者によって日本からすばらしい技術を紹介されています。日本の商品が中国に紹介されるスピードも大変速くなっています。

 最近、中国では、特に我々のような中国科学院傘下の研究所や大学では、政府のサポートを得ながら、いろいろな基礎研究や技術開発プロジェクトを立ち上げて、世界をリードするすばらしい研究成果を上げています。 

 最近、科学院の研究所では、太陽光線を利用した太陽電池に関する研究が多くなっています。そして、もう1つの傾向は、紫外線の活性光触媒が可視光の活性光触媒の研究開発に移っていることです。これが中国における光触媒に関する基礎研究の現状です。

 光触媒技術を応用した商品は、元々日本製のものが多いですが、日本製を真似したものもたくさんあります。中国は市場が大きいだけでなく、なにもかも大きい と、日本人が思っています。私もそう思います。大きい市場ではありますが、実はその市場はディスオーダーであり、いろんなニセモノが出回っています。日本 や韓国、台湾からたくさんの光触媒の商品が出ており、中国で作られたものもたくさんありますが、これらの商品が本当に役に立つのか、機能するかどうかは分 らない。ですから最近、大きい市場である筈なのに、多くのビジネスマンや企業は市場から撤退しています。 

 中国で光触媒の商品がブームになったのには、2つ原因があります。1つ目の原因は、2003年のSARS流行のお陰で、人々が室内をきれいにしようとす るようになったためです。アンチバクテリア、抗菌性のある家庭用品に対する需要が増えたため、色々な光触媒の商品が市場に出てきました。

 もう1つの原因は、中国で新しい家を買った場合、内装は全部自分でやることになっています。その内装材料のほとんどが有機溶剤とか有機物を使っているの で、人体に有害な物質がどんどん放出され、室内の空気を悪くしていることを、皆が気にしています。室内の空気をきれいにするため、例えば壁に光触媒のコー ティング剤をスプレーすると空気がきれいになるとか、会社の宣伝を皆が信じてやっているケースです。この2つの原因で酸化チタンがブームになったことが分 ります。

 ここに示しているのは中国市場でよく見かけられるいろんな酸化チタンの商品です。主にコーティング材です。いろんなタイプのコーティング材が出ています。

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 例えば、このスプレータイプは、車の中でスプレーすれば車がきれいになると宣伝されていますが、よくガソリンスタンドで売られています。しかし、このスプ レーが車の中あるいは室内のいろんなところでスプレーして、本当に効果があるかどうか、消費者は全然わからないのです。スプレーすれば安心するというそれ だけのことです。

 空気清浄機には、大型のものと、車の中で使う小さめのものとか、いろんなタイプのものがあります。光触媒だけを使ったものにはそんなにいい効果がないことが分ったので、光触媒と活性炭を組み合わせたタイプの空気清浄機が市場でよく売れています。 

コーティング材以外の光触媒の商品としては、日本と同じようにタイルとか、飾りの花などがあります。この中国らしい飾り物は、どこに酸化チタンが入って いるのかよく分らないが、酸化チタンの光触媒の飾り物と書いてあります。SARSのときは光触媒のマスクやタオルもよく見かけられました。

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 これはある会社の宣伝です。バス全体を光触媒でコーティングしたことを示しています。これはスプレー用のマシンです。今は、スプレー材を生産している会社がたくさんあります。ランプやフィルターを作っている会社もあります。

 次に光触媒に関する主な研究機関と企業を紹介します。中国で一番有名な研究機関は福州大学の光触媒研究所ですが、中国で一番早く建てられた研究所 で、中国政府の要人もよくここに視察に来られます。この研究所が一躍有名になったのは、2003年SARSが流行した時、光触媒空気清浄機の第1号機を製 造して北京に送ったからです。

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 もちろん大学とか我々の中国科学院の中にも、世界をリードする研究を行っているグループがたくさんありますが、ここでは紹介致しません。 

 企業の方は、2000年頃からたくさんの企業が酸化チタン製品の製造、販売を行っていますが、最近撤退する企業が増えています。私が全部調べた訳ではあ りませんが、今知っている範囲では、広州にあるOWELLという光触媒専門の会社が事業を継続しています。上海Taifu Nano Science Technology Co., Ltd.は光触媒の会社で、いろんなタイプの空気清浄機を製造販売しています。国内だけでなく、マレーシア、インドネシアにも製品を輸出している有名な会 社です。

 広州にあるGuangzhou Harvest Aoinn Special Material Technology Co., Ltd社の一番の特徴は水処理です。酸化チタンニッケルフォームを用いた浄水用フィルターなどを製造販売している会社です。

  中国における光触媒のブームは現在大分下火になっていると言えますが、1つの原因は光触媒の特徴によります。紫外光を使う光触媒の反応が遅いので、消費者 がその機能を目で確認するのが結構難しいからです。多くの光触媒の商品は室内で使われています。室内の紫外線がそれほど強くないため、効果が現れにくいの です。このことに関連して、中国人の光触媒の知識は日本のそれより低いと、私個人が思います。日本には光触媒ミュージアムが作られて、実験などを通じて光 触媒のメカニズムに関する知識の普及や宣伝などを行っています。また、藤嶋先生のようにいろいろな講演活動を行われている方がおられます。中国では、この ような宣伝、普及活動が殆ど行われず、消費者の認識度が低いと思われます。 

 もう1つの原因は、03年光触媒がブームになってから、皆が使っている間にニセモノがどんどん市場に出て来て、使っても使っても一向に効果が現れないため、酸化チタンは思ったほど効果がないという悪い印象を消費者に与えてしまいました。

