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【09-010】中国深セン科学・生活博覧会にJST北京事務所出展 -開幕の式典にJST小原審議役が招かれ出席-

中国総合研究センター フェロー 米山春子 記

写真1

 2009年9月24日(木)~27日(日)中国科学技術協会と深セン(深圳)市政府主催の「以人為本・科学生活」(人を中心にした科学的な生活の実現)をテーマとした中国深セン科学・生活博覧会が深セン市園博園で開催された。独立行政法人科学技術振興機構(JST)産学連携事業本部担当小原満穂審議役は、中国科学技術協会の要請を受け、開幕の式典に出席した。

 今回の博覧会は、省資源や省エネルギー、環境にやさしい生活および住居に関連した中国内外の新製品や新技術を展示して、大学・研究機関・企業関係者の相互交流や連携の場を提供するとともに、科学的な生活に対する知識を市民に普及・増進させ、持続可能な循環型経済社会の中国での健全な発展に寄与することを目的としている。JST北京事務所においては産学連携事業本部が産学連携を長年推進して得られた成果、そしてJSTが育てたベンチャー企業の製品であるインフルエンザ対策用抗体マスクや水浄化の新技術などを展示し好評であった。博覧会場には、体験型展示や協働型展示、特許コーナーも設けられ、展示などを通じて、来場者に新製品、新技術がどのように生活に役立つかを体験してもらうなどして、各種科学技術・製品について普及、宣伝し、新製品・新発明の研究成果の技術移転や産業化の促進が図られた。

写真2

 香港の対岸に当たる深セン市は、もとは小さな漁村であった。1980年には改革開放路線を推進した鄧小平氏の指示により深セン経済特区が設置され、わずか30年足らずで急速な発展を遂げてきた。現在一人当たりのGDPが中国の都市では初めて1万ドルを突破し、中国本土で最も高い水準に達している。輸出額ではすでに香港を抜き、上海に迫っている。経済特区としていち早く外資を導入して市場経済体制の整備に力を入れてきた。近年はハイテク産業や技術力の高い製造業を中心にして、物流や金融、情報サービスの分野を産業構造の支柱として発展を続けている。深センは中国企業を中心とした技術開発体制を整備する一方、大学や研究機関、多国籍企業も誘致し、研究開発基地を作るなど、ハイテク・新技術産業の発展を促進している。これまでの四大支柱産業のほかに、深セン市では特に通信、デジタル電気製品、ソフトウェア、エネルギー備蓄材料、バイオケミカル及び医療機器、化合物半導体の6分野を重点的な戦略的産業としている。また、サービス、リサイクル・エコノミー、自動車部品と機械設備、ファインケミカル産業の発展を大いに奨励している。深センは中国では比較的裕福な地域なので香港との経済格差は小さくなっている。深センに居住する香港人は6万人に上っている。2020年に香港と合併するという噂が市民のあいだに囁かれ、いままた不動産投資が盛んである。

 深センはいったいどのような手法で発展し、今なお成長し続けているのだろうか?この解答を求めてわれわれは、深センハイテクパークにある深港産学研基地を始め、深セン清華大学研究院、深セン虚擬(バーチャル)大学園、深セン市科学技術協会、中国科学院先進技術研究院、華為技術有限公司、中国科学院広州技術移転センターなどを訪ねた。小原審議役、JSTイノベーション企画調整部野口義博調査役、JST北京事務所天野年崇副所長らは各々の訪問先でそれぞれにJSTのミッションやその経験、成果などを紹介した。同時に、訪問先の成功経験を伺い、有意義な意見交換会となった。そのいくつかについて以下に紹介する。

深セン虚擬(バーチャル)大学園

写真3

 深センハイテクパークの科学技術や人材育成の支えとしている深セン虚擬大学園は深セン市政府の指導の下で2000年に設立された。国づくりは人づくりの言葉通り、世界の知が集結する深セン虚擬大学園の取り組みはわれわれに深い印象を与えた。深セン虚擬大学園管理業務センターの謝 照傑部長(政府の役人)によればつぎのようである。この虚擬大学園は、深セン開発初期に、大学や人材不足を解決するため、深セン政府が土地および建物(ビル1棟)などを無償で提供し、内陸の大学に深センへの進出を呼びかけたのがその始まりであった。まずは最も有名な清華大学がその呼びかけに応えて進出し、清華大学の研究シーズを深センの企業と連携して工業化に結び付けるなどして著しい成果を上げた。この成功に倣ってつぎに北京大学ハルピン工業大学が進出して成功した。これらの成功によりその後、全国の多くの大学から進出希望が深セン市政府に殺到した。このため深セン政府は深セン虚擬大学園のキャンパスを設定し立派な建物を建設した。入居審査を通った大学や企業などに55m2の部屋や事務用品一式を三年間無償で提供し、内陸の大学や企業からの駐在員に手当も支給している(特区手当の支給や配偶者の仕事の世話、子供の就学・入園の周旋など)。この優遇政策により、中国国内の主要な大学のみならず海外の大学も含めて現在計53大学が進出して、一大サテライト大学基地となっている。進出している各大学の努力により、8年間を経て、すでに産学官連携の相乗効果によるイノベーションの体系を形成し、成果を挙げ続けている。これまでに累計で約7万名のハイレベルの人材を育成している。9つの産業化基地も形成した。304社の起業化を支援し、236件の技術移転を遂げた。71ヶ所の研究開発センターを設立し、97件の科学技術プロジェクトが進行中である。特許出願は136件に達した。こうして深セン虚擬大学園は中国の大学の科学技術の産業化基地の役割を果たしている。最近入居協議を結んだ武漢大学中国地質大学南京大学、香港理工大学、中国科学技術大学、香港市立大学の6校は今後4.5億元を投資して、約13万平方メートルの産学研連携と産業化の基地を建設する予定である。この6校は18件の中国政府指定の国家重点実験室をベースに、22件の大規模で高水準の産業化プロジェクトと連携して、産学研連携と産業化基地を運営する予定である。政府は成功に収めた学校や企業からの報酬などを一切求めていない。成功した企業からの税収や雇用創出、そして今後の成長をもたらす経済効果など潜在的な付加価値を期待している。日本の大学や企業もぜひ深セン虚擬大学園に進出し、日中両国の更なる交流に寄与して欲しいと、謝 照傑部長は述べている。

