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【10-010】中国全国青少年科学技術イノベーションコンテストにJSTおよびSSH指定校一行が招かれ出席

米山春子(中国総合研究センター フェロー)    2010年 8月26日

 2010年8月9日(月)~12日(木)に中国科学技術協会主催、教育部、科学技術部、国家発展改革委員会、環境保護部、国家スポーツ総局、共産主義青年団中央、全国婦女連合会と自然科学基金委員会の共催による中国の全国青少年科学技術イノベーションコンテストが広州市で開催された。開幕式典には、中国科学技術協会鄧楠常務副主席(鄧小平氏のご令嬢)、広東省黄華華省長、教育部陳少娅副部長の各氏ほかが出席した。独立行政法人科学技術振興機構(JST)科学コミュニケーション推進本部・科学ネットワーク部福島三喜子部長を団長としたSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の教諭および校長からなる一行は、中国科学技術協会に招待されて、式典に出席した。一行は、イノベーションコンテストの展示、コンテストの一環としての教育フォーラム、交流プログラムなどを視察し、特設された「日中講師交流会」において、中国の理数教育重点校の教師とも交流した。

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 このコンテストは1979年11月、北京で「第1期全国青少年科学技術の作品展」として第1回目が開催された。そのとき中国の最高指導者鄧小平氏はこのコンテストに “青少年は国の未来、科学の希望である!”と題辞を書き残した。30年以上も続いる。今回のコンテストは「イノベーション、体験、成長 ― 低炭素生活を始めよう」のテーマを掲げ、青少年と科技補導員(日本のSSHのスーパーバイザーに相当する理科教師)の科学技術イノベーションの成果を展示するプラットフォームを提供し、青少年の科学道徳、イノベーション精神および実践能力の強化、科学技術の優秀な人材育成を目的としている。

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 今回の催しでは、中国国内総勢35の代表チーム、533名の学生、186名の科技補導員が展示に参加し、そのほか米国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストリアなど15ケ国の23の代表チームも参加している。2万人の来場者が見込まれる。これまでで最も参加チームが多く、過去最大規模の大会とのことである。

 展示ホールでは391の学生のブース、200の科技補導員のブースにそれぞれのイノベーション創出に関連する創新科目が展示され、そのほか、180項目の優秀科学技術の実践活動、152枚の児童絵画の受賞作品が展示された。これらの展示品は各省、直轄都市や自治地区で選考された作品である。日本の高校生の作品に比べ、より生活に密接し、環境や人にやさしい展示品が多く、印象的であったと日本から参加したある高校教諭は述べていた。たとえば、福建省学生の展示では、茶積みのカッターが展示されていた。

説明の学生によれば、ご両親の手の茶積みでできたタコを見て、思いついた発明とのことである。自ら図面を起こし、地元の会社に依頼して制作した試作品であり、現在、発明新案を出願中とのことである。また、化学、生物学の知識を生かし、農薬を稲粒に取り込まない方法や河川汚染の浄化方法などの出展があった。また、老齢化社会に向かって、介護用の監視システムの開発に取り組んでいる展示品もあった。これらの展示品のアイディアからみると日本の高校生より応用能力が高いと日本の高校教諭は述べている。

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 開会式の午後、日本の代表団は科学技術協会青少年科技センター李暁亮主任主宰の「科学教育論壇」に参加した。この議論には、「科学技術教育イノベーション校トップ10」の代表および選ばれた200名の科技補導員のほかに、台湾やタイの代表および長年中国の人材育成プログラムを支援してきた企業インテルの代表が参加した。この議論では、中国の理科教育理念から、人材育成の取り組み、理科授業の経験や問題点、今後の課題などについて熱心に議論した。台湾大学物理学部教授の孫維新氏は台湾と大陸学生の発想の違いや台湾の科学技術普及の資金投入について紹介し、タイの科学技術協会の教師Janchai 教授はタイの教育現状について語った。

 21世紀に、知の創出を担う国際レベルの質の高い人材育成、およびこのような人材育成のカギを握る理科教員の質を向上させることはもはや教育分野の課題にとどまらず、国や民族の運命に関わる国の重要な課題となっている。いち早く問題意識を高め、戦略的に国際的な視野を持って活躍できる多彩な人材を育成することは最重要な課題である。

 資源が豊かでない日本は若年層の人口が年々と減り,国際化・多様化社会環境の変化に応えるため、イノベーション創出力の強化は当務の急であり、その上人材の育成が鍵となる。現在の日本の教育問題に対する認識や科学教育普及への資金投入などを見るとき、近々、日本はアジア諸国に後れを取るのではないかとの危惧も持つ。最近の国際比較調査データによると,中学,高校と学年が上がるにつれ,日本では理科が楽しいと感じている学生の人数は平均より下回っている。理科離れは学校教育に問題がある。JSTが取り組んでいるSSHプログラムはこの局面を打破するための一環としている。

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 開会の翌日の「日中講師交流会」には、中国「科学技術教育イノベーション校トップ10」の代表や来賓と日本のSSH校6校の校長や教諭、およびJST関係者が参加した。交流会は、科学技術協会青少年科技センター李暁亮主任およびJST科学コミュニケーション推進本部・科学ネットワーク部福島三喜子部長の挨拶から始まり、日中双方によるそれぞれの国の理数教育の概要についての報告の後、日中の参加者による交流活動は長い時間続いた。食事の時間になっても、食事を忘れて、日中の参加者間の会話は続いた。とくに大阪府立高津高等学校の簡易分光光度計には、多くの中国の理科教師が興味を示した。持参の試作品では足りず、帰国後送ることにしたほどである。日中の教師の交流は今回のみでは足りず、今後も連絡を取り合い、交流を続けることになった。今回の交流については、次回に掲載する参加高校教諭の感想を盛り込んだレポートにも紹介されることになる。この交流会は日中の交流の場を提供するため、 JSTと中国科学技術協会青少年科技センターと共催で開催した。


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