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 それから、商品に対する検査方法が確立されておらず、判断基準がないということは一番大きな原因だと思います。つまり、一体この商品に効き目があるのかな いのか、判断基準がなく、機能を確認する方法がないのです。我々は上記問題に対処するため、私が03年日本留学から帰国後、いずれも東京大学工学部藤嶋昭 研究室で酸化チタン光触媒の反応を学んだ仲間たちと一緒に、中国の光触媒標準化委員会という組織を立ち上げることにしました。

 そして、昨07年に政府から中国光触媒協会の設立が承認されました。なかなか難しい承認申請でしたが、それがやっと認められました。協会の仕事は、主に 企業や研究機関の人が中心になって、標準化の規格を制定することです。他に市場指導も行おうとしています。その前に、標準化委員会が04年3月に設立され ていますが、テスト方法や規格などの提案について検討する組織です。機能別に抗菌性、空気清浄、セルフクリーニング及び水処理の4つのグループに分かれて います。大学、研究機関と企業関係者が参加メンバーになっています。

 07年標準化委員会で行われた各グループの提案及び検討状況は以下の通りです。

 抗菌性グループは07年初に正式提案を行い、日本のJISに相当する中国国家標準(GB)番号が既に発行されているので、本年10月までに提案に対する 審査結果が出る予定です。セルフクリーニンググループもテスト方法についての提案を出しており、審査結果待ちです。空気グループと水グループは引続き提案 内容を検討中であり、09年中に纏める予定です。

我々の組織は日本及びアジアとの交流も積極的に推進しています。

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 中国と日本は、07年から可視光の光触媒の抗菌性標準ISOに向けた日中共同提案について検討を行っていますが、つい昨日(2月25日)共同提案 を行うことが決まり、08年4月からスタートし、2年間の準備を経て、2011年にISOに提案することを正式に決定しました。 中国光触媒協会は日本光触媒工業会(PIAJ)ともいろいろな交流を行っています。

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 今日はどうもありがとうございました。

藤嶋:

 どうもありがとうございました。中国における光触媒、特に規格化あるいは製品が今どうなっているかと いうことについて最初に話してもらいました。特に今は日本と協力をしてもらいながらISOにも中国と一緒に提案していこうということで、特に抗菌性につい ての共同研究、共同提案ということでやっているという現状もお話ししてもらいました。

 最後はダイヤモンド電極の、只先生御自身でやっていることの現状についてということで、非常におもしろい成果を今上げつつあるということでありました。御質問がある方はどうぞ。 

馬場:

 私は前中国総合研究センター長、東京理科大学専門職大学院の馬場と申します。どうも興味深いレクチャーをありがとうございました。

 私の研究室の院生が今年の修士論文のテーマで光触媒の標準化について書いています。女性なんですけれども、彼女の研究論文を読むと、日本の企業、それか ら大学の研究者の中での光触媒に対する標準化、国際標準化、こういうものに対する関心が非常に薄いという結論を出しているんですが、中国ではいかがでしょうか。

 只: 中国での光触媒の標準化に対する関心はとても高い時期もありましたが、今は関心が薄い時期だと思いま す。04年から05年にかけて、商品がたくさん市場に出回って、買われた時期は皆高い関心を持っていました。今は、消費者の方は関心が薄れていますが、企 業の方は製品をできるだけ売りたいので、標準化の制定に高い期待を寄せています。

大根:

 どうも大変興味深い発表いただきましてありがとうございました。私は愛知工業大学の大根と申します。 先ほど中国でこの光触媒、酸化チタンの効果のないもの、ニセモノが出回っているというお話を伺いました。この効果がないということは、材料自体がニセモノ なのか、それとも使い方が間違っていて効果がないのか。

只:

 それも確かに先生がおっしゃったように両方あります。中国の多くの消費者は室内で使って効果のあるよう なものを望んでいます。建物の外壁に塗って空気をきれいにすることには、余り関心がないようです。企業やビジネスマンが消費者の心理に目を付けて、室内で 使って効果があると宣伝したので、皆室内でコーティングするようにしました。しかし室内で利用できる紫外線の量がわずかなため、使って本当に効果あるもの はもともと少ないのです。もちろんニセモノもあります。 

 ニセモノの中で私が一番よく知っているのは、酸化チタンのパウダーにアルコールとか表面活性剤を混ぜてコーティング剤としてスプレーにする商品があります。

大根:

 要するに、活性化しないところに使ったら、ニセモノとかだめなんだというような評価なんですね。

只:

 それもあります。

藤嶋:

 今光触媒は可視光、部屋の中で使う壁紙とか天井材に対して一生懸命研究していますけれども、まだ本当 に効果のあるものは日本でもなかなか難しい状況です。そういう点で普通の酸化チタンを買ってきて混ぜって塗って効果があるなんていうことはあり得ないんで すけれども、それをいろいろ宣伝がなされているわけですね。

 今日は、中国の若手の研究者から直接最先端のお話を伺いました。ありがとうございました。また定期的にこのような研究会をやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。

 只金芳

只 金芳:
中国科学院理化技術研究所教授

略歴

87年、中国南開大学化学系有機化学専攻修士。
87〜90年、南開大学化学系教師。
95年、東京大学大学院工学系研究科応用化学工学博士。同年日本メクトロン社に就職。
00〜03年、日本科学技術振興事業団特別研究員。
03年7月、中国科学院理化技術研究所の"海外優秀人材引進計画”に選ばれて帰国。
現在、中国科学院理化技術研究所研究員(教授)。主に光電気機能材料、電気化学センサーの研究に従事する。


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