深港産学研基地

写真4

 JSTを何度も訪問している深港産学研基地応用研究部の馬昂副部長は基地の設立の経緯や成果などを紹介した。深センハイテクパークにある深港産学研基地は、1999年8月深セン市政府と香港大学、北京大学が共同で創設した研究基地である。香港・澳門(マカオ)に隣接した地理的環境を生かして、積極的に香港のハイレベル技術を誘致し、人的資源を有効に利用するのがこの研究基地を作った元々の目的であった。現在の深港産学研基地は、高い技術力を身につけた人材を育成し、科学技術のイノベーションと産業化を統合して、官・産・学・研・金を融合した深セン・香港区域のハイレベル産業の拠点とすることを目指している。深港産学研基地では、人材育成は重要な使命の一つであり、成立以来、北京大学と香港科技大学の学生・大学院生の教育、研修、およびハイレベルなシンポジウムの開催、教育プログラムの遂行など、高度な技術を修得した人材の教育基地になっている。とくに聴講コースでは、産学連携や最新の経済テーマを中心に開講している。また同時に、先端産業プロジェクトも遂行しており、主にバイオ、光ファイバー通信、集積回路、環境保全技術、新エネルギー技術に重点をおいて推進している。

新しい科学未来館の建設

写真5

 深セン市科学技術協会を訪問した折、周路明主席および深セン市科学館の張永華館長らの歓迎を受けた。最近、とくに中国の改革、開放以来、中国国内の科学技術館は新しい社会教育の場として、急速な発展を遂げている。中国政府は2008-2015年「科学普及基礎施設発展計画」に関連する多くの要綱を発令している。これらの計画要綱は中国の科学技術普及活動の指針であり、明確な目標も設定している。たとえば、「全国民科学素質行動計画綱要」は①各省都市や自治区首府に、大型・中型の科学技術館を少なくとも1館設置すること、②人口100万人以上の都市に、科学技術系博物館を1館設置すること、③年間延べ5,000万人の見学者を受け入れること、と計画している。この政策にしたがって、2008年末に深セン市で新しい科学館を建設するプロジェクトを立案し、2010年に建設を開始し、2013年に完成する予定であると周主席は述べた。総建設規模は約20億人民元で、現在中国で最大規模を誇る上海科学館の17億元規模を上回る見込みであるという。建設地は深セン市のハイテク区に予定している。虚擬大学園、深港産学研基地にも近い。企画関係者はJSTの「日本科学未来館」(東京台場)を何回も視察した。張館長は日本科学未来館の毛利館長と会ったばかりでとのことであった。張館長は、今後もJSTおよび日本科学未来館との交流を深め、更なる連携を図りたい、とのことであった。周主席は、深セン科学技術館の建設にあたり、日本科学未来館建設のアイディアをぜひ借りたいと小原審議役に要請した。

写真6

 この他に、中国科学院先進技術研究院および中国科学院広州技術移転センターを訪問した際、産学連携推進についての中国の政策、資金の提供方法、シーズの探し方などさまざま経験や成果を紹介された。また、中国最大の通信事業社である華為技術有限公司(ファーウェイ)本社を見学した際、華為技術日本株式会社東アジア地区程肇副総裁より、華為の歴史や理念、経営方式、R&Dなどの状況説明を受けた。華為はアフターサービスに最も熱意をもって当たっていることや、本社工場の管理システムを日本のトヨタ自動車会社に委託していることなどの説明が印象的であった。また、工場敷地の広さ(見学は車での移動が不可欠)、見学コースの完璧さ(見学スケジュールの正確さ、英語、日本語による専任説明スタッフの常駐、大型バスでも自由に回れる心遣い)、華為トレーニングセンターの立派さ(日本高級ホテル並みのデザイン、教室の設備の整備やいこごちの良さ、欧米からの社員の在籍)などを見て、とても1988年に設立された20年の歴史しかない企業と思えないものであった。

 中国深セン科学・生活博覧会の参加および各機関の訪問は、われわれに中国に対する理解を深める貴重な機会を与えくれ、大変勉強になった。今後もさらなる交流および連携を積極的に進めたいと小原審議役は言っている。


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